2006年2月1日(水)「しんぶん赤旗」
規制緩和で労働条件が悪化
タクシー 国が抜き打ち監査へ
規制緩和によって悪化しているタクシー乗務員の長時間労働や低賃金など労働条件について、国土交通省はタクシー会社に対する「抜き打ち監査」を二月から導入し、是正に乗り出します。四月からは、厚生労働省と合同での抜き打ち監査もおこないます。
国交省は二月一日付で監査方針を改正。「重大事故を引き起こす前に予防的監査に重点を置く」として、事故や通報がなくてもいつでも監査に入ることにし、これまで実施してきたタクシー会社への事前通告もやめることにしました。二〇〇二年からタクシー運賃や台数、新規参入の規制が緩和されましたが、競争激化で乗務員の労働環境が悪化し、交通事故が増える傾向にあるため、監督の強化が避けられなくなったものです。
■生活保護以下も
抜き打ち監査では、運転手の拘束時間が定められた基準を超えていないかや、健康チェックをしているかなどを点検。年収の激減で生活保護基準を下回る乗務員が続出しているため、各地域で定められている最低賃金を下回っていないかなども重点的に調べます。
規制緩和によってタクシー業者数は二〇〇〇年度の七千社から〇三年度には八千社に激増。初乗り五百円の低運賃や長距離割引を売り物にする業者が登場するなど競争が激化し、乗務員に長時間労働や低賃金が押しつけられました。
「十年前に三百六十万円あった年収が今では二百十万円しかない」
こう語るのは、仙台市内のタクシー運転手、青野邦彦さん(53)。
「妻と子どもを養うため休憩時間も削って運転したり、朝八時から深夜二時までの勤務時間も早出や延長して働いています。勤務が終わるとぐったり。こんな状態をほうっていたらお客さんを安全に運ぶこともできなくなる。誤った規制緩和を見直すべきです」
■国に賠償求める
規制緩和後、仙台市ではタクシーが約30%も増える一方、営業収入は逆に30%も低下。業者や労働者らが現行法にもとづき増車を規制する「緊急調整地域」に指定することなどを求めましたが、国は拒んできました。
そのため青野さんら自交総連宮城地連に加盟するタクシー乗務員ら六十九人が昨年六月、国が適切な規制を怠ったとして一億円の損害賠償訴訟を起こしました。乗務員らが国に損害賠償を求める訴訟は東京、大阪でも起こされるなど、規制緩和の誤りを問う声が高まっています。
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今村天次・自交総連書記長の話 合同監査など監督の強化は私たちが求めてきたもので、規制緩和の誤りを無視できなくなったことを示しています。実効性を確保するためには人員増など体制の強化も欠かせません。
労働基準法違反の状態がまん延している根本には、規制緩和で競争が激化し、そのしわ寄せが労働者に押し付けられている問題があります。違法状態を本当になくし、安全運転を確保するためには、規制緩和そのものを見直し、増車や運賃を規制すべきです。