2006年2月7日(火)「しんぶん赤旗」

主張

米軍施設での談合

国民に二重の犠牲押しつけ


 歴代技術審議官ら防衛施設庁幹部の「天下り」にからむ官製談合事件で、米軍岩国基地の滑走路沖合移設工事、米軍佐世保基地岸壁工事など米軍基地施設関連工事も対象になっていた疑いが急浮上しています。「思いやり」予算とよばれる、本来日本が負担するいわれのない予算で建設されたものです。

■最悪の無駄遣い予算

 官製談合は、高級官僚の「天下り」を媒介にした癒着構造のなかで、巨額の税金が不当にゼネコンなどの業界に流し込まれていたという問題であり、許しがたい犯罪行為です。その談合の対象にされたのが、アメリカのためだけの最悪の無駄遣い予算であったというのでは、国民にとってたまったものではありません。

 「思いやり」予算は、基地そのものの提供をのぞき、在日米軍の維持経費は米側が負担すると定めた日米地位協定にさえ違反するものです。その予算の執行にあたって、談合による無駄遣いが重ねられたのですから、国民の被害は二重、三重です。

 談合の舞台となったとみられる米軍岩国基地の滑走路移設工事は、同庁が発注する工事のなかでも最大プロジェクトで、総事業費二千四百億円という巨費は、すべて「思いやり」予算でまかなっています。「騒音対策」を口実に、滑走路を現在より約一キロ沖合に移転するというものですが、実際には、基地面積を一・四倍に拡大し、滑走路を二本化する、大幅な基地機能の拡張・強化です。

 「思いやり」予算は一九七八年、当時の金丸信防衛庁長官=故人=が、「思いやりの精神で米軍駐留費の分担増に応じる」とのべ、基地従業員の労務費を肩代わりしたのがはじまりです。その後、安上がりの日本駐留を求めるアメリカいいなりに肥大化してきました。施設建設費ではこれまでに、総額約二兆円がつぎ込まれています。

 一九九六年からはじまった岩国基地の工事では、防衛施設庁はすでに一千八百億円余の工事を発注ずみです。国会に提出された資料などによれば、「思いやり」予算で発注された工事の落札率(予定価格にたいする落札額の割合)は95%を超えています。ほとんどがゼネコンなど業界の希望通りの金額で発注されていることになり、巨額の不当利益を保証している計算です。

 いま、米軍岩国基地がある山口県岩国市周辺では、米軍再編による米海軍厚木基地の空母艦載機部隊移転構想をめぐり、自治体ぐるみの基地強化反対運動が起こっています。滑走路移転による基地拡張が新たな基地の負担拡大に結びつくものではないという当初の確認を踏みにじる形で、現に基地強化がすすんでいます。

 防衛施設庁は米軍再編でも、周辺住民や自治体の基地強化反対運動を抑え込む役割を果たしています。その防衛施設庁が、国民の目から隠れたところで、「思いやり」予算をつかった官製談合という背信行為を重ねていたことは、基地にくらしを脅かされたうえ、重税を押し付けられる国民にとって、見過ごしにできない大問題です。

■「思いやり」予算廃止を

 国会で審議がはじまった〇六年度政府予算案にも、二千三百二十六億円の「思いやり」予算が計上されています。もともとあってはならない無駄遣い予算であり、「思いやり」予算はきっぱり廃止すべきです。

 同時にこうした政官業の癒着を断ち切るために、官製談合事件の徹底糾明と「天下り」の全面禁止が不可欠です。


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