2006年1月13日(金)「しんぶん赤旗」
第24回党大会にたいする中央委員会報告
幹部会委員長 志位和夫日本共産党第24回大会初日の11日、志位和夫委員長がおこなった「第24回党大会にたいする中央委員会報告」は次の通りです。
代議員、評議員のみなさん、CS通信をご覧の全国の党員のみなさん。私は、中央委員会を代表して、第二十四回党大会にたいする報告をおこないます。
大会決議案が発表されて約二カ月が経過しました。この間、「すべての支部での討論で練り上げよう」のよびかけにこたえて、全党で熱心な討論がおこなわれました。
とくに、決議案が、新しい綱領をふまえ、日本と世界の情勢の進歩的打開の道をしめしたこと、今年から来年を展望して党活動の抜本的な発展方向を提起したことは、積極的に受け止められ、討論のなかで深められました。
中央委員会報告は、章ごとに、全党討論をふまえて解明が必要な問題、情勢の進展にそくして補強すべき問題などを中心におこないます。
討論でよせられた修正・補強意見については、大会の討論での意見もふくめて、大会討論が終わった時点で、補強・修正した決議案を提出することにします。
決議案第一章(自民党政治の異常な特質と、日本改革の方針)について
まず、決議案第一章(自民党政治の異常な特質と、日本改革の方針)についてであります。
過去の侵略戦争を正当化する異常──決議案の警告が現実のものに
決議案第一章では、自民党政治の異常な特質を、歴史問題、対米従属、大企業中心の三つの角度から解明するとともに、それを根本的に打開する改革の道をさししめす新しい綱領の立場を明らかにしています。
一段と深刻になった日本外交の孤立と破綻
まず過去の侵略戦争を正当化する異常について報告します。
決議案第二節は、小泉首相の靖国神社参拝問題について、「靖国神社の歴史観、戦争観──過去の日本の侵略戦争を、『自存自衛の戦争』『アジア解放の戦争』として正当化する“靖国史観”にたいして、日本政府が公認のお墨付きをあたえるような行動をとることが、今日の世界において許されるか。ここに問われている問題の核心がある」とのべました。
そして、首相による靖国神社の五年連続参拝という事態をうけて、決議案は、「首相による靖国参拝が、日本の国策として固定化される危険が生まれていることは重大である。かりに日本がそうした方向にすすむならば、日本の国益の損失ははかりしれないものとなる」と強く警告しました。
この警告の的確さは、決議案発表後の情勢の進展をつうじて証明されました。昨年、十一月から十二月にかけて、韓国でのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議、マレーシアでのASEAN(東南アジア諸国連合)+日中韓の首脳会議、東アジア首脳会議など、重要な国際会議が連続しましたが、日本外交の孤立と破綻(はたん)は一段と深刻になりました。
日本と中国、韓国との関係は、最悪の状態におちいり、首脳間の会談が事実上成り立たないところまで事態は悪化しました。ASEAN諸国からも日本にたいする懸念と批判が続出しました。十六カ国の首脳が参加しておこなわれた東アジア首脳会議では、「一連の会議をつうじて、靖国問題への中韓両国の懸念が、(日本をのぞく)十五カ国に共有されることになった」といわれる状況となりました。
米国からも懸念と批判が公然とよせられています。昨年、十一月の日米首脳会談、米中首脳会談で、ブッシュ大統領が、小泉首相の靖国参拝による日中関係の悪化に懸念をのべ、アジア戦略の見直しを強くもとめていたことが、明らかにされました。ヒル米国務次官補は、「歴史問題をめぐる日中対立はアジアでの米国の利益を損ないかねない」とのべましたが、この発言は、日本にたいする批判としてのべられたものにほかなりません。
小泉首相の居直りの発言が、問題解決をいっそう困難にしています。首相は、靖国参拝を「心の問題」だとして、それへの批判を「理解できない」とのべています。年頭の記者会見では、「理解できない」という言葉を五回も連発しました。しかし問題となっているのは、首相の「心」ではなく、参拝という行為なのであります。それが客観的にどういう政治的意味をもつかが、問われているのであります。
首相はまた、「一つの問題で意見の相違や対立があっても、全体の友好関係を損なうようなことをしてはならない」と、中国、韓国などに責任を転嫁する発言をくりかえしています。しかし問われているのは、あれこれの部分的な個別問題ではありません。侵略戦争にたいする認識という戦後世界の秩序の根本にかかわる問題であります。それが「理解できない」というならば、首相個人の理解能力の貧しさだけでなく、国際政治に参加する資格が問われることになることを、私は、きびしく指摘しなければなりません。(拍手)
侵略戦争の正当化という問題の性格、位置づけについて
討論のなかで、「決議案がいう自民党政治の第一の異常(侵略戦争の正当化)と第二の異常(アメリカいいなり)との関係はどういうものか」との質問がよせられました。
侵略戦争の正当化という問題は、日米関係での従属問題とは、性格のちがう、日本と世界との関係の問題──戦後世界の秩序の土台にかかわる問題であります。日本、ドイツ、イタリアがおこなった戦争が、犯罪的な侵略戦争であったという認識は、米国をふくめ国際社会全体が共有する認識であり、侵略戦争を正当化する行動は、この国際秩序の土台にまっこうから反するものであります。わが党は、靖国問題は、日米間の矛盾にも発展する問題をはらんでいるととらえ、そのことを正面から提起してきましたが、それは事態の進展そのものによって裏付けられました。
討論のなかで、「小泉首相がアメリカいいなりなのに、なぜブッシュ大統領も批判する靖国参拝に固執するのか」との質問もよせられました。たしかにこれは矛盾ですが、その根源は、わが国では、侵略戦争を推進した勢力の後継者が、戦後も、アメリカ占領軍の方針のもとに、反省抜きに政権を握りつづけ、その戦犯的体質が今日にいたるまで受け継がれているところにあります。それがきわめて根深いものであることを、今回の事態はしめしました。
決議案がのべているように、自民党政治の第一の異常(侵略戦争の正当化)と第二の異常(アメリカいいなり)とは区別して、いわば複眼でとらえてこそ、いまおこっていることを正確にとらえることができ、打開の道筋もみえてくることを強調したいと思います。
日本改革の事業のなかでのこの問題の位置づけを、正確にとらえることが大切であります。新しい綱領は、過去の侵略戦争への反省を、「新しい日本の平和外交」の方針の冒頭に位置づけていますが、それはこの問題の解決が、民主的政権が樹立される以前には無理だという立場にたつものではありません。決議案がのべているように、「侵略戦争を正当化する異常な政治から脱却し、大本からの転換をはかることは、民主的政権の樹立を待たずに実行すべき、急務中の急務の課題」であります。このことを重ねて強調したいと思います。
わが党は、日米安保条約や、財界・大企業中心政治の是非という、国政改革の基本問題で立場を異にする人々とも、この問題では協力して、国民的世論と良識を結集し、事態の前向きの打開をはかるために力をつくすものです。(拍手)
アメリカいいなり政治の異常──「米軍再編」、憲法改悪とのたたかい
決議案第三節は、「日米軍事同盟の体制は、日米安保条約の枠組みさえこえた、地球的規模の『日米同盟』への侵略的変質を深めている」として、小泉政権のもとでアメリカいいなり政治が一段とひどくなったことを解明し、この政治を根本から転換する新しい綱領の立場をのべています。
報告では、その二つの重大な焦点──「米軍再編」問題と、憲法改悪に反対するたたかいについてのべます。
「米軍再編」の動きとのたたかいについて
まず、「米軍再編」の動きとのたたかいについて報告します。
決議案発表後も、基地強化に反対するたたかいは大きく発展しています。日米両国政府は、三月にも「最終報告」をまとめ、無理やり強行する構えであります。国民のたたかいを発展させ、この動きを許さないことは、さしせまった重大な課題となっています。
たたかいを前進させるうえで、いま、「米軍再編」の名ですすめられていることの全体像を広く知らせていくことが重要であります。
第一に、アメリカ・ブッシュ政権が、地球的規模ですすめている「米軍再編」とは何か。それは「朝鮮戦争以来の大規模な再編」といわれるもので、つぎの二つの柱からなっています。一つは、米軍を、イラク戦争のような先制攻撃の戦争をたたかうために、世界のどこにでも迅速に展開できる、より機動的な軍隊につくりかえ、再配備することです。いま一つは、この戦争をともにたたかうために、同盟国との本格的な軍事的協力体制をつくりあげることです。「米軍再編」計画を策定したファイス米国防次官(当時)は、「われわれは同盟国に対して、本当に使い物になる司令部と部隊を確立するように促している」と言明しています。
第二に、この計画のなかで、日本はどういう位置づけがされているでしょうか。日本ですすめられている「米軍再編」とは、在日米軍基地の強化だけではありません。決議案がのべているように、(1)日米が「テロ」「大量破壊兵器」への対抗など「世界における共通の戦略目標」をもち、(2)米軍と自衛隊が一体になって世界のどこにでも出撃できる軍事態勢をつくり、(3)そのために在日米軍と自衛隊の基地機能を強化する──これがいまおこっている動きです。すなわち「戦略目標」「軍事態勢」「基地機能」の三つの面で、日米の軍事一体化をすすめるということであります。
重大なことは、アメリカが地球的規模ですすめている「米軍再編」のなかで、「日米同盟」の強化は、中軸的位置をあたえられており、世界でも突出した異常性と従属性をもっているということです。
──在日米軍は、沖縄と岩国を本拠地とした海兵遠征軍、横須賀を母港にした空母打撃群、佐世保を母港にする強襲揚陸艦など遠征打撃群、三沢などを本拠地とする航空宇宙遠征軍など、もともと「日本防衛」とは無縁の海外遠征──“殴り込み”専門の部隊です。その“殴り込み”部隊の司令部機能や機動性が、陸海空・海兵四軍そろって、いっそう強化されようとしています。ここにまず世界の他に類のない異常性があります。
──米軍と自衛隊との軍事一体化は、自衛隊を米軍の補完戦力として、米戦略のなかに組み込む形で進行しています。たとえばキャンプ座間での米陸軍と陸上自衛隊、横田基地での米空軍と航空自衛隊の司令部機能の統合は、米軍の指揮のもとで自衛隊が海外展開する態勢づくりにほかなりません。アジア・太平洋に展開する米兵の輸送を、海上自衛隊の高速輸送艦が受け持つなど、自衛隊が米軍の目したの軍隊として補完的任務をはたす計画がすすめられています。すなわち、これは、対等な軍隊の間での軍事一体化ではありません。イギリス軍が米軍と連携・共同しても、比較的自立的な活動をしていることと比較しても、従属的一体化というところに特徴があります。
──ブッシュ政権は、中東から北東アジアまでの広大な地域を、「不安定の弧」などとよび、この地域への軍事的介入戦略をもっていますが、日本はこの地域への戦力投入の前線拠点としての役割をになわされようとしています。
──米軍駐留経費負担で、すでに日本はアメリカから「世界一気前がいい」といわれる、突出した役割をはたしていますが、今回の米軍再編で約一兆円といわれる海兵隊司令部のグアムへの移転費用を日本が負担するという計画が進行しています。米国の領土にある米軍基地の増強に日本国民の税金を投入するというのは、歴史的にも世界でも類のない、まったく許しがたいことではありませんか。(拍手)
小泉首相は、基地強化の受け入れは「平和と安全の代価だ」と発言しました。「代価」の一言で基地の負担をおしつけるのかと大きな怒りが広がりましたが、基地強化の動きは、日本の「平和と安全を守る」こととはまったく無縁のものであります。「平和と安全」どころか、日本を、地球的規模での“殴り込み”戦争の一大根拠地にし、世界とアジアの平和を脅かす震源地に変えようというのが、ことの本質であります。ですから、この動きに反対するたたかいは、それぞれの地域の住民生活の平穏と安全を守るたたかいであるとともに、アジアと世界平和を守る大義をもったたたかいであるということを強調したいと思うのであります。(拍手)
いま全国各地で、基地強化反対のたたかいが、政治的立場の違いをこえた、自治体ぐるみのたたかいとして発展しつつあります。沖縄県の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部への海兵隊新基地建設について、沖縄県知事は「とても受け入れられない」と言明しました。神奈川県のキャンプ座間への米陸軍新司令部移設にたいして、相模原市長は「戦車にひかれても反対だ」とのべ、座間市長は「ミサイルを撃ち込まれても反対だ」と言明しました。この間、米兵による小学生ひき逃げ事件、女性殺害事件など凶悪犯罪があいついだことも、怒りをさらに広げています。
それぞれの地域の実情にそくして、最も多くの人々が結集できる積極的一致点で、自治体ぐるみのたたかいを、揺るがず発展させることが、このたたかいに勝利する最大のカギです。わが党はそのために、全力をつくすものであります。(拍手)
憲法改悪反対のたたかい──この策動の狙いが明りょうになってきた
つぎに、憲法改悪反対のたたかいについてのべます。
決議案は、「アメリカの先制攻撃の戦争に参戦するために、自衛隊を『戦争のできる軍隊』にし、日本を『戦争をする国』につくりかえること──ここに憲法九条改変の最大の核心がある。この正体を広く伝えきることが、憲法改悪反対の国民的多数派を結集していくうえでの最大の要である」とのべています。
決議案発表後の情勢で重要なことは、「アメリカとともに海外で戦争する国づくり」という憲法改定の「正体」──その狙いが、改憲勢力自身の動きによっても、いよいよ明りょうになってきたというところにあります。
第一に、改憲案の具体化がすすむにつれ、その狙いがどこにあるかが明らかになってきたということです。
自民党は、十一月二十二日の結党五十周年の党大会で「新憲法草案」を決定しましたが、この「草案」は、憲法前文から侵略戦争への反省などを削除するとともに、憲法第九条二項を削除し、「自衛軍の保持」を明記し、「自衛軍」の任務として「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」への参加を規定し、海外での軍事行動をおこなうことを公然と打ち出しました。しかも重大なことは、「自衛軍」の海外での軍事行動が、どんな軍事行動への参加か、どういう形態での参加かについて、この「草案」にはいっさいの制約がないことです。この規定ならば、米英軍によるイラク侵略戦争も、「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」となり、「自衛軍」が参戦できるということになります。
