2006年1月23日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

原発の危険増すプルサーマル

拒否の声 全国に広く


 プルトニウムを原発で燃やすプルサーマル計画で新たな動きが出ています。東京電力、関西電力の計画が進まないなか、国の許可をうけた佐賀・玄海原発などで地元自治体への申し入れと説明が進んでいます。国策として強行する国・電力会社にたいし、各地で反対運動が広がっています。


■なぜ 私たちの町に…

■佐賀・玄海

 「プルサーマル計画は、今の原子力発電より危険性が一段と高く、何のメリットもない。国や九電はこれを玄海原発3号機で導入、実施しようとしている」

 佐賀県の玄海町値賀崎にある九州電力の玄海原子力発電所(四基)から直線で一キロ以内の外津(ほかわづ)漁港。宣伝カーから訴えるのは、「玄海原発対策住民会議」の副会長で前日本共産党町議の藤浦晧さんです。

 漁師の家が並ぶ近所の路地で、赤ちゃんを抱いたお母さんが聞いていました。「原発は目と鼻の先にあって、不安がないわけじゃない。自分たちはどこかに行くわけにもいかない。もし事故があったら、子どもらが心配。うちの祖母もいつもそう口にしている。プルサーマルは日本ではじめてだし、どうして玄海でしないといけないのか…」と話し、子どもの顔をじっと見ていました。

 二〇一〇年度をめどに同計画の実施をめざす九電は昨年、安全協定を結んでいる県と玄海町への「事前了解願」を提出。現在、県と玄海町が九電に対し了解をするのかが焦点となっています。

 ことし一月四日の年頭会見で古川康知事は同計画について「判断は長引かせない」との強気の構え。しかし、昨年十二月に唐津市で開かれた県主催の初公開討論会では、同計画への賛否で騒然となりました。ほとんどのマスコミは、「賛否は分かれた」としています。

 ここにきて、玄海町の隣にあり、九電との「安全協定」がない唐津市で大きな問題になっています。市議会は一月十三日、「プルサーマルにかかわる第一回特別委員会」を開き、「県の判断の前に賛否を決める」と計画導入の是非を協議。保守系議員からも「百パーセント安全とは言えない。農水産物、観光に風評被害が出た場合は、国や県はどう対応するのか」「専門家を呼び勉強したい」など安全性に疑問の声が相次ぎました。

 昨年、周辺の七町村と合併した唐津市には、国が定める原発事故の緊急時対策圏半径十キロ内に市民約二万七千人が住みます。「朝日」の世論調査は「唐津市との了解も必要か」との問いに、「必要」が全県下で83%にのぼります。

 日本共産党の唐津市議団・まつら(浦田関夫、吉原真由美、志佐治徳=無所属)は、「七山、鎮西、肥前の各旧町村で反対の意見書が可決されている。市として(九電との)安全協定は必要」と強調しました。

 安全協定の締結を市に申し入れ、署名運動をすすめる「玄海原発対策住民会議」の坂本洋会長は、「市や議会は市民の安全をどう守るのか、国・九電などの日程に関係なく広く意見を聞き、まとめてほしい」と話します。(佐賀県・平川明宏)

■老朽化、耐震性…膨らむ心配

■愛媛・伊方

 一昨年十一月、四国電力が伊方3号機でのプルサーマル計画を、愛媛県と伊方町の了承を得て国に申請、昨年七月に経産省の原子力・安全保安院の一次審査をへて、原子力委員会と原子力安全委員会の二次審査の結果が、今春にもでることが予想されています。

 これに対し、原発の危険に反対する愛媛県民連絡会議(愛媛労連、日本共産党など)や、社民党や住民グループも参加する「伊方原発でのプルサーマルに反対する愛媛共同の会」が十三万余の署名を集めて阻止運動を展開中です。

