2006年1月27日(金)「しんぶん赤旗」

主張

労働時間の規制緩和

“自律労働”の幻想ふりまくな


 厚生労働省の研究会が、一定要件の事務系・技術系労働者を八時間労働制の枠外におく新制度導入を盛り込んだ報告書をまとめました。

 労働基準法が定める「一日八時間、一週四十時間、残業すれば割増賃金を支払う」という労働時間の規制は、人間らしい生活を保障するための働くルールの大原則です。新制度は、この原則を根本から崩し、規制の枠外においた労働者から残業代を奪うとともに、長時間労働を合法化する役割を果たします。

■長時間労働を合法化

 「一日の仕事でぐったりと疲れて、退社後は何もやる気になれない」労働者が四割を超え、「今のような調子で仕事や生活を続けたら、健康を害する」と思う人は六割近くにのぼる―。こんな深刻な調査もあります(独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の「日本の長時間労働・不払い労働時間の実態と実証分析」)。

 人間らしい働き方を保障するためには、長時間労働の規制とサービス残業の根絶こそ、何をさておいてもやるべきことです。それとは逆に、労働時間規制の適用除外の枠組みをつくるとは、正気のさたではありません。

 報告書は、新制度を「新しい自律的な労働時間制度」と名づけ、労働者に業務量や労働時間についての裁量があるかのようにのべています。ところが、対象者の具体的イメージとしてあげているのは、「企業における中堅の幹部候補者で管理監督者の手前に位置する者」「企業における研究開発部門のプロジェクトチームのリーダー」です。

 残業をもっとも多くしていながら、残業代を支給されていないのが、こうした労働者です。実態としても裁量などあるはずがないのに、“自律的”などと幻想をふりまいて、ただ働きを強制しようとしています。

 報告書は、新制度の導入の理由の一つに、「働き方の多様化」をあげていますが、目新しいものではありません。これまでも、同様の理由をあげて、専門業務や企画業務に裁量労働制を導入してきました。しかし、裁量労働制(専門業務型)で働く労働者から、「業務量が過大」(48・9%)「労働時間(在社時間)が長い」(45・6%)と不満の声があがっているのです(報告書参考資料)。

 報告書も、新制度が、「労働者のストレスを増加させ、…心身の健康に影響を及ぼす可能性がある」と懸念をのべています。“自律的に働き”などという甘い言葉で無制限に働かされ、心身を破壊させられてはたまりません。

 労働時間規制の枠外に労働者をおくという制度は、世界でも異常な制度です。

 米国には、広範なホワイトカラー労働者を労働時間規制から外す「ホワイトカラー・エグゼンプション(除外)」制度があります。しかし、この制度を「そのまま我が国に導入することは適当でない」と報告書はのべています。ホワイトカラー・エグゼンプションが、“過剰な長時間労働を強いられる制度であり、米国ではそれを転職で防ぐことができるが、日本はそれができないから”といいます。

■反対の声あげるとき

 報告書のいう新しい制度が、ホワイトカラーを除外する制度とどれほど違うのか。財界は、ホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入を要求して、実行を迫っています。

 財界の野望を許さず、労働時間の規制緩和に反対する声を大きくあげていくときです。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp