2006年2月6日(月)「しんぶん赤旗」
偽装マンション 破たんした「支援スキーム」
2千万円追加負担も
被災者ら抜本的見直し訴え
マンションなどの耐震強度偽装問題が発覚してから八十日余。国会で関係者の参考人質疑や証人喚問など、真相解明と再発防止に向けた努力が行われたものの、事態の解決の方向はいまだはっきりとしていません。なかば強制的に居住を失った被災者は、過度の負担と不安を抱えた状態に置かれています。昨年十二月六日、政府が発表した当面の避難先の家賃や建物解体費への支援や建て替えにたいする補助などを内容とする「公的支援スキーム」がきわめて不十分であるためです。
■藤沢市で調査
日本共産党は一連の偽装マンションに関係する党組織や地方議員が救済活動に取り組んでいますが、三日、畑野君枝前参院議員や大森猛元衆院議員らが神奈川県藤沢市の「グランドステージ藤沢」(三十戸、十階建て)を調査。被災住民や自治体から実情を聞きました。このなかで、公的支援スキームが被災者だけでなく、関係行政も含めて不安と戸惑いを増幅させる結果となっていることがわかりました。
同市が都市再生機構に委託し、住民に提示した試算によると、同マンションの解体と建て替え費用は約十四億五千万円。このうち、解体費と共用部分の建設費に、国と市で約五億円の補助金が予定されます。しかし、建て替え後の居住面積を約二割減らし、それによって増床した八戸分の売却益を建設費に充てた場合でも一戸当たり二千万円の追加負担になることが明らかになりました。
このマンションの被災者の購入額は約四千五百万円から五千五百万円。取得価格のほとんどをローンに依存している人も少なくありません。二千万円もの追加負担による二重ローン返済はほぼ不可能です。
■二次被害も
被災者代表は党の調査団にたいし「(政府の支援スキームは)現実的な救済策とはとてもいえない」「銀行からの既存のローンの支払い催促で生きていくことそのものに自信を失っている人も出ている。このままでは二次被害も出かねない」と声をつまらせ、訴えました。
一方、藤沢市の神田務・計画建築部長は耐震偽装事件の責任の所在は、「基本的には国」との認識を示し、国の支援スキームでいくと「二千万円の追加負担を(住民に)お願いするしかない」と述べました。しかも、市としての補助追加予算の議会承認も得ていない現状です。
こうした事態に政府与党である自民党の中からも「国土交通省から示された建て替えスキームについては、各自治体を通じて現状のローンに付加される更なる負担額も示されたが、その多くは二千万円を超える金額であり、実行不可能な状況である」(自民党「耐震偽装問題対策検討ワーキングチーム第3回緊急提言」=座長・早川忠孝衆院議員、一月三十日)との声が上がっています。
このような事態の解決には、事件を引き起こした売り主や施工者、建築士、民間検査機関などの責任を明確にしながら、同時に国が責任をもって不動産業界や金融機関の負担や協力をあおぐことが求められています。さきの自民党ワーキングチームの「緊急提言」でも「欠陥のある建物を抵当権にとって融資を行った銀行も責任の一端を負担すべきである」と指摘せざるをえない状況です。
同じく偽装マンションである「グランドステージ川崎大師」(川崎市)の住民代表である平貢秀氏は、一月二十八日に出した全国銀行協会長にたいする要望書で「銀行のみが負担せずに、建て替え物件に抵当権をつけて債務を全額回収することになれば、担保価値を見誤まった銀行を救済するために税金まで使われたことになり、国民にも理解されません」と指摘しています。
政府は被災者が生活再建できるように「支援スキーム」を抜本的に見直すべきです。
(日本共産党国民運動委員会委員・高瀬康正)