2006年2月14日(火)「しんぶん赤旗」
主張
玄海原発プルサーマル
危険な計画をおしつけるな
九州電力が玄海原発3号機(佐賀県玄海町)に導入をめざすプルサーマル計画に、地元の古川康佐賀県知事は七日、「安全は確保される」と表明しました。玄海町の意向や県議会での今後の議論も踏まえて、計画実施への正式了解を三月中にも行うとみられています。
■住民の不安は大きい
プルサーマルとは、ウランとプルトニウムの混合燃料を軽水炉で燃やすものです。通常の軽水炉で使われるウランと比べプルトニウムは、放射能がけた違いに強く、原子炉で燃やすことで、体内に摂取したときの危険が大きい放射性物質が増えます。原子炉内の放射性物質が外部に放出されるような過酷事故が起これば、その被害はウラン燃料の場合よりも著しく大きくなります。
東京電力や関西電力のプルサーマル計画は、二〇〇一年の新潟県刈羽村の住民投票で反対が過半数となり、〇二年の東電原発トラブル隠し事件や〇四年の関電美浜原発事故もあって、中断しています。これらの事件、事故では、営利優先で安全を軽視する電力会社の体質があらわになりました。それをただせない国の原子力行政の欠陥も問われました。
それだけに、原発が立地する玄海町でも周辺地域でも、原発容認の人も含めて住民の間には、プルサーマルの安全性について大きな不安があります。
昨年十月の経済産業省主催のシンポジウムでは、安全性の説明に対し参加者から不満があいつぎました。地元紙の世論調査でも、賛否がきっこうし、「分からない」が半数近くを占めています。
玄海町をとりかこむ唐津市には、玄海原発から十キロメートル以内に約二万七千人が住んでいます。いまは唐津市になっている七山、鎮西、肥前の旧三町村では反対の意見書が可決されています。唐津市議会では、一月からプルサーマル特別委員会で議論を始めたばかりです。議員からは、知事表明は「時期尚早」との声があがっています。
知事は、国や九州電力の説明に「理解でき納得できた」としていますが、これは推進側の主張をそのまま受け入れただけのものです。住民にとっては、議論は始まったばかりであり、納得できるものではありません。知事は、無責任な安全表明を撤回すべきです。
知事の強引な姿勢の背景には、九州電力の意向とともに、国の強力な後押しがあります。
電力会社は、二〇一〇年度までに沖縄を除くすべての電力会社でプルサーマルを実施する計画です。
政府も、プルサーマル推進などを明記した原子力政策大綱を昨年十月に決定しました。これをうけて国の原子力委員長が佐賀県知事と玄海町長を訪ねて協力を要請するなど、国策としての押し付けを図ってきました。
■安全優先への転換を
原発等の立地自治体には、国から電源立地地域対策交付金等が支給されています。〇四年度からプルサーマル支援のための加算が行われるようになりました。玄海町では、こうした原発収入に歳入の多くを依存する異様さです。
金で不安を抑えるやり方では、住民の理解と納得は得られません。住民の間に分断を持ち込むものでもあり、やめるべきです。
原発の危険を増大させるプルサーマル計画など核燃料サイクル政策をやめ、安全優先のエネルギー政策へ転換することが急務です。