「新憲法草案」が公表されたさい、マスメディアはいっせいに「海外での武力行使に道を開く」と報道しました。小泉首相は、「改憲の目的は、現に存在する自衛隊を憲法に書き込むだけで、海外での戦争など毛頭考えていません」と、その狙いを隠しつづけました。しかし、改憲案を具体化してみれば、その目的がどこにあるかは誰の目にも明りょうとなりました。
民主党の前原代表は、十二月の訪米のさいの講演で、「憲法を改正して、集団的自衛権を行使できるようにするべきだ」と言明し、海外での武力行使が改憲の目的であることを、自民党以上にあからさまにのべました。これは改憲勢力の本音を正直に代弁したものにほかなりません。
第二は、「米軍再編」の動きが、憲法九条改定の動きと直接に連動していることが、その具体化の過程で浮き彫りになってきていることであります。
十二月、アーミテージ前国務副長官は、「日本は地球的役割を」との一文を日本のマスメディアによせ、つぎのようにのべました。
「海外での役割の拡大を通じて、日本は、さらに注目すべき地球規模のパートナーとなった。だが、課題が残っている。それは日本がどのような地球規模の役割を果たすかにある。あえて言えば、その決断には日本の憲法第九条の問題がかかわっている」
日本は、イラクへの自衛隊派兵など、すでに「地球規模のパートナー」となった、これから先の課題は「どのような地球規模の役割を果たすか」にある、つまり海外に派兵するだけでなく、軍事力をさらに増強し、米軍とともにたたかう軍隊になれるかどうかが課題として残っている、そしてその決断には九条改定が必要だというのです。
こうした新しい情勢の進展をふまえ、「海外で戦争する国づくり」という改憲策動の「正体」を国民に広く伝えきる仕事にとりくむことが、きわめて大切となっています。
世界の構造変化と憲法九条への国際的注目
決議案が、「いま世界では、憲法九条を、国際社会の平和秩序をつくっていくうえでの指針、とりわけ東アジアでの平和と安定の秩序をつくるうえでの指針として評価する動きが広がっている」として、「GPPAC(ジーパック)」(武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ)をはじめとする世界のNGO(非政府組織)の動きに注目したことに、討論のなかで大きな積極的反響がよせられました。
報告では、こうした市民レベルの運動からの評価だけでなく、国連関係者からも憲法九条への評価がよせられていることを紹介したいと思います。
国連開発計画(UNDP)のマーク・マロックブラウン総裁(当時)は、参議院憲法調査会が国連を訪れたさい、つぎのようにのべました。
「日本の憲法が高い価値として示している平和や発展、人道的安全保障といったものは、国連、UNDPでも高い価値として評価されています」
国連安保理が設立した元旧ユーゴ戦犯国際法廷裁判長のアントニオ・カッセーゼ氏は、日本の外務省が開いたセミナーで、つぎのようにのべています。
「日本国憲法第九条は、戦争や戦争に関する行為に訴えることを禁止しており、すばらしい規定です。……第二次大戦に敗戦したドイツ、日本、イタリアの中で、日本の憲法が抜きん出て優れていると思います。第九条は非常にすばらしい規定であり、この規定が改正されないことを切に願います」
開発をつうじて平和構築にとりくんでいる国連機関の責任者や、民族間の集団殺りくを裁いた国際法廷の裁判長が、そろって、日本国憲法第九条を高く評価していることは、重い意義をもつものだと考えます。
ここで強調したいのは、いま世界で憲法九条への新たな注目と評価がよせられるのは偶然ではないということです。その根底には世界の大きな構造変化があります。
──戦後、植民地体制が崩壊し、新たに独立をかちとった国々は、国連憲章にもとづく世界の平和秩序をきずく重要な担い手となりました。
──植民地体制が崩壊した後、世界各地にアメリカを中心とする軍事同盟体制がつくられたが、この体制も、いまではその多くが解体、機能不全、弱体化におちいり、それにかわって仮想敵国をもたない平和の地域共同体が広がっています。
──さらに、米ソ対決の構図が崩壊したことが、世界の平和秩序・平和のルールをもとめる諸国民の運動の新たな発展の条件をつくりました。
──これらの世界の構造変化は、イラク戦争にさいして、地球的規模でわきおこった空前の平和の波となってあらわれました。
決議案がのべているように、「戦後六十年をへて、国際政治の現実が、憲法九条が掲げた理想に近づいてきている」──ここに今日の世界の新しい特徴があります。改憲勢力は、こうした新しい世界の姿に目を閉ざし、日本が憲法九条を持っていることが、「世間並みでない」「肩身の狭い」ことであるかのように、喧伝(けんでん)しています。それだけに、二一世紀の世界の流れの中での憲法九条の値打ちを明らかにしていくことは、重要な意義をもつものです。
日本とアジアの平和にかかわる歴史的闘争──国民的多数派の結集を
憲法をめぐるたたかいは、二一世紀の日本の進路を左右するばかりでなく、世界とアジアの平和秩序にもかかわる歴史的闘争です。日本共産党は、反戦・平和の一貫した歴史をもつ党として、憲法改悪反対の一点でのゆるぎない国民的多数派を結集するために、党の存在意義をかけて総力をあげてたたかうものです。(拍手)
わが党は、政治的立場、思想・信条の違いをこえた広い国民的共同の前進のために力をつくします。「九条の会」は、結成一年半で大きな発展をとげ、先日、地域、職場、学園、分野別の「九条の会」は四千を突破したことが明らかにされました(拍手)。わが党は、この運動の一翼をにない、草の根の組織を壮大な規模で発展させるために奮闘します。
同時に、中央と全国各地につくられた憲法改悪反対の「共同センター」や民主団体との連携を強化しつつ、党独自の積極的役割をはたします。憲法改悪反対の一点での共同を促進するうえでも、改憲勢力の「論理」を打ち破り、憲法擁護闘争の大義と展望を明らかにしていくことは、わが党の重大な責務であります。
自民・公明・民主の三党は、憲法改定のための国民投票法案を提出・成立させる動きを強めています。この問題では何よりも、いま、この法案を提起しようという動機が、よこしまなものであるということが最大の問題であります。いま、この法案を提出する狙いが、憲法九条を改定して「海外で戦争をする国」づくりをすすめることにある、その動きと一体のものであることは明らかです。憲法改悪反対の国民的な世論と運動を広げながら、国民投票法案の強行を許さないたたかいにとりくむことは、直面する重要な課題です。
「九条の会」は、そのスローガンに「憲法九条いまこそ旬」と掲げています。このスローガンがぴったりくる情勢が、二一世紀の世界で展開しています。そのことに確信をもって、国民的多数派を結集する運動に力をそそごうではありませんか。(拍手)
大企業中心主義の異常──社会的連帯で社会的反撃のたたかいを
決議案の第四節では、小泉内閣が、「構造改革」としてすすめてきた「新自由主義」の経済路線が、日本経済と国民生活に何をもたらしているかを全面的に告発し、この攻撃に社会的反撃をもってこたえるたたかいの先頭にたつとともに、新しい綱領のしめす経済の民主的改革の方針を広い国民のものとしていくことをよびかけました。
