2006年2月1日(水)「しんぶん赤旗」
食の安全「骨抜き」
牛肉輸入迷走 米国任せの小泉内閣
中川昭一農水相の二転三転答弁で明らかになった、政府答弁書を翻しての米国産牛肉輸入再開決定―「まず輸入再開ありきで、食の安全より米国との約束を守る政府の姿勢があった」(日本共産党の高橋千鶴子衆院議員)のは明白です。ずさんな米国の体制に食の安全を丸投げした小泉政権の責任は重大です。(古荘智子)
■事前調査は米圧力で中止
米国産牛肉の輸入再開にあたり、政府は閣議決定した答弁書(昨年十一月十八日)で「輸入再開の前に調査する」といいながら、実際には、実施していませんでした。(表参照)
中川農水相は、三十日午前の衆院予算委員会での答弁で「結果としてしなかった。おわびしたい」とのべました。
なぜ、実施しなかったのか。中川氏の答弁をうけて同日午後、石原葵農水事務次官は会見を開き語っています。
記者 アメリカ側から「やめてくれ」というような話があったのか。
石原 アメリカと日本との協議の中で、こういうもの(事前調査)についてはアメリカの方で責任を持って対応するという説明があった。
記者 アメリカ側から事前にはやめてくれと。
石原 アメリカ側にすべて任せろということですね。
事前調査は、アメリカの圧力で実施されなかったというのが真相でした。
そもそも二〇〇四年十月、輸入再開のための日米局長級協議の合意では、「査察システム」について「牛肉貿易の再開の後」に、米国施設の定期的査察をおこなうと明記していました。アメリカ側は当初から再開前に事前調査に応じる考えなど毛頭なかったということです。
三十日の衆院予算委員会で中川農水相の答弁は二転三転し、政府は統一見解を示しました。しかし、現地調査をしなかったことへのまともな説明になんらなっていません。
国民の命と安全をアメリカ任せにする、卑屈な小泉内閣の姿勢があらわれています。
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■食品安全委は「評価困難」
BSE(牛海綿状脳症)の疑いのある米国産牛が見つかり、政府が輸入の全面停止を決めたのは二〇〇三年十二月です。その後の日米協議のなかで米側は早期の輸入再開を強く求め、日本国内の全頭検査を「科学的でない」として見直しを強く要求してきました。政府はこれに応え、全頭検査から二十カ月齢以下を除外し、国内基準を緩和したのです。
〇四年十月に日米局長級会談で輸入再開をめざす枠組みを合意してから一年後の〇五年十月、ヒル米国務次官補は「遅滞なく輸入を再開するよう日本に強く求める」と米議会で発言。ブッシュ米大統領も食品安全委員会が答申案をまとめた段階で、日本政府に輸入再開を強く迫っています。
日本政府は食品安全委員会プリオン専門調査会の評価報告を輸入再開の根拠にしました。しかし、そこでも米国産牛肉の安全性についてはデータに不明な点が多く日米の牛肉の「BSEリスクの科学的同等性を評価することは困難」とのべています。
危険部位の混入でもっぱら米側を非難する日本政府ですが、これらの経過からみれば、日本国民の「食の安全」を第一に考えるのでなく、米国の要求を最優先して輸入再開に踏みきった小泉政権の責任は明らかです。
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