2006年1月16日(月)「しんぶん赤旗」

診療報酬引き下げ改定案

中医協、初の公聴会へ


 厚労省は診療報酬改定案を中医協(中央社会保険医療協議会)に示しました。中医協は、国民や患者の声を反映したいとして、改定案にたいする初の公聴会を二十七日に横浜市内で開きます。改定案は、過去最大の診療報酬引き下げ(3・16%)という政府方針にもとづいて、サービス単価(保険から医療機関への報酬価格)を見直すもの。一兆円にのぼる医療費削減がねらいです。国民にとっては、サービス低下につながる見直しや患者負担増が目白押しです。

■大病院外来

■患者の負担増受診抑制狙う

 中医協委員からも強い反対意見がでているのが大病院の外来受診の負担増です。対象は二百床以上の病院。ここで「他の病院又は診療所からの文書による紹介なしに初診が行われる場合」(改定案)、通常の三割負担以上の金額を患者から徴収することにします。

 現行でも三割負担以上が徴収されますが、この保険外負担をさらに拡大するものです。外来は身近な病院での受診が筋、それでも大病院の外来受診を選択するのは患者の自己責任という考え方です。厚労省側は「紹介なしに行きたい人は従前より二千円ほど余計に払ってもらうだけ」(医療課)と押し通すかまえです。

 これにたいし松浦稔明委員(香川県坂出市長)は「受診が抑制される。(市立病院では)外来の収入減となり、勤務医の存在自体を脅かす。絶対反対」とのべました。

■療養病床の入院料

■報酬引き下げ高齢者締出し

 長期入院の高齢患者(病状の早期回復が望めず社会的入院とよばれる)が利用する療養病床(病棟)の報酬を見直します。新たな患者分類・評価方式を導入して入院基本料に格差をつけるものです。改定案は、医療上の必要が高い患者への医療は報酬を引き上げ、医療の必要性が低い患者にたいしては報酬を引き下げるとしました。

 入院の必要性が低い患者を受け入れると病院の収入減になる仕組みにするもので、低所得・家族介護の困難などさまざまな事情をかかえる社会的入院患者を締め出していくねらいです。厚労省は介護保険でも、療養病床をかかえる施設の廃止を打ち出しており、これと同じ流れです。

 青木重孝委員(日本医師会常任理事)は「医療上の必要の高い患者も施設基準(病棟への看護職員配置数)を高くして事実上やれない形をとっている。(厚労省は介護でも医療でも)見放したということだ」とのべています。

■定額払いの拡大

■導入病院増で「過少診療」も

 救急の患者など早期退院が可能な急性期の入院病棟については、報酬を定額払いとする病院を増やします。

 定額払いは、病気の種類ごとに標準的な治療方法と報酬総額をあらかじめ決めておく仕組みで、診断群分類別包括評価(DPC)とよばれます。患者に提供された医療サービスの単価を積み上げて報酬額を決める出来高方式と区別されます。医療費抑制の支払い方式として財界が拡大を求めています。

 現在は大学の付属病院などに導入(百四十四病院)されていますが、改定案ではDPC適用の病院をさらに増やします。

 出来高方式は、病院収入をあげるため必要のない医療サービスの提供(過剰診療)の弊害が指摘されていますが、定額払いはできるだけ少ない医療サービスの投入で大きな利益を生み出そうという弊害(過少サービス)が問題になります。

 中医協の議論では、宗岡広太郎委員(日立製作所取締役監査委員)は「DPCの拡大に敬意を表する」と全面支持。松原謙二委員(日本医師会常任理事)は「入院一日あたりの医療費の動向は、DPCの病院がかなりあがっている」などと指摘して、適用拡大に反対しています。


■診療報酬改定案の検討項目

 〇セカンド・オピニオン(主治医以外の医師による助言)のプラス評価=セカンド・オピニオンを求める患者の希望を受けて、主治医が診療録や画像診断のコピー、検査結果などの診療情報を患者に提供し、別の病院で診察を受けるさいに提示することを評価

 〇禁煙指導を保険給付の対象とする=ニコチン依存症と診断された患者のうち希望者への禁煙指導を報酬上で評価

 〇手術の施設基準の見直し=手術件数が多い病院にたいする加算は、手術件数の多さと手術成績との間の相関関係はうすいとの調査結果がでたので廃止する

 〇在宅での末期医療を推進するため在宅療養支援診療所を新設=24時間連絡をうける医師または看護師を配置し、その連絡先を文書で患者の家に提供する

 〇初診料の格差見直し=病院への患者集中をやめさせるため病院の初診料を低くした改定の手直し。診療所の報酬を引き下げ、病院を引き上げ同じ報酬に統一する

 〇小児医療のプラス評価=新たに乳幼児時間外加算、同休日加算、同深夜加算を算定する。地域の小児医療で中核的な役割を担う病院の評価を引き上げ(小児科医師の集中・重点配置、中核病院への集約化で、地域によっては小児医療が後退する問題点を含む)

 〇急性期入院医療の見直し=入院基本料支払いの条件となる平均在院日数(早期退院ほど高い算定)の基準をさらに短縮する

 〇診療報酬の明細がわかる領収書の発行にプラス評価

 〇早期移植について心臓移植、脳死肺移植、脳死肝臓移植、膵臓(すいぞう)移植を新たに保険適用とする

 〇透析医療のマイナス評価=人工腎臓にかかわる夜間、休日の加算は廃止を検討


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp