2006年2月1日(水)「しんぶん赤旗」
イラン核
安保理付託で一致
6カ国外相 具体化3月以降に
【ロンドン=岡崎衆史】国連安保理常任理事国の米英仏ロ中にドイツを加えた六カ国の外相は三十日夜、ロンドンで会合し、イランの核問題を国連安保理に付託することで一致するとともに、安保理での具体的な行動については三月以降に先送りすることを決めました。会合後発表された共同声明で明らかにしました。
安保理付託は二月二日からの国際原子力機関(IAEA)緊急理事会で決定予定です。付託によって、イランへの制裁が具体的論議になります。
安保理付託には積極的な米欧に対して、ロシアや中国は慎重な立場をとってきましたが、IAEAのエルバラダイ事務局長のイラン問題の報告書がまとまる三月六日までは具体的な行動を控えることで最終的に合意にこぎつけました。
六カ国はまた、イラン核問題の解決のために外交努力を続けることでも一致。イランに対しては、ウラン濃縮関連活動の停止を求めました。
会合に先立つ三十日、ブリュッセルで、この問題をめぐって英仏独とイランの協議が行われましたが、核問題の打開に向けた新しい進展はみられませんでした。
欧米はイランのウラン濃縮関連活動を核兵器開発の動きとして警戒し、それを阻止しようとしています。これに対し、イランは核兵器保有の意図はなく、将来の発電のための核の平和利用の権利だと主張しています。
今月十日にイランがウラン濃縮関連の核燃料研究再開を発表したことで米国と英仏独の欧州連合(EU)三国が、イラン制裁を決めることができる国連安全保障理事会への付託を主張。そして付託の是非を検討するIAEAの緊急理事会の二月二日開催が決まりました。
しかし、ロシアと中国は安保理で扱うことに慎重姿勢を示してきました。
こうしたなか、論議の一つの焦点となるのがロシア提案です。この提案は、ウラン濃縮をイランでなくロシアで行い、精製された濃縮ウランをIAEAの査察のもとでイランに移して燃料として使い、使用済み燃料をロシアが回収するというもの。これには中国が「行き詰まりを打開する一つの方法」(報道官)と評価し、米ブッシュ大統領もこれを支持しました(二十六日会見)。
イランの原則的立場は自国でのウラン濃縮です。しかし最近モスクワと北京を訪問しロシア・中国の政府高官と会談したイランの核交渉責任者を務めるラリジャニ氏は、ロシア提案をさらに協議が必要としつつも「有益」と評価しました。これには安保理付託を避ける時間稼ぎとの見方がある一方、問題解決へ妥協の可能性を示したものともみられています。
■イラン核開発の経過
イランの核開発問題の発端は、イランが秘密に建設してきた核エネルギー施設を反政府組織が二〇〇二年八月に暴露したことでした。テヘラン南方にあるナタンツのウラン濃縮施設とアラクの重水炉の建設です。
〇三年二月、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長が査察官とともにイランの核施設を視察。今日までに次のような事実を明らかにしています。
―ナタンツで核兵器製造転用可能な高濃縮ウランの痕跡を発見。
―テヘランのカライ電気商会から高濃縮ウランの痕跡を発見。
―プルトニウムを保有。
―核兵器の起爆に使う放射性物質ポロニウムを実験的に製造。
―濃縮ウラン製造に必要な改良型遠心分離機の部品を輸入。
イランは一九七〇年の核不拡散条約(NPT)の発効以来の加盟国です。核兵器製造にもつながるウランの濃縮について加盟国はIAEAへの報告が必要です。イランはこれを怠ってきました。
IAEA理事会が全面的な申告を求めたのに対して、イランは〇三年十月、過去三十年にわたる核計画についての報告書を提出し、IAEAの保障措置協定に一部違反していたことを認めました。
同時期に行われた英仏独三カ国外相との会談でも、イランはすべてのウラン濃縮活動を停止すると表明。〇三年十二月には、「抜き打ち査察」つまり、二十四時間前の通告で査察が可能となるIAEA追加議定書に調印しました。ただ、今に至るもイラン国会はこれを批准していません。
イランは違反を認めたとはいえ、ウラン濃縮のための改良型遠心分離機の情報が〇三年の申告に含まれておらず、この事実が翌年六月に発覚。さらに、〇四年九月、ウラン転換・濃縮の準備を開始すると発表して、国際的懸念が高まりました。同年十一月半ばに、イランが遠心分離機使用停止を含めウラン濃縮活動を自発的に停止することでEU三カ国との間で同意し、いったん緊張は収まったかにみえました。
しかし、昨年六月の選挙で勝利し八月に就任したアハマディネジャド大統領の下で、イランは八月にウラン転換活動を再開するとIAEAに通告。IAEA理事会が九月と十一月の理事会でイラン非難の決議を採択したにもかかわらず、今年一月十日、ナタンツでの濃縮についての「研究活動」を再開しました。