2006年1月16日(月)「しんぶん赤旗」

主張

医療改悪

生存権否定の高齢者狙い撃ち


 政府が、通常国会(二十日開会)に法案提出を予定している、患者負担増の医療制度「改革」案にたいし、国民の批判が広がっています。

■広がる国民の批判

 日本医師会など三十九団体でつくる国民医療推進協議会がとりくんだ患者負担増反対署名には、千七百十八万人の国民がサインしました。

 地方議会でも医療制度「改革」案に懸念を表明する意見書を採択しています。高知県議会は、政府・与党の医療制度「改革」大綱の撤回と、国会への法案提出を行わないよう求める意見書を全会一致で可決しています。

 高知県議会の意見書が「高齢者の生存権を脅かす」と指摘するように、政府・与党の医療制度「改革」案は、高齢者を狙い撃ちしています。

 今年十月から、七十歳以上の高齢者のうち、現役並みの所得の人の患者負担を、現役と同様に三割に引き上げる。さらに、再来年の〇八年四月からは七十―七十四歳の一般所得者の患者負担を現行の一割から二割に引き上げる。七十五歳以上の高齢者を対象に、新たな医療制度を創設し、すべての高齢者から保険料を徴収し、年金から介護保険料とあわせて天引きする。療養病床に入院する患者の居住費・食費に新たな自己負担を強いる―。

 また、高額医療・人工透析の自己負担上限額も引き上げ、重い病気の人に重い負担を強いるという情け容赦のない負担増です。さらに、〇六年度予算案には、医療機関への診療報酬の大幅引き下げを盛り込んでいます。安心できる医療体制の土台を崩すものです。

 政府・与党は、「現役世代と高齢者世代の負担の不公平が指摘されている」ので、高齢者の負担増で「公平な制度」にするといいます。

 しかし、高齢者は現役世代に比べ、より多く病気をもっています。たとえ、同じ収入であっても、病気をもっている率が高い高齢者の窓口負担割合は、現役世代より低く抑えるのが当たり前です。だれもがいつかは高齢者になります。高齢者の窓口負担をあげれば、いま現役の人々も将来負担することになるのです。

 お年寄りに“負い目”をもたせて、必要な医療を断念させることを、“子や孫の世代のため”であるかのようにいう、政府・与党のごまかしを許してはなりません。

 政府・与党は、経済の伸び率にあわせて医療費の総額を抑制する計画を具体化しようとしています。五年後をめどに、目標値を決めるとしています。

 しかし、医療費が多いか少ないかは経済の伸びで決まるわけではありません。高齢化によって、医療費が増えるのは当たり前のことです。それを無理やり経済の伸びの枠に抑え込めば、高齢者は必要な医療を受けることができなくなります。

■必要な医療とりあげるな

 しかも、日本の医療費は、世界の主要国に比べてもGDP(国内総生産)比で一番少ない水準です。経済の伸びに抑えるというのは、一番少ない水準のままにするということになります。高知県議会の意見書は「医療費を抑制しなければ医療保険や国の財政が破綻するかのような主張もあるが、日本の医療費は、経済水準に比して決して過大ではない」とのべています。

 政府・与党の医療改悪は、人間が生きていくのに必要な医療をとりあげる生存権否定の暴挙です。これを許さないたたかいを強めていくときです。


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