2006年2月17日(金)「しんぶん赤旗」
主張
神戸空港
浪費を止めない小泉政治
神戸市沖を埋め立ててつくった神戸空港が開港しました。目と鼻の先には関西国際空港と伊丹空港があります。周辺は半径二十五キロメートルの、いわば通勤圏内に三つの空港がひしめく「空港過密地帯」となりました。
関空は一本目の滑走路の発着数、旅客数が需要予測を大幅に下回っています。それにもかかわらず、小泉内閣は二本目の滑走路の建設計画を中止せず、工事を続けています。
そんなところに、三つ目の空港です。浪費に浪費を重ね、環境破壊と騒音をまき散らす空港乱造にまったく歯止めがかかりません。
■国民と市民に負担転嫁
神戸空港は神戸市が管理・運営する国内空港です。二千五百メートルの滑走路を擁し、空港島埋め立てや滑走路整備の事業費は三千百四十億円に上ります。ターミナルビル建設、市が出資するポートライナー(鉄道)の延伸を含む関連事業費との総額は一兆円規模とされる巨大公共事業です。
神戸市が「市民には負担をかけない」と言って建設を進めた空港の財政計画はすでに破たんしています。
神戸市は空港島の埋め立てに二千億円の借金をしました。そのほとんどは、民間に埋め立て地を売って返済する計画です。ところが実際に売れたのは民間に売る用地の0・4%だけ。空港の手前に控える人工島・ポートアイランドにも広大な未利用地が残されている上、中部国際空港の二―四倍の高値では、もともと売れる見込みがありません。
滑走路など空港本体整備のための借金三百億円の返済や開港後の空港経営に当て込んでいた着陸料収入も予定の半額にとどまる見通しです。
費やした巨額の借金に返す当てがなく、空港経営にも目算が立たない―。こんな放漫経営で開港を強行するのはあまりにも無責任です。
神戸空港には国の補助金が三百億円投入されます。これは国民の血税にほかなりません。神戸市は市民への約束を覆して「市税の投入」を言い始めました。結局、負担は国民と市民に転嫁するやり方です。
需要の予測も極めてずさんです。
神戸市によると当初は年三百十九万人、十年後には四百三十四万人が利用するとしています。しかし就航が決まった旅客機の定員から計算すると年二百六十万人しか運べません。十年後には大阪、奈良、滋賀、和歌山からも、手近な伊丹や関空を素通りして神戸空港に来ると想定しています。手前勝手な空想的予測です。
もともと神戸市民は、神戸空港の建設計画に対して、財政問題や環境問題など大きな不安を持っていました。とりわけ、一九九五年の阪神・淡路大震災で空前の被害を受けた市民生活の復興を最優先すべきときに、空港建設に固執し続けた市政に市民の大きな怒りが広がりました。
九八年には、「建設の是非は住民投票で」と、市民は三十万人を超す直接請求署名を市議会に提出しています。当時の市長、現在の市長の選挙での得票よりはるかに多くの市民の意思が表明されています。
■三年後には静岡空港
参院本会議での日本共産党の追及に、小泉首相は「需要予測等に基づいてその必要性を適切に判断している」と、ずさんな予測を盾に神戸空港の推進を擁護しました。
三年後には羽田空港や中部国際空港に新幹線で短時間で来られるところに静岡空港も開港する予定です。
これだけ明白な無駄遣いを止めることさえできない小泉内閣には、財政赤字を理由にして国民に負担増を求める一片の資格もありません。