2006年1月30日(月)「しんぶん赤旗」
競争より共同の教育
学力シンポ フィンランドに学ぶ
子どもの学力をめぐる問題をフィンランドの経験に学びながら考えようというシンポジウムが二十九日、東京都内で開かれ、学生・研究者・教師ら約三百人が参加しました。フィンランド教育・社会研究交流会が主催。国際調査で“学力世界一”という結果が出て注目されているフィンランドの教育について取材・調査した新聞記者、研究者らが報告しました。
中嶋博・早稲田大学名誉教授が主催者あいさつ。日本では「学力低下」が「ゆとり教育」のせいだとされ、土曜日の授業や夏休みの削減、「学力テスト」による序列化が進められようとしていることを批判。フィンランドは授業時間も少なく、総合学習が重視されていること、競争原理ではなく、共同・助け合いの教育が、福祉社会の考え方の中から生まれてきたことを指摘しました。
フィンランドは教育改革を日本の教育基本法を参考に進めてきたとし、「教育基本法改悪を許さない決意を固め合いたい」と訴えました。
現地の学校を取材した読売新聞の西島徹記者は、一クラス二十人程度の少人数学級で、理解の遅れた子への補習授業が制度化され、経済的に恵まれない地域にはより多くの補習時間を保障するため予算もつけていることを紹介。教師たちが子どもに考えさせる授業を工夫して実践している様子を語りました。
都留文科大学の田中孝彦教授は、国際調査の結果で順位付けをすることには慎重であるべきだとしつつ、すべての子どもに平等に質の高い教育を保障するフィンランドの改革は、競争と格差化を広げる日本の「学力向上対策」とは正反対の方向だと強調。同時に、フィンランドでも新自由主義的な傾向が強まり、懸念の声が出ていると語りました。