貧困と社会的格差の新しい広がりと、日本共産党の役割
決議案が、生活保護世帯、教育扶助・就学援助を受けている児童・生徒、貯蓄ゼロ世帯が急増するなど、貧困と社会的格差の新しい広がりが重大な社会問題になっていることを正面から告発したことは、大きな反響をよびました。討論のなかで、全国どこの地域、職場、学園でも身近でおこっている切実な問題として議論されました。今日おこっている貧困と社会的格差の新しい広がりという問題をとらえるさい、つぎの諸点が重要であります。
──国民全体の所得が連続的に減少するなかで、貧困層が広がるという事態は、戦後初めての異常事態であります。かつて一九七〇年代初頭、当時の高度経済成長のなかで、「新しい貧困」が問題とされたことがありましたが、この時問題とされたのは、国民の所得水準が全体として向上するもとでの、「公害問題」など生活環境の破壊、長時間労働による健康被害など、新しい形での貧困でした。ところが、今日おこっているのは、一九九七年をピークに九八年以降、連続的に国民全体の所得水準が絶対的レベルで減少するなかで、貧困層が広がるというきわめて深刻な事態です。
──貧困と格差の拡大という事態が、九〇年代末ごろから急速にすすんでいるということです。一九九七年と直近の数字を比較して、生活保護受給世帯は六十万世帯から百万世帯へ、教育扶助・就学援助受給者は6・6%から12・8%に、貯蓄ゼロ世帯は10%から23・8%に、どれも激増しています。いままでの延長線上でない、新しい重大な事態が急速にすすんでいるのであります。
──この原因は、「構造改革」の名のもとに、国民に痛みをおしつけ、大企業の利潤追求を応援する「新自由主義」の政治にあります。貧困と社会的格差が拡大したこの数年は、「構造改革」の名で、非正規雇用の急増など人間らしい雇用の破壊、中小零細企業への貸し渋り・貸しはがしなどによる経営苦・倒産・廃業の広がり、庶民増税と社会保障の連続改悪などがおしつけられてきた数年でありました。庶民生活を破壊しつづけてきた財界・大企業と政治の責任がきびしく問われなければなりません。
全党討論のなかで、国民の状態悪化の実態がリアルに出され、国民の苦難にこたえて日本共産党がどんな役割を果たすべきかということが、真剣に議論されていることは、きわめて重要であります。生活相談や労働相談の意義をあらためて確認し、抜本的に強めようという議論がおこなわれています。職場での非正規雇用の急増と労働者の無権利状態を打開するためにたたかう新たな決意が、職場支部の討論のなかで出されています。“国民の苦難と要求にこたえてたたかう”という日本共産党の立党の原点にたった役割と活動が、いまほど強くもとめられているときはないということを強調したいと思います。(拍手)
社会的反撃の熱い焦点について
決議案は、「日本共産党は、人間らしい暮らしの基盤を破壊する攻撃にたいして、社会的反撃をもってこたえるたたかいの先頭にたって奮闘する。とりわけ、庶民大増税に反対するたたかい、社会保障切り捨てを許さないたたかい、人間らしい雇用をもとめるたたかいは、直面する熱い焦点である」とのべています。
暮らしを守る社会的反撃のたたかいを前進させるうえで、(1)税制・社会保障制度・労働法制など制度改悪に反対し、民主的改革をもとめるたたかいと、(2)切実な国民の要求にこたえ、一歩でも二歩でも国民生活の実際の改善をかちとるたたかいとを、統一的にとりくむことが大切であります。
庶民大増税に反対する国民的たたかいを
まず庶民大増税反対のたたかいについて報告します。この間、政府・与党は、大増税計画の第一歩として、二〇〇七年度に所得税・住民税の定率減税を全廃して三・三兆円の増税を実行に移すことを決定しました。また消費税増税について、「二〇〇七年度をめどに消費税を含む税体系の抜本的『改革』を実現させるべく、とりくんでいく」ことを、与党税調として確認しました。消費税増税については、国民の強い怒りと批判を恐れて、時期を先のばしにする動きもありますが、近い将来にこの計画を具体化することでは、政府・与党、民主党の立場は一致しています。庶民大増税の計画を許さないたたかいは、重大な局面をむかえています。
まず強調したいのは、所得税増税にせよ、消費税増税にせよ、国民を欺いて大増税をおしつけることは、絶対に許されないということです。総選挙で、自民党は、「サラリーマン増税はやらない」と公約しました。消費税についても、小泉首相は「任期中の増税は考えていない」の一点ばりで、増税計画を国民にひた隠す態度をとりつづけました。ところが、選挙で議席の多数をしめると、一転して増税路線をおしつけるというのは、国民を詐欺にかけるにひとしい暴挙であって、絶対に許されるものではありません。(拍手)
さらに、庶民には大増税路線をおしつけながら、財界・大企業への減税措置は、法人税率の引き下げを恒久化し、研究開発減税やIT減税などの特別優遇税制についても、わが党の批判をうけて一部手直ししたものの形を変えて温存しようとしていることも許しがたいことであります。バブルの時期を上回る空前のもうけをあげ、八十三兆円もの余剰資金をかかえている大企業にこそ応分の負担をもとめよという声は、立場を超えて広がりつつあります。わが党は、「庶民に増税、大企業に減税」という逆立ち税制をただすことを、強くもとめてたたかいます。庶民大増税反対の一点での国民の共同したたたかいを日本列島津々浦々からわきおこすために、力をあわせて奮闘しようではありませんか。(拍手)
社会保障切り捨て、医療改悪とのたたかい
社会保障の問題では、医療大改悪とのたたかいが焦眉(しょうび)の課題であります。高齢者の窓口負担を二割、三割に引き上げる、七十五歳以上のすべての高齢者からの保険料徴収と年金からの天引き、入院患者の居住費・食費の新たな自己負担、高額療養・人工透析の負担上限引き上げなど、情け容赦ない負担増がおしつけられようとしています。医療機関への診療報酬の大幅引き下げも、安心できる医療体制の土台を崩すものであります。
政府・与党は、「現役世代との公平」を理由にしています。しかし、有病率──病気をもつ率が高いお年寄りの窓口負担は、現役世代より低く抑えて当たり前であり、それこそが本当の公平であります(拍手)。しかも誰もが年をとるのであって、高齢者の窓口負担増は、いずれは現役世代への負担増にもなるわけです。お年寄りに「負い目」をもたせて、必要な医療を断念させることを、「子や孫の世代のため」であるかのようにいう攻撃を許してはなりません(拍手)。さらに政府・与党は、経済の伸び率にあわせて医療費の総額を抑制する計画を具体化しようとしています。しかし、医療費を経済と連動させて抑制することに、何の根拠も道理もありません。
人間が生きていくのに必要な医療をとりあげる生存権否定の暴挙を許さないたたかいを、強くよびかけるものであります。(拍手)
介護保険法改悪による食費・居住費の新たな徴収の導入につづき、要介護度が軽い方へのサービスの切り捨て、障害者に過酷な痛みをおしつける「自立」支援法が四月から実施されます。住民税増税にともなう国保料や保育料、公営住宅家賃など「雪だるま式」の負担増が、低所得者や高齢者に襲いかかろうとしています。これらの攻撃から国民の暮らしを守り、必要な社会保障サービスを保障させるために、国政でのたたかいとともに、地方自治体でのたたかいを重視し、一歩でも二歩でも現状の改善をかちとるために力をつくします。
