2006年1月15日(日)「しんぶん赤旗」
「死の行進」を否定旧日本軍 免罪ルポ
『文芸春秋』に元捕虜が抗議文
【ワシントン=山崎伸治】第二次世界大戦中の一九四二年四月、フィリピンで旧日本軍が米比両軍の捕虜を約百キロメートルにわたって歩かせ、約一万七千人を死亡させた「バターン死の行進」について、月刊誌『文芸春秋』二〇〇五年十二月号が「この距離を歩いただけでは人は死なない」などとするジャーナリストのルポを掲載したことをめぐり、「行進」を体験した元米軍捕虜が十三日、同誌に対する抗議文を公表しました。
このルポは女性ジャーナリストの笹幸恵氏が昨年十月、「行進」のルートを実際に歩いた経験を交えて書いたもの。そのなかで同氏は、「私でも、歩ける距離なのだ」とし、「なるべく目的地まで近い道を選択しており、組織的な虐待という指弾はあたらない」「捕虜たちの証言は、鵜呑みにできないものも少なくない」などと旧日本軍を免罪する主張を繰り広げています。
これに対し「行進」の生存者でカリフォルニア州在住の元米軍捕虜レスター・テニー氏は抗議文で、「非常に屈辱的な結論だ」と批判。(1)「行進」の最初の四日間は食料も水もなかった(2)当時、捕虜の多くはマラリアや赤痢をわずらっていた(3)日の出から日没まで歩き、昼食休憩も夕食もなく、寝るときは倉庫に詰め込まれた―と「行進」の実態を証言しています。
そして「ジャーナリストとして『バターン死の行進』の状況について、できる限り正確に描く責任がある」「あなたの記事の読者が、『行進』は生存者の記憶ほどひどいものではなかったと誤って考えることを懸念している」と指摘。「誤りを正当化する方法をいつまでも見つけるのはやめよう。誤りはいつでも誤りだ。たとえ多数の人がそうではないと言ってもだ」と強調しています。