2006年2月18日(土)「しんぶん赤旗」
なぜ プラス成長? 実感ないの?
大企業空前の大もうけ…家計に波及弱く
“勝ち組”政治で格差拡大
「『構造改革』などにより、こうした成果が出るのは喜ばしい」。二〇〇五年十―十二月期の国内総生産(GDP)が四期連続でプラス成長になったことをうけ、安倍晋三官房長官はこう語りました。しかし、多くの庶民にプラス成長の実感はありません。「成功者をねたむな」(小泉首相)と“勝ち組”応援政治を続ける小泉内閣。発足後まもなく五年を迎える小泉政治のもとで、何が起きているのでしょうか。(山田英明)
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■大企業優遇の政治
一部大企業、大銀行は空前の利益をあげています。
トヨタ自動車は、〇五年四―十二月期連結決算で最終利益九千六百八十億円を計上。同期では過去最高を記録しました。三菱UFJフィナンシャルグループも、同一兆二百六十四億円と、トヨタ自動車を上回る最終益をあげています。
小泉内閣はこの間、税制上の優遇で、企業のリストラ・「合理化」を促進。大銀行の不良債権処理のために国民の税金をつぎ込んできました。その結果、二〇〇〇年から〇四年の間に企業の所得は約六兆円も増加しています。
その一方、雇用者報酬は、低迷し続けています。大企業・大銀行の空前のもうけは、労働者には還元されていません。
大企業はこの間に、政府の後押しをうけ、リストラ・「合理化」を推進。正社員からパートやアルバイト、派遣などの非正規雇用への置き換えを進めてきました。
その結果、二〇〇〇年から〇四年の間に年収三百万円以下のサラリーマンが急増しました。〇五年十―十二月期のGDP速報では、雇用者報酬が若干回復したものの、依然低迷しています。
リストラ・「合理化」と大企業優遇政治が、家計から企業への所得移動を促してきました。
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■やむを得ず支出増
「企業・家計部門とも好調。バランス良く(回復が)進んでいる」(与謝野馨経済財政担当相)。政府は、個人消費が「好調」という見方をしています。しかし、中身をみると家計の“やむを得ない”支出増が、個人消費の「好調さ」を演出しています。
厳冬が冬物衣料や暖房器具の購入を促し、個人消費を押し上げました。さらに灯油価格の高騰が支出増に拍車をかけています。
家計調査によると、住居費、光熱費、保険医療などは、三年連続で増加しています。
小泉内閣は医療や介護など社会保障改悪を促進してきました。その結果、医療サービスや介護サービスにかかる費用が増加。家計を圧迫しています。
所得が減る中で、貯蓄を取り崩して支出に回しているのが実際です。
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■富裕層さらに富む
富裕層の消費が、個人消費を押し上げている側面もあります。
所得税の最高税率引き下げや、株式配当や譲渡益にかかる所得税の軽減など、政府は高額所得者を優遇してきました。
二〇〇〇年から〇四年で、年収二千万円以上の階層の人数の増え方はわずかですが、収入も消費も大幅に増えています。
例えば、この間に三千cc超の自動車をもつ勤労者世帯は、全体で0・5%しか増えていないものの、年収二千万円以上の世帯では、約2%も増加しています。
企業は、こうした富裕層を対象にした事業展開を始めています。トヨタ自動車は〇五年八月から高級車市場にレクサスブランドの展開を開始。累計で約一万二千台の販売台数となりました。
伊勢丹の広報担当者は、同メンズ館の売り上げについて、「真ん中のプライスライン(価格帯)のより高い方が多少膨らんでいる」(同広報)と分析しています。
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■家計還元の政治を
一部大企業や富裕層だけでなく、庶民が景気回復を実感できるためには、大企業のもうけをきちんと労働者に還元させることが必要です。
小泉内閣は、医療改悪や所得税増税などで、庶民に連続的に負担増を押しつけることをたくらんでいます。こうした負担増が、回復しかけた雇用者報酬の増加すら帳消しにし、家計をさらに低迷させることになります。
小泉内閣による負担増計画をやめさせ、大企業・高額所得者に応分の負担を求め、家計に還元する政治に切りかえることが求められています。