 伊方原発1号機は「設計寿命三十年」に対し、一九七七年運転開始以来、今年で二十九年。まさに「定年間際」です。老朽化の現実は、県に報告した異常だけで年間五十件におよぶことにもあらわれています。炉心の出入り口近くでの放射能を含む噴出や、応力腐食割れがおきています。

 また、南海、東南海地震対策が真剣に求められている中、伊方原発の直前の海底には、中央構造線に沿った活断層が三本も走り約二千年ごとの周期で動き、しかもその周期が近いことが高知大の岡村真教授らから指摘されてもいます。

 こうして、日本の原発にとっての「二大不安」―老朽化と耐震安全性がともに心配な伊方原発で、危険性がいっそう高くなるプルサーマルの強行は、大多数の県民にとって許せない暴挙です。

 十七日に資源エネルギー庁主催の松山市での講演会も、批判的見解との討論は避けて一方的な「大丈夫論」の宣伝だけ。加戸守行知事が「国の審査を信頼」し、県民の安全を守る自治体としての真剣な検討を避けていることが、県民の不安を強めています。

 周辺の自治体首長らからも「われわれには何の説明もない」との不満が広がり、県政の対応を厳しく見つめています。プルサーマル反対の大合唱をいまこそ、全県、全四国に広げていくときです。

(伊方等の原発の危険に反対する愛媛県民連絡会議・代表幹事 中川悦良=元党県議)

■国策というが 基本は住民の安全

■静岡・浜岡

 東海地震の想定震源域の直上にある浜岡原発4号機(静岡県御前崎市)にプルサーマルの導入――無謀さを際立たせる中部電力の計画発表(昨年九月)以降、不安と懸念の声が広がり続けています。

 原発を所有する電力会社と地元自治体が結ぶ安全協定のうち、全国で唯一、浜岡原発の安全協定にのみ、「事前了解」条項(注)がありません。

 「住民の安全軽視だ」との批判が高まる中、静岡県議会十二月定例会では、日本共産党県議団が原案を提出した「プルサーマル計画に関する意見書」を可決、県東部の三島市議会は市民団体が要請した「安全協定」の見直しを求める意見書を可決しました。

 また、一月十六日の地元四市関係者でつくる「浜岡原発安全等対策協議会」では、各市長から「現段階での国への申請は時期尚早」「安心・安全への説明が不足」との意見が出され、浜岡でのプルサーマル実施に必要な中電の国への原子炉設置変更許可申請に、ストップが掛けられました。

 「安心してくらしたい市民の会」の金原和子代表(74)は昨年十二月、地元・周辺六市と県に、「事前了解」条項追加などの安全協定見直しを求める請願を署名約三千三百五十人分とともに提出。「プルサーマルは国策だといいますが、私たちの世代は国策に従順に従い敗戦を体験したのだから黙っておれません。国策の基本は住民の安心・安全が一番のもと。まだプルサーマルをやった後の廃棄物の処理方法がみつかっていないなど問題もあります」といいます。

 日本共産党は国や県にたいし、浜岡原発の危険性を格段に増幅させるプルサーマル計画の中止を要請し、地元市では一月、他会派の議員の賛同を得て「事前了解」条項追加を各市長に申し入れています。

(静岡県・森大介)

 (注)「事前了解」条項 原発の施設や運転など重要な変更を行う際、地元の了解を得る条項

■自治体の了解を得たところなし

 電力9社などは1月6日、プルトニウムの利用計画を発表しました。地元の了解のないまま一方的に16―18基の原発で発電するとしています。2007年稼働予定の青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場で回収されるプルトニウムを、こうした原発で燃料として使う計画。新潟県や福島県は計画を拒否し、東京電力は原発名を公表できませんでした。

 「プルサーマル」とは、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、ウランと混ぜて再び原発(軽水炉)で燃料として使うこと。これまで地元自治体の了解を得たところはなく、プルサーマル発電ができる原発はありません。国の原子力委員会は昨年10月、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜて燃料とする核燃料サイクル政策を推進するとした原子力政策大綱を決定しています。


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