2006年1月25日(水)「しんぶん赤旗」
兵員確保に躍起
イラク戦主力 米陸軍
厚遇で引き止め
【ワシントン=山崎伸治】米国によるイラク占領の主力部隊となっている米陸軍は依然として、兵員確保にきゅうきゅうとしています。前会計年度(二〇〇四年十月―〇五年九月)の新兵募集が目標を下回り、軍はあの手この手で兵員獲得に力を入れています。一方で、中途で離脱する兵員が増加しています。
「新兵募集が陸軍の負担の尺度ではない」―十八日、国防総省で記者会見したハービー陸軍長官は強調しました。前会計年度は八万人の新兵募集目標に対して七万三千人どまり。四軍のなかで唯一目標を下回りました。
本年度はこれまでのところ目標を上回り、「期待できそうだ」(同長官)といいます。それでも一九九九年以来の低い水準であることに変わりありません。
■再入隊で補う
そのため、最高四万ドル(約四百六十万円)の「入隊ボーナス」を支給したり、初めての住宅購入時に頭金を補助するなど、これまで以上の厚遇で新兵獲得を狙っています。しかし一律の歳出削減というブッシュ政権の予算方針のもとで、こうした措置がどこまで続けられるか不透明です。
長官が強調するのは再入隊する兵員の増加。前年度の新兵不足は再入隊で補ったといわれるほどで、「〇五年の再入隊はこの五年間で最高で、この傾向は続いている」(同長官)といいます。
再入隊の増加の背景の一つは経済的動機です。
「あらゆる選択肢を検討して、ここが最良の場所だと考えた」―十七日付のサンディエゴ・ユニオン・トリビューン紙は、妻が妊娠したため、健康保険を完備する海兵隊に再入隊した人の話を紹介しています。
■除隊兵も増加
同紙によると、「二〇〇〇年以来、国防総省は兵員の給与を23%増額し…再入隊ボーナスを引き上げた。軍の健康保険はほぼ無料。基地内の住宅は改修され、基地外に住む場合も(兵員の)持ち出しを減らすため五十億ドル(約五千八百億円)近くを支出してきた」といいます。多くの民間企業が医療保険や年金を削っているなかで、兵員を軍にとどまらせるために「家族をひきつける」軍の戦術です。
米メディアによれば、中途離脱する兵員の割合は、〇二年の8・7%から〇五年は10・5%に増えています。陸軍では同じ期間に麻薬や覚せい剤の使用で除隊になった兵員が四割も増加。軍の規律低下がうかがえます。