人間らしい雇用──職場から無法を一掃しよう
人間らしい雇用をもとめるたたかいでは、労働分野の規制緩和に反対し、働くものの権利を守るルールをつくるたたかいとともに、職場から無法を一掃するたたかいに、力をそそぎます。
不安定雇用のもとにおかれている労働者の極端な低賃金や無権利状態は、さまざまな違法・脱法行為のうえに成り立っています。正社員として働いている労働者のなかでも、「サービス残業」による異常な長時間労働など、無法が横行しています。
相手が巨大企業であっても、違法行為は許されません。公然と旗をたててたたかいに立ち上がれば、要求は実現できます。立ち上がることには勇気もいりますが、立ち上がれば勝利できます。日本共産党は、労働組合や民主団体との共同を広げ、職場でも地域でもたたかいをおこし、職場から無法を一掃するために、全力をあげるものです。(拍手)
「新自由主義」という特徴づけについて
こうした社会的反撃のたたかいを前進させるうえで、「構造改革」を国民におしつけるための誤った考え方を打ち破ることは、きわめて重要であります。
全党討論で、「小泉内閣の経済路線を『新自由主義』と特徴づけたのはなぜか」との質問がよせられました。そこでまず、「新自由主義」という特徴づけをおこなったことの意味についてのべておきたいと思います。
決議案では、「新自由主義」について、「大企業の利潤追求を最優先にし、規制緩和万能、市場原理主義、弱肉強食をすすめる経済路線」と、具体的な特徴づけをのべています。ここでのべているように、「新自由主義」における「自由」とは、労働者・国民の利益を守る社会的規制からの「自由」であり、大企業が利潤追求のために横暴勝手なふるまいをする「自由」にほかなりません。
こうした経済路線を「新自由主義」と特徴づけたのは、この流れの源流が、レーガン政権以来のアメリカなどにあり、その路線を日本におしつけるなかで形成されてきたという、この潮流の国際的由来を端的に示すことができるからであります。また、「新自由主義」は、「小さな政府」「官から民へ」など、アメリカ仕込みの一連の経済理論・政策の集合体であって、これらの誤った考え方とたたかううえでも、重要だからであります。
討論のなかでは、「新自由主義は緊縮財政を特徴としており、『新自由主義』と規定すると、公共事業の浪費を批判できなくなるのではないか」との質問も出されました。しかし、「新自由主義」における「緊縮財政」とは、何よりも社会保障や国民むけサービスの切り捨てに矛先をむけたものであり、大企業の利潤拡大のための巨額の財政支出を躊躇(ちゅうちょ)しないのが特徴であります。そのことは、「新自由主義」の国・アメリカで膨大な財政赤字を生み出しながら、巨額の軍事費を支出し、軍産複合体を形成していることにも示されています。またそれは日本でも、「構造改革」の最優先課題として、大銀行救済のために七十兆円もの公的資金枠をもうけ、十兆円をこえる税金を投入して「不良債権」の後始末をおこなったことにも示されています。
公共事業については、財政危機のもとで、一時のような「景気対策」を口実にした公共事業の積み増しはできなくなっていますが、なお国と地方と公団で年間三十六兆円という異常な規模での巨額の財政支出がつづいており、「逆立ち財政」という党綱領の批判は、ひきつづき重要な意義をもちます。そのさい、小泉内閣になってからの公共事業が、都市再開発、国際空港、スーパー中枢港湾、大都市環状道路など、大企業の「国際競争力」の強化に役立つことを名目にした分野に重点化されていること──新しい浪費が広がっていること、同時に「従来型」の公共事業の浪費も温存されていること、さらに「生活密着型」の公共事業は切り捨ての方向にあることなど、新しい特徴を正確にとらえて、批判と改革を提起していくことが大切であります。
耐震強度偽装事件と規制緩和万能論の破綻
大会決議案は、「官から民へ」「小さな政府」などの誤った考えを打ち破ることの重要性を強調していますが、日本列島を揺るがす大問題に発展している耐震強度偽装事件は、これらの議論が大破綻におちいったことを示すものにほかなりません。
今回の事件の直接の責任が、耐震偽装のマンションをつくった当事者たちにあることはいうまでもないし、その責任は徹底的に糾明されなければなりません。同時に、問題の根本は、一九九八年の建築基準法改悪で、建築確認の検査を、「官から民へ」といって民間検査機関に「丸投げ」できるようにした規制緩和にあります。建築確認という建物の安全を守る制度にまで「官から民へ」を持ち込み、利潤第一の市場競争主義にまかせてしまった結果、民間検査機関が、不動産業界や建設業者のいうままに「建築確認」をおこなう──検査を手抜きにするという事態をつくりだしました。
これは、一九九八年の建築基準法改悪のさいの国会質疑で、わが党が指摘していたことでした。わが党は、当時の国会質疑のなかで、「民間まかせでは検査の公正・中立性の確保は困難になる」、「手抜きの可能性もある」、「安かろう悪かろうという検査になる」ときびしく警告する論陣をはっています。この問題点を指摘して、建築基準法改悪に反対したのは、日本共産党のみでありました(拍手)。今回の事件では、「建築確認」という行政の責任が問われているだけではありません。国民の生命と安全、財産を守るための建築行政に「大穴」を開けてしまった政治の責任、政党の責任がきびしく問われているのであります。(拍手)
規制緩和万能論は、JR西日本の大事故でも、耐震強度偽装事件でも、国民の命と安全を脅かす深刻な事態をつくりだし、社会的にもその批判が広がりつつあります。この根本にメスをいれることこそ、いま強くもとめられていることを強調したいと思います。
社会的連帯で社会的反撃を
大会決議案が、「『構造改革』の考え方に共通するのは、国民の中に『対立』をつくり、『分断』をはかることである。『公務員労働者と民間労働者』、『現役世代と高齢者』、『労働者と自営業者』、『働く女性と専業主婦』など、意図的に『対立』をつくり、暮らしを壊す政治に反対する勢力や運動を、『既得権益』を守るための『利己的』行動とえがいて攻撃する。これが常とう手段である」とのべ、「こうした国民分断の攻撃にたいして、社会的連帯を大きくおしだし、その立場にたった反撃とたたかいをすすめることが重要である」とよびかけたことに、討論のなかで大きな共感の反響がよせられました。
小泉首相は、さきの総選挙で、この「常とう手段」をフルにつかって公務員攻撃をおこない、郵政民営化をおしつけるテコとしました。しかしこれは小泉首相が自分で考えだした「独創品」ではないのです。日本経団連の奥田会長は、二〇〇二年におこなった講演のなかで、つぎのようにのべていました。「課題の解決に立ちはだかるのが、既得権益を持つ抵抗勢力であることは明白であります。しかし、抵抗勢力とは、何も特定の業界や族議員だけではありません。実は国民誰しもが、ある意味、抵抗勢力となりえます」。首相が使った国民分断の手法は、財界仕込みのものにほかなりません。
