2006年2月9日(木)「しんぶん赤旗」
小中生に株教育
10万円渡しマネーゲーム
証券会社と政府が推進
ライブドアの証券取引法違反事件で注目を集めた、個人投資家の増加。政府と証券業界は「貯蓄から投資へ」の流れを推進しようと、子ども向けの「投資教育」を積極的に展開しています。参加した小中学生に投資資金十万円を用意する証券会社も現れました。学校の授業に取り入れられるケースも増えており、教育現場からは疑問と批判の声が上がっています。
「自分にお金があったら、どのように使うか、想像力を養ってもらいたい」―。ネット専門の証券会社「マネックス証券」の松本大社長が今年一月六日、集まった小中学生に語りかけました。同社が子どもに投資を学ばせるための教育プログラム「株のがっこう」での開校のあいさつです。
ホームページ(HP)上での募集に応じた小学五年生―中学三年生二十八人が参加。授業では、「上手なお金の殖(ふ)やし方」など、株投資の方法を具体的に教えます。そして投資体験がスタート。
生徒らの口座には会社から十万円が入金されます。「投資体験後の結果の損益はお子様に帰属します」と、HPは記します。つまり、「もうけも損もあなた持ち」。四月下旬までの三カ月間、親子で実際の投資を経験しながら、月に一回のリポートを提出する予定といいます。同社は「十万円の返還は求めないので、実質の損害は出ない」としています。
「親権者の同意があれば、未成年者でも株式の売買は法的に可能です」。業界団体の日本証券業協会(日証協)は説明します。
大手証券会社では、保護者の同伴などがあれば、未成年者名義でも口座を開設できるといいます。「親の監督責任を明確にするための手続き」と説明します。
マネックス社のほか、日証協も、体験投資を柱にした子ども向け教育プログラムを運営。「総合的な学習の時間」や社会の授業を利用し、二〇〇四年度には全国で千三百五十一校が参加しています。
金融教育を導入している京都府内の私立高校教諭(政治・経済)は、「疑問を感じます。将来に向けた潜在的な投資家層づくりなのではないか」と批判しています。
■発達段階 無視している
教育評論家・尾木直樹さんの話 経済教育そのものは必要だ。ただし、現在進められている「株式ゲーム」的な投資教育には反対だ。非教育的、反教育的。ストップすべきだ。
経済的自立を遂げていない子どもが、小遣いをためた資金で投資しても、社会的にも経済的にも責任をとれない。発達段階を無視して「教育」と称して投資させる。こんなバカな話はない。
メディアがホリエモン(堀江貴文容疑者)などのマネーゲームをもてはやし、学生の間でも企業や株式投資が広まっているかのように報じられる。
しかし、内閣府の調査では、国民の68%が株式投資を「していないし、今後もしない」と答えている。子どもの金融教育を多数の保護者が要求しているとは考えられない。
政府、一部金融証券業界がメディアと一体となって、子どもをマネーゲームの世界に誘い込もうとしているのが実態だ。次世代の担い手たちを、ただ市場原理主義に適合する投資家として養成しようとする。怒りさえ覚える。