2006年1月30日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

まちおこす愛好者


 伝統の和太鼓、庶民に親しまれるハーモニカ。地域、学校、職場など世代を超えて愛好者が増えています。同好の集まりから地域のまちおこしまでさまざまです。その姿を紹介します。


■伝統の和太鼓   

■故郷の文化を子どもに

■岡 山 市 

 「そーれ!」の掛け声、「ドドン、ドン、ドン」と、いっせいに打ち鳴らされる和太鼓の長胴太鼓や締太鼓。演奏するのは小学生たちですが迫力満点。その響きが、丸ごと体に伝わってきます。

 岡山市の三門(みかど)に、地域の人々や三門小学校の教師たちの協力で「三門太鼓を創る会」が発足して十一年。地域の「福祉交流プラザ三友」で、第二と第四木曜の夕、十五人の小学生が練習に通っています。

 演奏するのは、オリジナルの創作曲で、三門太鼓を指導する邦楽集団彩響(さいきょう)代表の五十嵐伸二さん(42)の作品です。

 「地域に新しい文化をつくり、子どもたちに伝えたい」と始まった三門太鼓。きっかけは、三門小学校教師の岡本利明さん(52)=現・同校教頭=が「地域人権運動みかどの会」(当時「全解連」三門支部)に呼びかけたことからでした。

 「あるとき盆踊りに出くわして、地域に文化活動がいるなぁと、思ったんです。子どもたちに故郷への愛着をもってもらいたい。お盆になったら帰ってきて、太鼓を聞いたら『故郷だ』と思えるように」と話す岡本さん。「太鼓なら、子どもたちが存分にエネルギーをぶつけられる。気持ちをそろえることができる」と考えました。

 その呼びかけに地域の人々もこたえて始まった三門太鼓。しかし、最初は太鼓を買うお金もなく、オイルの缶に合成の革をはった手づくりの太鼓での練習でした。

 「教えてくれる人も、曲もなくて、ただ、ただ太鼓をたたくだけ。一年続くか、二年続くか…、と思っていた」というのは、「三門太鼓を創る会」代表世話人の花田健吾さん(52)。地域に協力会員を広げながら、年ごとに一つ一つ太鼓を買いそろえ、県内各地での公演に訪れていた秋田県の「劇団わらび座」劇団員に半年間教えてもらうなどして、「やっと、先が見えてきた」といいます。

 その努力が買われ、町内会が、百年ほども前から、祭りのだんじりに使われてきた太鼓を貸してくれました。文科省の委託を受け市が実施する、「開かれた学校づくり事業」に指定され、補助金も出ました。

 一時期、子どもたちが五人ほどに減り、会の教師たちは、習う生徒を増やすため、朝の会で子どもたちに太鼓をたたいてもらい、全校生徒に参加を呼びかけたこともあります。

 子どもたちは盆踊りや「プラザ三友」の文化祭、保育園の夕涼みの会、老人保健センターの秋祭りで毎年演奏します。中学校のフェスティバルや学区の運動会にも呼ばれるようになり、地域の人々も、楽しみにしています。

 「いま目の前にいるあの子たち自身の活躍の場を、地域に与えてもらっているんです。そういう環境のなかで、三門の文化を伝承していける若者に育ってほしい」というのは同校教師の秋山俊夫さん(40)。代表世話人の花田さんは「子どもたちも文化をつくる一員。その三門太鼓を百年先に引き継ぎたい」といいます。

(岡山県・宮木義治)


■庶民のハーモニカ

■学校に演奏者派遣も

■神奈川・厚木

図

 誰でも一度は吹いたことのあるハーモニカ。小さく親しみのある楽器ながら、演奏方法は多彩で、存在感ある音色が魅力です。神奈川県厚木市では「ハーモニカのまち・あつぎ」と銘打ち、ハーモニカによるまちづくりを推進しています。

 市内には約七十の愛好者のグループがあり、厚木ハーモニカ協会の会員は約八百人。各地域の公民館で複数のグループが活動し、市民にとってハーモニカは身近なものとなっています。

 厚木市在住の田村正徳さん(70)は、ハーモニカを始めて三年半。地域のアンサンブル(重奏)グループに所属し、半年前から日本ハーモニカ芸術協会理事長・総師範の岩崎重昭さん(78)が開く「厚木ハーモニカ教室」にも通っています。「おなかをちゃんと使って吹かないといい音は出ません。素早く正確に舌を動かすことも重要です。肺や腹筋をよく使うので健康にもいいですよ」と語ります。

 厚木市でのハーモニカの普及には、岩崎さんが大きくかかわっています。

 岩崎さんは、二十歳のときから六十年近く、厚木市でハーモニカを教えてきました。岩崎さんのたくさんの教え子や孫弟子の人たちが、市内のハーモニカの先生などになっています。

 岩崎さんを中心としたハーモニカ愛好者の長年の活動が、市を動かしました。市生涯学習課文化振興係の担当者は「岩崎さんらの活動の影響はとても大きいです」といいます。

 市は、一九九九年からハーモニカの普及を、まちづくりの一つと位置づけ、二〇〇二年の七月から八月にかけて市で開催された「第四回アジア太平洋ハーモニカ大会」を機に、八月二日を「ハーモニカの日」としました。

 それ以来、毎年夏に「ハーモニカメモリアルコンサート」を開き、昨年はチケットが完売、約千四百人が集まりました。

 同担当者は「『文化の香るまちづくり』を目指す上で、愛好者も多く、手軽に始められるハーモニカを市民の文化活動推進の一つとして重視しています」と語ります。

 文化振興係が窓口となり、市内の小学校や老人介護施設などに「出前コンサート」としてハーモニカ演奏者を派遣したり、厚木市文化振興財団が、文化会館で「ハーモニカ教室」を連続講座で開くなど、普及に力を入れています。

 以前は学校の音楽の授業で使われ、現在はフォーク系ポップスのミュージシャンも使用していることもあり、ハーモニカは子どもから高齢者まで違和感なく受け入れられています。

 岩崎さんは「長年の活動が実ってとてもうれしいです。これからも後継者の育成など、ハーモニカの普及に力をいれていきたい」と語っています。

(洞口昇幸)


■豆知識

■和太鼓

 歴史は古く6世紀ごろの古墳から太鼓を持った埴輪(はにわ)が発見されています。

 能、歌舞伎、民謡、祭礼などで広くみられ、最近では祭囃子(ばやし)や各種太鼓を組み合わせたグループ太鼓で盛んに使われています。

 太鼓は主に4つの種類に分けられます。

 長胴太鼓=打つ面の直径より胴のほうが長い

 平胴太鼓=胴の長さより打つ面が大きい

 桶(おけ)胴太鼓=胴が細い板を継ぎ合わせた桶づくり

 締(しめ)太鼓=鉄枠に張った牛皮をケヤキの胴に麻ひもで張り締める

■ハーモニカ

 手のひらやポケットにおさまる小さな楽器で主にポピュラーや民俗音楽で使われ、広く普及しています。1820年ごろ、オルガンの調律用道具として作られたもので、日本では明治中ごろ輸入し、その後製造されるようになりました。

 ハーモニカは口の中に入る小型から長さ60センチのものまでさまざま。主なものに3種類あります。

 単音10穴(テンホールズ)ハーモニカ=10個の穴が一列に並ぶ。原型といわれる

 クロマティックハーモニカ=上下式とスライド式があり、主としてスライド式(側面にあるボタンを押すと半音階に切り替わる)が使われている

 複音ハーモニカ(トレモロハーモニカ)=1音に2枚のリードがあり、豊かな響きをうみだす


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