財界仕込みの国民分断の攻撃のおおもとに、すべてを国民個人の「自己責任」におしつける乱暴な論理の横行があることも重視すべきであります。二〇〇三年に日本経団連が発表した「活力と魅力溢れる日本をめざして」(奥田ビジョン)は、「これからの社会は、自己責任を理解できる、自立した個人でつくられていく」、「重要なことは、結果の平等を求めないことである」、「結果は、選択した本人が受け止める」ことだと断じ、国民がいかなる苦難にぶつかっても「自己責任」──自分が悪いからだ、甘んじて受け入れよという議論を展開しています。「『格差』はあたりまえ」、「『負け組』は本人の責任だ」、「権利など主張するな」というのであります。これは自らの悪政の責任を国民に転嫁し、国民をばらばらにする卑劣な攻撃であります。
決議案の討論をつうじて、少なからぬ党員が、「国民分断の攻撃に、自分も知らず知らずのうちにおちいっていることがあった。そのことに気づいてたたかう展望がみえた」と率直にのべていることは重要であります。この国民分断のくわだては、国民を知らず知らずのうちに罠(わな)に落とし、互いに攻撃しあう、寒々とした荒廃した社会にしてしまうところに特徴があります。ですから、この罠を見抜くならば、そのこと自身が、国民分断の卑劣な攻撃への怒りとなり、それを打ち破る大きな力となります。すでに決議案に励まされて、地方自治体での公務員削減の動きとたたかい、打ち破った経験も報告されていることはうれしいことであります。
日本の社会を、不当な攻撃にたいして強力な社会的反撃をもってこたえる社会へと前進させるためには、それを妨げる国民分断の罠を国民的規模で明らかにしていくことが、決定的に重要であります。
誰もが人間として尊重され、人間らしく生きることができる日本をめざして、社会的連帯で社会的反撃を──日本共産党はこの旗印を高くかかげて、国民のたたかいの先頭にたって奮闘するものであります。(拍手)
国民中心の新しい日本への条件をはらんだ歴史的転機
大会決議案が第一章のむすびで、日本の情勢の大局的特徴を、「国民中心の新しい日本への条件をはらんだ歴史的転機」と特徴づけたことは、全党討論のなかで「実感にぴったりくる」と共感と確信をもって受け止められました。
政治の表面だけをみますと、複雑な流れや逆流も目立ちますが、新しい綱領にそくして日本の情勢を根底からつかむならば、歴史への無反省、アメリカいいなり、大企業中心主義という異常な特質をもつ自民党政治が、国民との矛盾、世界の流れとの矛盾を深め、いよいよ立ち行かなくなった姿が、みえてくるではありませんか。
この現状を打開する道は、新しい綱領がしめす日本の民主的改革しかありません。みなさん、新しい綱領を指針に、国民とともにたたかい、ともに日本の前途を語りあい、新しい日本への道を開くために、力をつくそうではありませんか。(拍手)
決議案第二章(二一世紀の世界の構造変化と日本共産党の立場)について
つぎに、決議案第二章(二一世紀の世界の構造変化と日本共産党の立場)について報告します。
今日のアメリカをどうとらえるか──新しい綱領をふまえて
まず、今日のアメリカをどうとらえるかという問題であります。
新しい綱領は、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序か、アメリカが横暴をほしいままにする干渉と侵略、戦争と抑圧の国際秩序かの選択が、いま問われている」と、世界の秩序をめぐる二つの道の選択についてのべています。
決議案は、この規定をふまえて、今日のアメリカの動向に分析をくわえています。
一国覇権主義と、その孤立・破綻について
第一は、「先制攻撃戦略、国連を無視した単独行動主義」などの「きわめて侵略的な外交・軍事戦略」の「基本は変わらない」ということであります。
それは、アメリカがイラクでおこなっている行動そのものがしめしています。さらに中東の「民主化」という介入政策にあらわれています。
米国政府が国家レベルの軍事戦略の基本においている「国家安全保障戦略」(〇二年九月)、二〇〇三年に策定した「米軍再編」の基本指針、現在十年ぶりの改定の最終段階にある「統合核作戦ドクトリン」など、米国政府の公式文書は、つぎのような軍事戦略をとることを、公然とのべています。
──米国にとっての主要な脅威は、「破綻国家」「無法国家」である。「テロ」「大量破壊兵器」などの脅威を未然にふせぐために、必要ならば先制攻撃をおこなう。
──米国の軍事目的にとって必要な場合には、非核兵器国にたいする核兵器の一方的な使用もためらわない。
──世界のどこにでも迅速で効率的な軍事力の展開をおこない、同盟国との軍事一体化をはかるため、米軍の地球的規模での再編をおこなう。
決議案が指摘しているように、米国の先制攻撃戦略は、「きわめて危険な新しい段階」に足を踏み入れつつあります。このことを直視することがまず重要であります。
第二に、決議案は、「同時に、米国の一国覇権主義の道は、破綻と孤立を深めている」とのべ、それはイラク情勢の泥沼化に象徴的にしめされていると指摘しています。
ブッシュ大統領は、十二月十四日の演説で、米国がイラク戦争の開戦理由とした、イラクが戦争前に大量破壊兵器を保有しているという情報について、「多くが誤りだったことが判明した。大統領として、イラク攻撃を決定した責任は私にある」と言明しました。またイラク民間人の死者が三万人にのぼることも認めました。ブッシュ大統領は、「サダム・フセインを除去するという私の決定は正しかった」と、なお侵略戦争を正当化する立場に固執しています。しかし、大量破壊兵器問題で世界を欺いた責任について、歴史の審判が最終的にくだったことは、いまや明らかであります。
ブッシュ大統領の言明は、米国の言い分をうのみにして、大量破壊兵器の保有を断定し、イラク戦争を支持した、小泉首相の戦争正当化論も根底から崩すことになりました。首相は、こういう事態になっても、なお戦争支持は「合理的判断だった」と非合理的な居直りをつづけていますが、無法な戦争を支持して世界の平和秩序の破壊の共犯者となった責任が、きびしく問われています。(拍手)
国際問題を外交交渉によって解決することを模索する動き
第三に、決議案は、「軍事力一本やりでは対応できない状況に直面して、米国政府のなかに、国際問題を外交交渉によって解決することを模索する動きがおこっていることは注目される」とのべています。この動きは、決議案発表後のアメリカ政府の実際の行動をつうじて、具体的な姿をとってあらわれました。
大会決議案は、「中国との関係でも、米国政府内で、長期的視野にたって、中国との平和的共存をはかることを展望した外交戦略を模索する動きがおこっている」と指摘しましたが、十一月のAPEC首脳会議後におこなわれた米中首脳会談では、両国の「建設的協力関係」が確認されました。ブッシュ大統領は、以前、中国について、「戦略的ライバル」と呼んでいたこともありましたが、今回の首脳会談で「建設的協力関係」を全面的に推進することで一致し、米中関係は、重要な前進をみました。
APEC首脳会議の機会におこなわれたブッシュ大統領とASEAN七カ国首脳との会談、それに先だつ「ASEANと米国との協力強化に関する共同ビジョン声明」も重要であります。この「声明」は、「国連憲章の原則と目的ならびに普遍的に認められたその他の国際法の諸原則への支持」を再確認するとともに、TAC(東南アジア友好協力条約)について、「平和と安定の促進のための地域の国家間関係を統べる行動規範としての役割を果たしている」と評価し、「TACの精神と原則を尊重する」とうたっています。
