2006年2月2日(木)「しんぶん赤旗」

主張

米大統領一般教書

平和と自由を破壊した責任


 ブッシュ米大統領が一般教書演説で、前半の対外政策部分のほとんどを中東情勢にあてながら、「孤立主義を拒否」し、「世界から退却しない」、「世界で自由へのあらゆる一歩が米国をより安全にするから、自由のために大胆に行動する」とのべました。

 米国のイラク侵略戦争にたいする米国内外の批判の広がり、中東各国にあらわれた反米機運の高まりを意識した発言ですが、この地域で平和を破壊し、混乱を引き起こしている最大の責任を負うべきは米国です。「米国の安全」のため、「自由」のためといっておこなう無法行為は、国際的に容認されません。

■大義なき戦争の犠牲

 イラクでは、昨年末の議会選挙後も組閣に手間取り、「泥沼化」といわれる状況が続いています。米英軍が国連安保理決議もないまま、先制攻撃でイラクを侵略して以来、イラクの人々の死亡者は三万人になるとブッシュ大統領自身が認めています。米軍兵士の死者も二千二百人を超えました。

 これだけの人々の根源的な自由―生命と安全を奪い、イラクの国土を荒廃させ、米国内にも悲惨をもたらした最大の責任は米政権にあります。

 米政権が、イラクには大量破壊兵器がある、フセイン政権は国際テロ組織アルカイダに結びついている、といいたてた戦争の口実はことごとく崩れています。ブッシュ大統領も昨年末には、この現実を認めざるを得なくなっています。イラクで自由を破壊しておきながら、“自由をイラクに広める”といいだしたのは、大義なき侵略戦争の口実に窮した「あと知恵」にすぎず、国際社会の支持をえられません。

 米軍が指揮する多国籍軍の駐留にたいして、英国防省の調査(昨年十月発表)によれば、イラク国民の82%が強く反対していました。最近の本紙取材でも、「占領への抵抗はスンニ派だけでない」(シーア派市民)「米軍は早く出て行け」(同)という反占領感情は根強いものです。

 イラク国民の自由に不可欠なのは、外部からの干渉なしに自らの運命を決められる主権を回復することです。ブッシュ大統領が「撤退しない」といい続ける限り、イラクの真の自由への道は開かれません。

 中東和平にとっても、民族自決権の実現は決定的に重要です。ブッシュ大統領は、パレスチナの選挙で過半数を占めたイスラム原理主義勢力ハマスに、イスラエルの承認を求めました。当然のことですが、同時にパレスチナの人々の民族自決権を公正に保障しなければなりません。

 ブッシュ大統領は、イスラエルにたいして一九六七年以降の占領地からの撤退を求めた国連安保理決議にもとづいて、将来のイスラエルとパレスチナ国家の「国境線」を引くことさえ、「非現実的」だといって、イスラエルの入植活動を容認していました(一昨年四月)。こういう態度では、国際的合意に反し、パレスチナの人々の民族的自由を踏みにじることになります。

■国際平和秩序のために

 「自由」の名で主権侵害と侵略を正当化することはできません。国連憲章は、大小各国の独立と主権、民族自決権の尊重に基礎をおく国際平和秩序を加盟国の使命としています。

 ブッシュ米大統領は、世界の平和と自由を破壊した責任を明確にし、イラクからの占領軍撤退の国際世論に応えるべきです。


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