2006年1月24日(火)「しんぶん赤旗」

主張

格差の拡大

不平等は「粉飾」で隠せない


 内閣府は十九日の月例経済報告で、統計で所得格差が拡大しているのは「見かけ上」の問題にすぎないとして、所得格差の拡大を否定する見解を示しました。

 これに力を得た小泉首相は、格差拡大は「誤解だ」と言っています。竹中総務相は二十一日の講演で、「構造改革」で「格差が広がるという議論は間違い」とのべました。

■根源に「構造改革」が

 国民の中で現実に進んでいる貧困と格差の拡大は、どう取りつくろおうとも隠すことはできません。

 国民全体の所得水準が低下するもとで、貧困層が増えています。

 生活保護の受給世帯は一九九七年の六十万世帯から百万世帯へ、教育扶助・就学援助の受給者は6・6%から12・8%に急増。九七年当時には10%だった貯蓄ゼロの世帯は、直近の調査では23・8%に上ります。

 他方でライブドアのように人為的に株価を引き上げ、一般投資家を踏みつけにしてぼろもうけする「錬金術師」が栄えてきました。強引な取り立てで多数の被害者を生んでいるサラ金大手四社の創業者が、株式の売却益と配当によって一千億円を超える大資産家に名を連ねています。

 貧富の差の急拡大は、「構造改革」の名で国民に痛みを押し付け、大企業・資産家の利益追求を応援する「新自由主義」の政治の結果です。

 小泉内閣はリストラ・人減らしを奨励し、不安定で所得が低い非正規雇用を三割を超えて激増させています。若い世代ではおよそ半数が非正規雇用です。金融・証券の規制を緩和し、株式の売却益にかかる税金を以前の26%から10%に引き下げ、マネーゲームを流行させました。

 内閣府の主張の論点の一つは、所得格差がもともと大きい高齢世帯が高齢化で増加しているために、全体の所得格差が広がっているように見えるだけだということです。

 日本の所得格差がクローズアップされた九〇年代後半に、当時の経済企画庁(現・内閣府)が繰り出した「反論」も、まったく同じ中身でした。そのときから十年近くたち、いっそう貧富の差が広がっているにもかかわらず、なお「平等神話」にしがみついているのです。

 そもそも高齢世帯の格差そのものが問題です。汗水たらして働き続けて定年を迎えたのに再就職の口もない、あるいは貸し渋りで廃業の憂き目に遭う多数の高齢者がいる一方、天下りの高級官僚や株式配当で潤う大資産家がふんぞり返っています。

 直近の所得再分配調査によると、高齢世帯と母子世帯を除いた一般世帯の不平等度も、八〇年の水準と比べて大きく悪化していることを示しています。

 実は当の内閣府すら、自らが唱えた「平等神話」を否定する研究報告を発表しています。昨年五月のリポート「フリーターの増加と労働所得格差の拡大」は、日本の所得格差が九七年以降に拡大し、とくに若年層の格差は「新自由主義」の元祖・英サッチャー政権期に匹敵する勢いで広がっている、とのべています。

■虚偽宣伝をはね返そう

 ますます深刻になっている所得格差の拡大を、いとも気軽に否定しさる小泉内閣は「小さな政府」ではなく「冷たい政府」です。

 小泉内閣の姿勢は格差問題から政治がとりくむべき社会問題としての側面を消し去ろうとするものです。こんな「粉飾」をこらした虚偽宣伝をはね返し、国民の社会的連帯で弱肉強食の「構造改革」に反撃しようではありませんか。


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