これらは、米国が、東アジアの諸国にたいして、外交戦略ももって対応していることを示しています。
全党討論のなかで、「米国の軍事的覇権主義と外交戦略の関係をどうとらえるか」という質問がありました。もちろん、米国はこの地域にたいしても、軍事的関与の政策を放棄したわけではありません。そのことは、現にすすめられている「米軍再編」の動きをみても明らかであります。しかし、その米国も、軍事一本やりでは対応できない、外交戦略ももって複眼的な対応をしないと、東アジアの国々での米国の存在そのものが成り立たなくなる、こうした立場から、中国やASEAN諸国との外交関係を前進させる戦略をもってのぞんでいるのであります。
アメリカがこうした行動をとる根底には、国連憲章にもとづく平和秩序をめざす地球的規模での流れが広がり、とくに東アジアで平和の流れが力強く前進していること、それを支える世界の構造変化があります。
新しい綱領の帝国主義論のもつ先駆性を示す
大会決議案が、アメリカの動向にたいして、現実にそくしたリアルな分析をおこなった根本には、新しい綱領の帝国主義論の発展があります。新しい綱領は、植民地体制が地球的規模で崩壊した今日の時代では、すべての独占資本主義国を一律に「帝国主義」と規定することはできない、ある国を「帝国主義」と規定するかどうかは、「その国の政策と行動に、侵略性が体系的に現れているかどうか」を基準にするという立場をとっています。
綱領は、この見地でみて、現在アメリカがとっている世界政策は、まぎれもなく帝国主義であると規定しています。しかし、そのことは、アメリカの独占資本主義体制が将来にわたって帝国主義であると固定的に特徴づけているということではありません。また、現在の局面でも一国覇権主義が、いつでもどこでも、アメリカの対外政策の不動の特徴になるという機械的立場に立つものでもありません。こうした立場から、米国・ブッシュ政権の対中政策を注意深く分析し、大会決議案にそのことを明記したのであります。
この分析の正しさは、米国政府自身の行動によって、この短期間のなかでも証明されました。これは、新しい綱領が立っている帝国主義論の先駆性を示すものであります。
地域の平和共同体──「新自由主義」の押し付けは世界で破綻している
大会決議案は、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序」をめざす流れが、地球的規模でひきつづき豊かで多面的な広がりをみせながら前進していることを明らかにしています。
「平和秩序」「経済秩序」で、進歩の流れが力づよくおこっている
そのなかで「世界各地で、国際秩序の新たな担い手として、自主的な地域の平和共同体の動きが発展している」とのべ、「これらの地域共同体は、共通して、国連憲章にもとづく平和秩序、紛争の平和解決、各国の経済主権の尊重と民主的な国際経済秩序を主張している」とのべていることに注目していただきたいと思います。
世界各地で広がりつつある地域の平和共同体の特徴は、それがアメリカの軍事的覇権主義に反対して「国連憲章にもとづく平和秩序」をもとめるとともに、アメリカによる経済的覇権主義を拒否して「各国の経済主権の尊重と民主的な国際経済秩序」をもとめていること──「平和秩序」と「経済秩序」の両面で、進歩の流れが力強くわきおこっているところにあります。
そのことを典型的な形でしめしているのが、東アジアでの平和共同体の動きと、南米での共同体の動きであります。
東アジアの平和共同体──九七、九八年の通貨・金融危機の教訓
まず、東アジアの平和共同体の動きについてのべます。
十二月にマレーシアで開催されたASEAN首脳会議、ASEAN+日中韓の首脳会議、東アジア首脳会議では、ASEANを先導役としながら、「地域の共同体の形成」の方向が合意されました。
ASEANが、紛争の平和解決、武力行使の禁止などをうたって一九七六年にむすんだTAC(東南アジア友好協力条約)は、中国、韓国、日本、インド、パキスタン、ロシア、モンゴル、オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニアの参加もえて、世界人口の53%が参加し、東アジアの平和共同体を展望するとりくみとなって発展しています。これらは決議案がのべているように、「胸おどる情勢の変化」であります。
東南アジアを中心に広がっている平和の激動をうみだした根底には、米国によるベトナム侵略戦争によって、東南アジア諸国が対立しあい、たたかいあったという痛苦の経験があります。この経験から生まれたのが、各国の独立・主権・平等を尊重しあう、戦争のない東アジアへの願いであり、それが条約の形で実ったのがTACでありました。
この動きが、地域の共同体づくりに前進する重大な転機となったのが、一九九七年におこったアジア通貨・金融危機でした。この危機にさいして、アメリカ主導でIMF(国際通貨基金)が経済介入をおこない、緊急融資と引き換えに、いっそうの規制緩和、民営化、資本の自由化、福祉予算の削減などの「新自由主義」の政策をおしつけました。IMF路線を受け入れた国々は、経済と国民生活の甚大な破壊にみまわれ、ほどなくその誤りを確認することになりました。他方、IMF路線を拒否し、自主的な経済再建の道を選んだマレーシアは、対照的に成功をおさめました。この教訓は、「アジアによるアジア」──東アジア共同体への動きを大きく促すものとなりました。この一連の経過は、たいへん教訓的であります。
ラテンアメリカの民主的変革──IMF路線の大破綻が重大な契機
いま一つ、私たちが大きな注目と期待をよせているのは、ラテンアメリカでおこっている巨大な社会進歩の流れであります。ベネズエラ(九八年)からはじまった民主的変革の巨大な波は、ブラジル(〇二年)、アルゼンチン(〇三年)、パラグアイ(〇三年)、ウルグアイ(〇四年)、ボリビア(〇五年)と南米大陸全体に広がっています。それぞれの政治変革が、選挙で多数をえることによって前進をかちとっていることは、きわめて重要であります。二〇〇四年には南米十二カ国の首脳会議で、国家主権の平等、紛争の平和的解決、民主的経済秩序などを掲げた南米諸国共同体の設立が宣言されました。
この巨大な変革の重大な契機となったのも、アメリカ主導のIMF路線のおしつけの大破産にほかなりません。一九八二年にラテンアメリカ諸国は債務支払い不能の状態──累積債務危機におちいりました。このとき、アメリカが主導権をにぎるIMFや世界銀行などは、財政再建への支援の条件として、規制緩和、民営化、資本の自由化、福祉予算の削減などの「新自由主義」の政策をおしつけました。おしつける中身は、いつでも、どこでも、同じです。
その結果、各国の経済成長は停滞し、貧困人口は増え、所得格差は拡大し、国内の産業を破壊・後退させる事態がひきおこされました。一方で、膨大な対外債務は、結局、未解決のまま残されました。この地域の人々は、一九八〇年代を「失われた十年」、一九九〇年代を「絶望の十年」と呼んでいるそうです。最後までこの路線に忠実にしたがったのがアルゼンチンの前政権でしたが、この国は二〇〇一年に債務の支払い不能という大破局におちいりました。このときにアメリカ政府がこれを見捨てたことが、アルゼンチンをはじめ南米諸国全体の怒りを加速させました。そして、米国による無法なイラク侵略戦争にたいして南米諸国が一致して反対したことは、平和と進歩の流れをさらに強める結果となりました。
