2006年2月10日(金)「しんぶん赤旗」
社会リポート
イラク派兵の練馬駐屯地周辺
警察が尋問・尾行
住民「散歩もできない」
陸上自衛隊の第九次イラク復興支援群(群長・小野寺靖一佐)が“出兵”した陸自第一師団練馬駐屯地のある東京都練馬区。「イラク派遣に反対する団体による不法行為の恐れ」を理由に同駐屯地周辺は今、警察と自衛隊の「厳戒態勢」にあります。(山本眞直)
約二百人規模の制服・私服の警察官が駐屯地周辺の住宅街や商店街を昼夜の区別なく巡回、住民から「戒厳令のようだ」との声があがりました。
一月十三日、練馬区教育委員会から区立小中学校長あてに「通知」が出されました。表題は「陸上自衛隊練馬駐屯地の警備について」。練馬駐屯地からのイラク派兵にともない、「制服警官二名が、学校敷地内に不審物がないかを確認する警備をする」というのです。
■学校の鍵を貸与
対象は「駐屯地の半径一キロ範囲内」にある七つの小中学校。日中と深夜、警察官が校庭を巡回するので、「門扉の鍵について警察への貸与」が指示されています。
警備期間は一月二十二日から二月十二日まで。区教委によれば「駐屯地に向けてロケット弾などの爆発物がしかけられる恐れがあり、校庭が外部から死角になるからと警察が説明した」(学校教育部)としています。
ほぼ同時期、「練馬警察署からのお知らせ」と書かれたチラシが駐屯地周辺の団地の掲示板に張り出され、町会でも回覧されました。
「イラク派遣に反対をしている団体が駐屯地を狙った不法行為をする恐れがあり」、これを未然に防ぐため「警察官が単独、数人で巡回し、警戒や情報収集のため質問する場合がある」とあり、警察に通報する女性のイラストなどが書きこまれています。
出国日(一月二十九日)を前後して駐屯地周辺のつじつじに警察官が立ちました。所用で近くを訪れた千葉県の男性は駅から駐屯地の数百メートルの間で職務質問を三回うけました。地元の店員は、店を出たとたんに二十分近くも“尋問”されています。駐屯地前の国道を自転車で通過しただけで尾行された住民もいました。
厳戒態勢は数キロ離れた埼玉県朝霞市の自衛隊朝霞演習場付近にまで及んでいます。隣接する市立公園に置き忘れた自転車を探しにきた住民が「不審者がいる」との通報をうけた警察官や自衛隊員数十人に取り囲まれました。この場面を目撃した住民から「こわくて散歩もできない」との声があがっています。
駐屯地に近い自衛隊官舎付近では戦闘服姿の自衛隊員も警備に立ちました。警察、自衛隊の「厳戒態勢」に、事情を知らない父母から学校に問い合わせが相次ぎました。
学校と子どもを巻き込んだ異常警備に都教組練馬支部の緒方敬司執行委員長は強く反発します。
「警察官が二十四時間、学校の敷地に自由に立ち入るため校門の鍵まで貸すよう通知があったことなど教職員にはまったく知らされていません」
十二日、都立城北中央公園で「自衛隊をイラクに送るな、もどせ練馬集会」(午後一時から)が平和・市民団体とワールドピースナウのよびかけで開かれます。
■世論を封じ込め
練馬平和委員会の坂本茂事務局長は「異常警備は米軍再編に反対する自治体への監視を強めるよう指示した防衛施設庁のメールともつながるものだと思います。『自衛隊をイラクに送るな、もどせ』という世論の封じ込めをねらったもの。十二日の集会をなんとしても成功させたい」と話します。