2006年1月23日(月)「しんぶん赤旗」

「構造改革」の現場から

規制緩和 だれのため(1)

首相の諮問機関事務局メンバー

大企業出向者が半数


 小泉首相の諮問機関である「規制改革・民間開放推進会議」(議長・宮内義彦オリックス会長)の事務局メンバーの約半数が民間大企業からの出向者で、出身企業の営利と密接に関連する分野を担当していることが本紙調べでわかりました。民間企業出向者の担当分野まで明るみに出たのは初めて。小泉内閣が進める「官から民へ」路線の舞台裏に「官」と大企業との癒着の構図が浮かんでいます。


 「推進会議」は、宮内議長ら企業経営者八人と学者五人で構成され、「官から民へ」の路線を進める方策について毎年、首相に答申を提出。これにもとづいて小泉内閣の「規制改革・民間開放推進本部」(本部長・小泉首相)が方針を決め、これが内閣の決定となります。

 小泉首相に直結する宮内氏の「推進会議」はいわば各省庁を“超えた”存在で、この事務局が内閣府におかれた、「規制改革・民間開放推進室」です。

 本紙が入手した「推進室」の職員名簿(内閣府作成)によると、室員二十八人のうち官僚以外の十四人がオリックス、トヨタ自動車、三井住友銀行などの企業出向者でした(別表参照)。

 「推進室」は、医療、教育、金融、生活など分野ごとに十のワーキンググループ(WG)に分かれ、答申作りに向けたたたき台となる最初の文案を作成します。

 〇四年度、公的医療保険適用と適用外の併用を認める「混合診療」の解禁などを打ち出した「医療WG」を担当した室員は四人。オリックスからの出向者が幹事で、民間からは日本生命、三菱商事が参加しています。

 混合診療が全面解禁されれば、健康保険の適用を受けない自由診療部分が増加し、民間保険会社に大きな「市場」が生まれます。傘下に100%出資のオリックス生命保険を持つオリックスや、日本生命などはこの「改革」で大きな利益を得られます。担当室員の半数が保険業界の出向です。

 また、「生活・ビジネスインフラWG」の「エネルギー・運輸分野担当」にはトヨタ自動車と関西電力の出向者、「競争政策・法務・金融担当」には三井住友銀行、信金中金からの出向者がそれぞれ参加するなど、出身企業と担当分野が密接に関連しているケースが目立ちます。

 民間出向者は「非常勤国家公務員」の衣をまとっています。室長以下五人の幹部のうち、ナンバー3にあたる「政策企画調査官」も経団連からの出向者です。

 選ばれた企業は答申作成の過程で、「官」のなかの貴重な情報、人脈などの財産を得ることができます。

 「民間の経営上の視点を事務局の作業に反映できるようにする」(内閣府)という目的で進む、大企業と政府のこの癒着――。

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 オリックス会長を旗振り役にした「規制改革」の裏側で現実に進行している実態をさらに追跡していきます。(安川 崇)

(つづく)

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