2006年1月31日(火)「しんぶん赤旗」

主張

靖国参拝

この首相にして、この外相


 首相の靖国神社参拝をめぐり、小泉首相が先週の国会で「批判しているのは中国と韓国だけだ」などと繰り返しました。それに続き、麻生外相は先週末の講演で「中国がいえばいうだけ、(首相が靖国へ)行かざるをえなくなる」と発言しました。麻生氏の発言は、「『たばこを吸うな』といわれれば吸いたくなるのと同じこと」と個人の嗜好(しこう)と同列視する無責任なもので、首相の靖国参拝問題での小泉内閣の反省のなさを示したものです。

■世界の動きを偽る

 小泉首相は「(中国、韓国以外)どこの国の首相も私の靖国神社参拝を批判したことは一度もない」とのべています。この発言がまったく事実にもとづかないことは、一連のアジア諸国の首脳の発言に照らせば明白です。小泉首相が頼りとするアメリカも、さまざまの機会に首相の靖国参拝に「遺憾」や「懸念」を表明しています。批判は「中国と韓国だけ」などというのは、まさに世界の動きを偽るものです。

 しかも、首相の発言には、日本の侵略によって深刻な被害を受けた中国と韓国の批判をことさら軽く扱い、まともに向き合おうとしない姿勢が現れています。喫煙の習慣になぞらえて、「中国が批判するからやめられない」とうそぶいた麻生外相の発言は、そうした態度が小泉内閣の体質にまでなっていることを浮き彫りにしました。

 なぜ、日本の侵略戦争の戦場となり、犠牲になった、中国や韓国の批判にとりあおうとしないのか。

 中国にたいし日本は、一九三一年の柳条湖事件、一九三七年の盧溝橋事件などを通じて侵略を拡大し、一九四五年の日本の敗戦までの中国側の犠牲は死者だけでも一千万人を超えるといわれています。

 一方、韓国を含む朝鮮半島は一九〇五年の日韓保護条約、一九一〇年の日韓「併合」条約によって日本の植民地とされ、「皇民化」と称して民族の独自性そのものを消し去り、国民と資源を日本の侵略戦争に強制動員させられました。

 靖国神社は、そうした日本の侵略を、「自存自衛」のためだった、正しい戦争だったと賛美する“靖国史観”にたち、その考えを広めるために独自の軍事博物館(遊就館)まで持つ施設です。その靖国神社に首相が参拝を繰り返すことに、中国や韓国が批判の声を上げるのは当然ではありませんか。

 いくら首相が「靖国神社の戦争観と政府の考えは違う」と弁明しても、中国や韓国の批判は軽く扱うというのでは、その言葉に説得力はありません。それどころか麻生外相のように、批判があるからやめられないというに至っては、まさに開き直りそのものです。

 麻生外相は「英霊は天皇陛下万歳といって死んだ」などと、天皇の靖国参拝にも触れていますが、それこそ、外相の侵略戦争への無反省ぶりをさらしたというほかありません。

■外交担当の資格がない

 首相の靖国神社参拝は、日本の外交、とりわけアジア外交を完全に行き詰まらせています。

 ことはアジア諸国との関係にとどまらない日本と世界の関係の問題です。首相や外相が世界の批判をまともに受け止めようとしないのは、まさに外交担当者の資格にかかわるものです。

 小泉内閣は、国内はもとより、世界の批判に向き合うべきです。政府が“靖国史観”を肯定する行動をとり続ける限り、日本の国益は大きく損なわれることになります。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp