2006年1月18日(水)「しんぶん赤旗」

株価至上主義の危うさ

背景に規制緩和進めた自民党政治

ライブドア強制捜査


 市場万能時代の寵児(ちょうじ)として、マスコミや自民党からも、もてはやされてきたライブドア。急成長の背景には、株式市場を活用して矢継ぎ早に企業の合併・買収をしかけて稼ぐ“堀江流”錬金術の展開がありました。

 「人の心はお金で買える」「人間を動かすのはお金」(自著『稼ぐが勝ち』)と豪語してきた堀江貴文社長。その原点は、一九九六年の四月、堀江氏が中心になって、コンピュータープログラムの開発・販売などを行う会社を設立したことです。

 その後、企業合併・買収を重ね、二〇〇四年二月にはそれ自身も買収した企業の名前である「ライブドア」に社名を変更。過去三年間で売上高を二・三倍にするなど急成長を遂げてきました。

 ライブドアの企業合併・買収を支えてきた手法が、株式分割と株式交換です。

 株式分割は一株を複数の株に分割することです。本来は、高値になった株を分割して一投資単位当たりの価格を下げ投資家が買いやすくするためですが、実際には、一株当たりの価格が安くなることで個人投資家の買いを誘い、そのたびに株価は急騰しました。

 株価が上がればライブドアの時価総額(発行済み株式数に株価をかけた数字)は拡大し、資金調達も容易になるからです。

 さらに、自社株を新規に発行し、これを対価に相手先企業の株式を取得する株式交換を行えば、多額の現金を用意しなくても済みます。

 株式分割自体は違法ではありませんが、大幅な株式分割は株価の急変動を招くことがあることから、東京証券取引所は昨年三月、大量の株式分割の自粛を要請するなど、事実上禁じられた形となっています。

 ライブドアは、この間計四回の株式分割を行うなど、こうした錬金術の効果を企業合併・買収に最大限利用してきました。

 今回の事件は、練金の前提となる株価を上げ続けるために、うその情報を流すというルール違反まで犯すに至った疑い。市場万能、株価至上主義の危うさを示しています。(矢守一英)

■財界・大企業の強い要求で導入

 事件の背景には、規制緩和を進めてきた自民党政治があります。世界的な競争に勝つためにスピーディーな「企業の選択と集中」を進めるなどとして、企業再編(リストラ)と企業の合併・買収をしやすくする法改定を求めてきた日本経団連など財界と、投資を進めたい外国企業の要求にそったものでした。

 ライブドアグループが多用した株式交換による企業買収は、一九九九年の商法「改正」で導入されたもの。子会社となる会社の買収に、親会社の株式を使うことができるので、現金を準備する必要がありません。九七年に解禁された持ち株会社を使った子会社の設立や企業の買収を容易にしたいという財界・大企業の強い要求で導入されました。

 株価を高くする“錬金術”といわれる株式分割は、二〇〇一年施行の商法「改正」前は、(1)株式分割後の額面総額が資本金の額を超えないこと(2)株式分割後の一株あたり純資産額が五万円以上であること―という規制がありました。

 〇一年には、この規制を撤廃するとともに、株式分割による株式数増を取締役会だけで決定できるようになっています。

 また、事件の舞台となった投資事業組合は、出資者から集めた資金を投資し、株式公開などで利益を得ようとするもの。〇四年に、投資事業有限責任組合契約に関する法律(ファンド法)によって組合員の資格制限や人数制限が撤廃され、投資組合(ファンド)への投資を目的とする投資組合も自由に設立できるようになりました。

 日本共産党の塩川鉄也衆院議員は、この法律で利益を得るのは外資や大銀行、大証券などの投資ファンドだと指摘し、「怪しげな実態の把握を棚上げにしたままだ」と反対しました。その指摘を裏付ける形となりました。(吉川方人)

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