2006年2月11日(土)「しんぶん赤旗」
主張
医療改悪法案
人の命にまで格差持ち込むな
政府が閣議決定した医療制度「改革」法案は、高齢者をねらいうちにした負担増とともに、将来にわたり公的保険給付を切り縮め、保険外負担を拡大し、公的医療制度を土台から崩す内容を盛り込んでいます。
高齢者の窓口負担を現行一―二割から二―三割に引き上げる。七十五歳以上のすべての人を対象に医療保険料を年金からの天引きでとりたてる。療養病床に入院している高齢者の居住費・食費を保険適用外にする―。これだけの高齢者負担増を行っても、まだ足りない、今後五年間の医療給付費の伸びを検証して、抑制にむけ施策を見直すというのです。
■公的保険を切り縮める
どんな施策を検討しているのか。
法案は、「保険診療と保険外診療との併用について、将来的な保険導入のための評価を行うかどうかの観点から再構成」とのべています。保険が利く医療と、保険が利かない医療をセットで行う「混合診療」の検討です。
昨年十月の厚生労働省試案では、かぜなどの「軽い病気」の医療を保険給付から外す保険免責制度の導入も問題になりました。政府・与党のなかには、保険免責制度の導入が、「今回は見送られました」とわざわざ宣伝している党もあります。
小泉内閣にとって、法案の最大の目的は医療給付費の抑制です。
そのために、法案は、都道府県に入院日数短縮の数値目標を明記した「医療費適正化計画の策定」を義務付け、高齢者の療養病床の削減、高齢者医療制度の創設など、負担増に加えた大幅な制度改悪を盛り込みました。
医療給付費の抑制という大目的を盛り込んだ法案は、混合診療や保険免責制度の導入への道筋をつけるものです。
公的保険外の医療の拡大は、日本の財界と米国の保険会社・医療業界の強い要求です。
「医療費負担が家計を圧迫」などといって、米国系保険会社が日本で民間医療保険への加入を宣伝しています。日本の医療を新たなもうけ口にしようとねらっています。
日本経団連は、「給付費の増加を抑えるため、公的保障の範囲を…市場に委ねることが不適切なサービスに限定するとともに、保険外サービスと保険サービスの併用を進めるべきである」としています。大企業の保険料負担を減らし、医療市場の拡大をはかるために公的医療の縮小を迫っています。
保険が利かない医療―患者に全額負担を求める医療の拡大は、収入の大小が、そのまま健康格差に直結します。
人の命を守る医療の分野に、もうけ第一主義を持ち込ませてはなりません。
政府・与党は、高齢者への負担増の理由に「現役世代との公平」をあげています。高齢者に肩身の狭い思いをさせて、必要な医療を受けさせなくするやり方です。しかし、病気にかかりやすい高齢者に現役世代と同じ割合で窓口負担を求めれば、家計への負担は何倍にもなります。高齢者の窓口負担は現役世代より低く抑えて当然です。
■公的医療を土台から壊す
高齢者へのねらいうち負担増も、保険の利かない医療の拡大も、弱いものいじめです。
格差社会と貧困の広がりが、大問題になっているときです。医療にまで弱肉強食のシステムを持ち込み、医療保険制度を根本から解体する医療改悪法案を絶対にゆるすわけにはいきません。