2006年1月25日(水)「しんぶん赤旗」
主張
堀江社長逮捕
誰が改革の旗手に仕立てたか
堀江貴文社長(二十四日辞任)らライブドア幹部が証券取引法違反の容疑で逮捕されました。
ライブドアは自社の株価を人為的につり上げ、つり上げた高株価を元手にほかの企業を次々とのみ込んで肥え太ってきました。その過程で、虚偽の説明や決算の粉飾など明白な法律違反を犯し、これに堀江社長が関与していた疑いです。
市場を欺いたライブドアの「錬金術」の全容を徹底的に解明するのは当然です。それとともに、事件の根源となっている規制緩和万能路線を進め、マネーゲームをあおってきた自民党政治の責任も免れません。
■規制緩和万能論で
ライブドアが利用したのは、株式交換、株式分割、投資事業組合という三つの手法を巧妙に組み合わせたやり方です。株式交換は一九九九年の商法改正で導入され、株式分割は二〇〇一年に規制を撤廃して自由に使えるようにしました。
いずれも財界の強い要望です。九九年、当時の小渕首相が主宰した「産業競争力会議」で財界代表は次のように主張しました。「株式交換制度の問題で今国会での実現は難しいとの報道があるが、早期成立をお願いしたい」(奥田碩トヨタ自動車社長=当時)。「ソニーは株式交換制度を来年早々から使うことになるので、ぜひ今国会で成立させてほしい」(出井伸之ソニー社長=当時)
財界と自民党が進めた利益第一の規制緩和が、ライブドアのような「錬金術」を可能にしました。
日本共産党の志位和夫委員長が二十四日の代表質問で、ライブドア事件の土壌をつくり、「改革の旗手」と持ち上げた責任をどう自覚しているかただしました。小泉首相は「この件と衆院選で応援したのは別の問題」と、何ら反省すべきことはないかのように答弁しました。
今になって人ごとを装っても、ごまかすことはできません。
小泉首相は、昨年九月の総選挙への出馬を表明した堀江社長に「君のような若者が政治に入ってくるのはすばらしいよ」と、歯の浮くような言葉を送っています。
安倍官房長官は「小泉内閣が構造改革を進めなければ堀江氏は出てこなかった」(当時は自民党幹事長代理)。武部自民党幹事長は堀江社長に「党改革で知恵を貸してもらいたい」とまで言っています。
竹中総務相は二十四日、記者の質問に、「今回のことと小泉改革を直接結び付けるのは誤りだ」と弁解しています。
しかし、堀江社長の応援に選挙区の広島まで駆けつけ、「小泉、ホリエモン、竹中で改革をやり遂げる」と堀江社長の手を取って演説したのは、ほかの誰でもない竹中大臣です。堀江社長を「改革の旗手」に祭り上げた張本人ではありませんか。
■大もとから転換を
ライブドアが昨年、ニッポン放送株を買い占めた際の「時間外取引」は、証取法の専門家から違法性が強いと指摘されています。ところが竹中側近とされる伊藤達也金融庁長官(当時)はいち早く「適法だ」とコメントし、お墨付きを与えました。
「官から民へ」を合言葉に民営化と規制緩和万能論に立った「構造改革」を進め、「貯蓄から投資へ」をスローガンに投機的な取引を奨励する小泉内閣こそ、ライブドアのような「錬金術」の生みの親です。そこには、「錬金術」の暴走を止めるブレーキもありません。
大もとの小泉「構造改革」、規制緩和万能路線を改めることが求められています。