2006年2月9日(木)「しんぶん赤旗」

主張

貧困と格差

小泉「改革」では拡大の一方だ


 小泉内閣は首相を筆頭に、貧困と所得格差の深刻な広がりを無視し、なりふり構わぬ「反論」に出ています。六日の衆院予算委員会では、首相側近で竹中総務相とも親しい中川秀直・自民党政調会長が、小泉「改革」で格差は「縮小している」とする珍論を展開しました。

■劇的に悪化した雇用

 中川政調会長は、厚労省の毎月勤労統計で昨年の「一般労働者」が前年と比べて0・5%増となったことを挙げ、「ついに正社員が増加した」と手放しで喜びました。

 「一般労働者」とは無期限で、あるいは一カ月を超える期限で雇われている人や直前の二カ月に月十八日以上雇われた人のうち、短時間雇用を除いた労働者を指しています。正社員だけでなく派遣・請負、契約社員や、アルバイトの一部など非正社員を含む数字であり、その中で増えているのは非正社員です。

 正社員と非正社員を区別している総務省の調査によると、ようやく増加に転じていた正社員が小泉内閣発足後に反転して大幅に減りました。最新の昨年七―九月と二〇〇〇年八月の調査を比較すると、正社員は三百二十三万人も減る一方で、非正社員は三百三十七万人も増えました。

 非正社員の賃金は徹底的に抑え込まれています。七日の衆院予算委で日本共産党の佐々木憲昭議員が追及したように、奥田碩・日本経団連会長のおひざもとのトヨタグループ子会社でも、正社員と同じ仕事をしているにもかかわらず請負労働者の時給はわずか三分の一にすぎません。

 政権発足初年の経済財政諮問会議で、財界代表の牛尾治朗・経済同友会特別顧問は次のように主張しています。「労働者派遣制度を『物の製造』まで広めて、契約社員を…あらゆる範囲に拡大する」。「そういう人たちを短期で契約したり人材派遣で契約して…新しい労働形態に置き換えることによって賃金も下がる」

 こうした財界の身勝手さを後押ししているのが小泉「構造改革」です。小泉内閣は財界の要求に忠実に従い、相次いで規制緩和を強行しました。劇的な雇用悪化の元凶は小泉「構造改革」にほかなりません。

 雇用の急速な不安定化で、低所得層がいっそう低所得に追いやられています。同時に福祉の連続改悪、大企業と大資産家に減税し庶民に増税する逆立ちした税・財政の「改革」が庶民の可処分所得を削り取ってきました。

 社会的に弱い立場に置かれた人や、低所得者の生活の急激な悪化によって、ますます所得格差が広がる深刻な事態が起きています。それでも与党は、税制大綱に、低所得者ほど負担が重い消費税の増税やサラリーマン増税を盛り込んでいます。

 中川政調会長が「格差是正の観点からも、改革を止めて時代を逆戻りさせるのは愚の骨頂だ」とのべ、「構造改革」による経済成長こそ「格差是正の良薬」だと強調したのはとんでもない話です。

■破たんした経済論で

 政権が「改革」の成果として宣伝している「景気回復」の中身は、米国や中国の需要に頼り、家計所得を吸い上げて大企業が過去最高益を更新するいびつな「回復」です。大企業の利益を増やせばいずれ社会全体にしたたりおちる―。そんな高度成長の「夢」がとっくに破たんしたことは内閣府の報告も認めています。

 小泉「構造改革」をやればやるほど経済のゆがみはひどくなり、貧困と格差は広がるばかりです。小泉内閣は、「改革」がもたらした深刻な現実を直視すべきです。


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