2006年1月14日(土)「しんぶん赤旗」

米兵のひき逃げ なぜ許されるのか

差別的地位協定なくして

本紙インタビューに被害家族が怒り

東京・八王子


 ひき逃げしても身柄は拘束されず、賠償は日本の税金でまかなわれる――。昨年末に東京・八王子市で起きた米兵による児童ひき逃げ事件で犯人の身柄は今も米軍に渡されたままです。今年に入って横須賀市では金銭強奪を目的にした米兵による殺人事件も。ひき逃げ事件被害者の家族は本紙のインタビューに「差別的な地位協定を廃止してほしい」「きちんとした補償を」との声をあげています。


 米兵によるひき逃げ事件が起きたのは昨年の十二月二十二日。横断歩道を渡っていた児童に米兵が運転するワゴン車がつっこみ、三人が重軽傷を負いました。目撃者によれば、米兵は信号を無視、はねた児童をそのままにして走り去りました。

 「うちの息子は数メートルも飛ばされた上、植木の上に落ちた。もしコンクリートの上だったら今も入院していたかもしれない」と話すのは鎖骨を骨折した児童の父親、土屋吉浩さん(41)。頭部打撲などの負傷をした児童の父親、大成信也さん(40)は「なぜ逃げたのか。米兵であっても交通事故としてきちんと処罰されるべきだ」と怒りを込めます。

 犯人は八王子署員に緊急逮捕されたものの「公務中」ということで米軍に身柄が渡され、いまもそのまま。日米地位協定では、公務中の事故であれば米側が優先的な裁判権をもつ、と規定しています。米側に裁判権を放棄させ、身柄を移させる道はあります。しかし日本政府は強く引き渡しを求めるどころか、要求すらおこなっていません。

 事故の翌日に謝罪にきたのは米兵の犯人ではなく、日本の防衛施設庁。犯人の謝罪は事故から二日後で、上司が付き添ってきました。

 大成さんは「米兵は“パニックになった”“信号は黄色だった”といいますが、きちんと捜査しないと本当のことはわからない。子どもに米軍だから仕方ないと説明しろというのでしょうか」といいます。

 家族にとってもうひとつの問題が医療費をはじめとした補償問題。防衛施設庁からは「支払いは半年先になる」と説明され、病院に支払いを待ってもらっている家族もいます。

 現在の地位協定では米軍の公務中の事故は、ほとんどが日本の税金で補償され、ひき逃げ犯人にかわって日本の国民が肩がわりする屈辱的な仕組みです。

 被害にあった家族たちはいいます。

 「きちんと補償してほしいのは当然です。しかし、犯人も捕まえない。日本の法律にもとづいて裁くこともできない。こんな地位協定をそのままにしていいのか。廃止すべきです」


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