2006年1月26日(木)「しんぶん赤旗」

男女雇用機会均等法 ここを見直して

長時間残業のまん延招く

「成果主義」に歯止めを


 男女雇用機会均等法の改正案が通常国会で審議される予定です。厚生労働省は、均等法改正案にむけての建議を受けて、法案要綱を作成しています。いま女性たちの働き方はどうなっているのでしょう。男女平等へ、どんな改正を望んでいるのでしょうか。


 日立製作所のRSD事業部(旧小田原工場)で働く中村由紀子さん(56)は、改正案を「まったく不十分」といいます。

■目標未達成だと降格・賃下げも

 中村さんは、調達部で倉庫業務をしています。職場の男女差別是正を裁判で争い二〇〇二年夏、勝利和解し、現在は総合職七級です。会社は、争議解決の翌〇三年四月、仕事の「成果」を格付けや賃金などの処遇に反映する「人事処遇制度」を導入しました。

 半期に一度、上司との面談があり労働者の目標設定や評価を話し合います。「評価は五段階ありますが、目標を100%達成しても標準の評価(中)です。130%、150%の成果をあげなければ上にはいけません」と中村さんはいいます。

 目標を達成できない年が続くと降格・賃下げもあります。仕事の成績が賃金に直結するため、男女とも深夜までの残業や、休日出勤が常態化。定時は午前八時半から午後五時ですが、「午後九時前に、帰宅のために席を立つ人はほとんどいない」職場もあるといいます。

■企業側に証明責任負わせて

 とくに中村さんが納得できないのは、面談の際の評価の基準があいまいなことです。「昨年から三回続けて平均以下の評価(各マイナス〇・五)でした。『おかしい。苦情処理委員会に申し立てます』と抗議したら、その後、一気にプラス一・五の評価がつきました。いったいどんな決め方をしているのか」と憤ります。

 均等法の改正について、「間接差別の内容を三点に限定せず、成果主義に歯止めをかける内容が必要です。会社が差別していないと言うなら、挙証責任を会社に負わせてほしい」といいます。「賃金が成果主義と連動している限り、長時間労働の泥沼から抜け出せません。女性も男性も、仕事と生活が両立できる働き方ができなければ、平等は絵に描いたもちです」と。

 調達部の十一人の女性労働者のうち七人は派遣社員です。派遣社員の時給は何年働いてもほぼ千円。正社員と非正社員との均等待遇も急務と訴えます。

■男女とも仕事と生活が両立できる働き方こそ

■「成績が悪い」とリストラ対象に

 「『成績が悪い』と会社に決めつけられると、リストラの対象になります」というのは、日本IBMで働く関口道子さん=仮名=。年齢給はなく、成果主義賃金が徹底しています。会社は成果が上がらない労働者に退職勧奨をくりかえし、退職に追い込んでいます。そのため、「女性も夜の十一時、十二時まで働いています」。

 関口さんが以前参加した女性のセミナーでは、三十歳代の女性部長五人が報告。四人が未婚で、その一人は「夜十二時前に帰ったことはほとんどない」と話していました。関口さんの職場でも、「気がつけば独身女性がとても多い」といいます。

■出産・子育て年齢の女性が

 育児休業制度や、短時間勤務、在宅勤務などの制度は「かなり充実していますが、だれでも利用できるわけではありません」。出産・子育て年齢に当たる二十歳代後半から三十歳代前半に退職する女性の割合は、他の年齢層よりも高い事態が続いています。

 関口さんは「時間を気にしないで働ける人だけが勝つのでは、最初から勝負は決まったようなもの」と強調。厚生労働省の研究会で導入が検討されているホワイトカラー労働者の労働時間規制を外す動きを批判し、「男性の長時間労働に女性を合わせるのでなく、男女とも家庭生活と両立できる働き方を実現する法改正が必要」と訴えます。

 厚生労働省の労働政策審議会が厚労相に建議した均等法の改正案 ▽一定の間接差別を禁止((1)採用時の身長・体重要件(2)コース別の総合職採用での全国転勤要件(3)昇進での転勤要件。職務上の合理性・正当性が認められれば禁止されない)▽妊娠・出産等を理由とする不利益扱いの禁止▽男女双方に対する差別の禁止―などの内容です。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp