2006年2月16日(木)「しんぶん赤旗」

中医協

再診料引き下げ答申

診療報酬改定 医療の質低下も


 中央社会保険医療協議会(中医協)は十五日、二〇〇六年度診療報酬改定案について、川崎二郎厚労相に答申しました。過去最大の3・16%引き下げの政府方針を受けたもので、一部を除き四月から実施する予定です。

 国は、今回の引き下げで約二千三百七十億円の国庫支出削減を見込んでいます。

 今回の改定では、腎臓病患者への人工透析の夜間・休日加算の引き下げなど、患者に影響を与え、医療の質の低下につながる内容となっています。

 一回目の診察にかかる初診料については、病院と診療所の「統一」を理由に、診療所の点数を引き下げて病院を引き上げます。二回目以降の診療にかかる再診料は引き下げました。

 入院時食事療養費では、腎臓病や肝臓病を対象にした特別食加算を大幅に引き下げるほか、常勤の管理栄養士を配置した際の特別管理加算が廃止されます。これは患者負担につながるものです。

 疾病の自覚症状がない場合のコンタクトレンズの定期検査は、保険の給付対象外となります。

 小児医療は「重点的に対応していく」領域として位置付け、初再診料の時間外加算について乳幼児を対象とする新点数を創設。小児入院医療管理料の評価も引き上げられます。

 このほか、ニコチン依存症の患者への禁煙指導や心臓などの脳死移植を保険適用とするほか、医療費の内容が分かる領収書の発行を医療機関に義務付けます。


■解説

■現場の実態ふまえた改定を

 診療報酬は、医療保険から医療機関に支払われる額を定めるもので、その改定は、医療の質、安全に直結します。

 今回の診療報酬改定にあたって、政府は昨年十二月、「経済動向」「保険財政の状況」を口実に総額の3・16%引き下げという総枠を決めていました。二〇〇二年度に2・7%引き下げられたことに続く大幅なマイナス改定です。医療関係者からは「政府の失政のツケを医療に負わせるな」と強い批判があがっていました。

 「総枠」を抑えた結果、改定の基本内容は、小児医療など一部改善された分野はあるものの、再診料の引き下げなど全体として医療現場にしわよせするものとなっています。

 人工透析患者は、〇二年度改定で透析時の食費を保険給付対象から外されたばかりなのに、今回は夜間・休日加算が引き下げられました。このことは十五日の中医協の総会でも問題になりました。委員からも「人工透析は(医療の)経済採算性ということで切り下げられてきた。食事のことなど患者に不利益が発生している。患者に不安があったことを重く受け止めてほしい」という意見がつけられるほどでした。

 診療報酬引き下げは、患者負担減になる面もありますが、医療機関の経営を圧迫し、医師、看護師の労働条件悪化をもたらし、医療の質の低下につながります。

 日本の病床百床あたり医師数はイギリス、フランスの三分の一以下、アメリカの五分の一です。看護職員数はドイツの半分、イギリス、アメリカの四分の一です。

 医療現場の実態を踏まえていない診療報酬引き下げには、多くの医療関係者が異を唱えています。一月二十七日に開かれた中医協の公聴会では、医療現場から「医療の質、安全を限られたコストのなかでどう確保するか、いつも苦慮している」と厳しい実態が相次いで出されました。

 今回の診療報酬引き下げは、政府が国会に提出した医療改悪法案と一体のもので、医療費抑制のため公的保険の縮小、解体に道を開くものです。公的医療制度の破壊を許さない国民的運動が求められています。(山岸嘉昭)

 ▼診療報酬 医療保険で診察や検査、手術などさまざまな医療サービスや、医薬品、診断機械などにつけられた公定価格のこと。医療機関には、サービス提供の代価として保険から支払われるため、診療報酬とされます。価格は一点を十円として各サービスごとに点数で示されます。治療にかかったサービス価格の総額が医療費となります。


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