2006年1月20日(金)「しんぶん赤旗」
きょう国が地元説明会
「影響軽微」の騒音予想図
“本当か”首長ら疑問
岩国基地強化
防衛施設庁が山口県岩国市と由宇町両議会の全員協議会に二十日出席します。岩国基地をめぐる米軍再編構想について説明するもので、両首長はこれを受け自治会に地元説明会を行います。
■「意図的」と批判
首長たちの疑問は、岩国基地周辺の騒音範囲予想図「コンター図」(上図)に集まっています。騒音範囲の広がりが南には大きく広がっているのに北へは宮島手前で止まっているからで、「意図的だ」とする批判も出ています。
国はコンター図の根拠に飛行コースと一日の飛行回数を出しました。防衛施設庁は飛行回数を四百回と想定。「実数値よりはるかに多く設定しているので、より正確だ」と胸を張っています。
コンター図の形はむしろ飛行コースに影響されるものと思われます。離陸時、従来なら宮島上空を飛んでいたコースが移転後は外れるとしています。着陸も滑走路の南北どちらからアプローチする場合も宮島の南端から北へは飛ばないようにコース設定しています。
移転後の飛行コースの位置付けについて防衛施設庁は「岩国基地沖合移設事業で新滑走路ができた場合の想定飛行コース(一九九五年作成)を下敷きに日米担当者で話し合ってつくったもの。政府間の合意はなく実際にこのコースを走るか分からない。将来も宮島を飛ばないと言えるものではない」と語っています。
■NLP前の訓練
国は「NLP(夜間離着陸訓練)の大部分は硫黄島(東京)でやるから大丈夫」だとしていますが、岩国市の井原勝介市長や広島県の藤田雄山知事はNLPだけでなく、その事前集中訓練を懸念しています。
岩国基地の沖合新滑走路で実施する「E2C」のNLPについて、国は影響は軽微だとして「コンター図」(下図)を出しました。岩国市内に甚大な影響が出るEA6B(岩国配備機で最もうるさい)との対比で、E2Cなら騒音範囲が陸上部から外れる様子を描き出しました。
しかしNLPはタッチ・アンド・ゴーの中でも空母に載る資格を得る特定の訓練メニューを指す言葉。タッチ・アンド・ゴー自体は日常的に行われ、主要艦載機も「通常訓練」として岩国基地で離着陸を繰り返します。その際この図は、NLPのあるなしにかかわらずEA6Bがタッチ・アンド・ゴーを繰り返せば岩国市民に甚大な影響が出ることを示しています。
また艦載機拠点基地では空母搭載の資格試験であるNLPに向けた事前集中訓練があります。国は厚木基地の二〇〇四年六月八日―七月六日の二十九日間、同年十二月十九日―〇五年一月十七日の三十日間の騒音総回数データを出してきました。前者が六千二百二十九回、後者五千二百八十五回だったことを明らかにしました。
「既存の訓練空域より広がるのか」「低空飛行は増えるのか」「『中間報告』にあるNLP専用施設とは何か」といった具合に、首長たちの疑問は多岐にわたります。
◆防衛施設庁がこれまで地元に説明してきた移転の概要 実施は二〇〇八年度末以降。移転機数は空母艦載機五十七機(FA18戦闘攻撃機四十九機、EA6Bプラウラー電子戦機四機、E2C空中早期警戒機ホークアイ二機)。やって来る人員は艦載機部隊員千五百人と整備要員百人の合計千六百人。家族を含む総数は未定。国は厚木飛行場周辺に米軍家族住宅が約千戸あると指摘。