これらの矛盾が沸騰点に達するなかで、一連の国々で民主的変革の巨大な波がおこっています。それは米国支配からの独立と、「新自由主義」からの決別をかかげ、自主的で民主的な経済政策への大転換をめざすことで共通しています。長期にわたってアメリカの「裏庭」と呼ばれてきたこの地域でおこっている、独立、平和、社会進歩の波は、二一世紀の世界の前途にかかわる大きな意義をもつものであります。
こういう世界の流れにてらしてみると、わが国の政治はどうでしょうか。自民党政治は、アメリカいいなりに、軍事的覇権主義に追随し、経済的覇権主義──「新自由主義」の経済路線のおしつけを受け入れる道に固執しています。しかし、この道にはけっして未来はありません。そのことは、東アジアでも、ラテンアメリカでも、世界の動きによってすでに証明されていることを、私は強調したいと思うのであります。(拍手)
日本共産党の野党外交──二つの問題について
日本共産党の野党外交について、決議案発表後の二つの重要な動きにかかわって、報告しておきたいと思います。
東アジア共同体と日本外交──決議案の四つの提言がいよいよ重要
一つは、東アジア共同体と日本外交についてであります。
東アジアで平和の共同体をめざす動きが大きくすすむなかで、日本政府は、この動きのなかで何の積極的役割も果たせず孤立を深めています。東アジア共同体とのかかわりでも、日本外交のあり方が、根本から問われています。
大会決議案は、「平和の共同体をめざす動きが、大きく広がっている東アジアのなかで、二一世紀の日本がすすむべき道は、東アジアの一員として、各国の政治的・経済的主権を尊重し、自主的な地域の共同体の発展に積極的に貢献する方向にこそある」とのべて、日本外交の四つの転換の提言をおこなっていますが、その意義はいよいよ切実なものとなっています。
第一は、「過去の侵略戦争と植民地支配を正当化する逆流を克服すること」であります。小泉首相が、靖国神社参拝に固執するなど侵略戦争を正当化する姿勢を続けていることは、日本と中国、韓国との関係悪化をもたらし、そのことが東南アジア諸国からも強い懸念と批判を招き、東アジアの共同体をきずく重大な障害となっています。これをあらためることは急務であります。
第二は、「アメリカ一辺倒をあらため、アジア諸国との平和の関係を探求する大戦略をもつこと」であります。
もともと東アジア共同体の動きは、通貨危機などの教訓をふまえ、アメリカと対等・平等の関係をもつ自主的な経済圏をめざす動きであります。にもかかわらず、日本政府は、これへの米国の参加を強くもとめてきました。米国政府自身が「参加を考えない」と言明した後も、米国の参加をもとめつづけ、「アメリカ以上にアメリカに忠実」と批判されているのが日本政府であります。「日米同盟」最優先の立場をアジア諸国におしつける態度をあらためるべきであります。
第三は、「軍事偏重をやめ、外交による問題解決に徹する姿勢を確立すること」であります。
戦後、日本が憲法九条をもったことは、日本が、かつて侵略戦争と植民地支配によって大きな被害を与えてきた東アジアの国々と、経済関係を発展させる大きなよりどころになってきました。憲法九条をかえ、海外派兵国家への動きを強めることは、日本への信頼を損ない、東アジアでの平和の共同体への動きに、重大な逆流をもちこむことになります。九条を生かした平和のアジア戦略を確立することこそ、いま、強くもとめられています。
ある特定の国を名指しして「軍事的脅威」と決めつけ、海外派兵国家づくりのテコにしようという動きが、政府の一部閣僚や一部野党党首から生まれています。しかし、これは東アジアの平和にとっても、日本の安全保障にとってもきわめて有害な、軍事偏重主義の最悪のあらわれといわなければなりません(拍手)。今日の世界では、近隣諸国との紛争はあくまで平和的・外交的手段で解決し、平和友好の外交関係をいかにしてきずくかを最優先に追求することが、安全保障論の大道となっており、この立場への転換が強くもとめられます。
第四は、「いかなる国であれ覇権をみとめず国連憲章にもとづく平和秩序を守る」ということであります。
日本政府は、「国連憲章にもとづく平和秩序」を徹底的に追求することを根本精神とするTAC(東南アジア友好協力条約)に正式に加入しました。しかし、その精神を実行しているとはとてもいえません。TAC加入国として、相手が誰であれ覇権をみとめず、世界の平和ルールを守る立場に転換するべきであります。
この四つの提言は、東アジアの平和の共同体をつくろうと真剣に考えるなら、すぐにでも実行すべき課題であります。昨年十二月、タイでおこなわれた「アジア国会平和連合」総会に参加したわが党代表が、大会決議案が提起した四つの提言をのべたところ、参加者から「この提起は、その気さえあれば、現政権でもやれる提起だ」「東アジア全体のコンセンサスになる提起だ」と歓迎されたということです。
日本共産党は、東南アジアに広がっている平和の激動が、北東アジアもふくめた東アジア全体のものとなり、紛争や戦争の心配のない平和の共同体が形成されるよう、ひきつづき力をつくす決意であります。(拍手)
中国共産党との理論交流と、新しい綱領の生命力
昨年、十二月におこなわれた日本共産党と中国共産党との理論交流は、中国共産党からの科学的社会主義の理論と世界の現状認識に関する広範な問題提起にこたえて、理論問題を集中して議論し、重要な成果をおさめました。
中国社会の前途は、日本の運動にとっても、世界の動向にとっても、あらゆる意味で大きな影響力をもつものです。中国共産党が、これまでの延長線上にとどまらない、より充実した発展路線とその理論を探求しようという構想をもち、世界の社会主義的な知恵のすべてを吸収しようという意気込みでとりくみをはじめていることは、注目されます。
今回の理論交流は、発達した資本主義国で社会主義・共産主義への発展を将来の課題としながらその理論的探求を発展させている党と、社会主義をめざす道をすすむ実践のなかでその理論を探求している党との共同作業のはじまりとして、大きな意義をもつものであります。
わが党の新しい綱領が、中国側の提起した広範な問題のすべてにわたってこたえる立場と力をもち、中国の理論代表団から、全面的に研究する必要のある理論内容として受け止められたことは、わが党の綱領路線の現代世界における生命力をしめすものであります。
ドイツの総選挙で大きな躍進をとげたドイツ左翼党の幹部の一人が、同国の理論雑誌十二月号に書いた論文で、日本共産党の綱領を、「高度に発達した資本主義国における社会主義の道の真剣な、決して物まねではない探求」にとっての「豊かな宝」だとして、詳しく紹介したことも、党綱領への国際的反響として私たちを励ますものでありました。
わが党は、国際的な理論交流を、野党外交の一つの重要な分野と位置づけ、今後とも発展させるために努力をはらうものです。(拍手)
決議案第三章(国民要求にこたえ、党を語り、国政選挙と地方選挙での本格的前進を)について
つぎに、第三章(国民要求にこたえ、党を語り、国政選挙と地方選挙での本格的前進を)について報告します。
決議案全体が、教訓をふまえた、選挙方針ともなっている
決議案第三章は、国政選挙と地方選挙での本格的前進をめざす方針を提起しています。
ここで注目してほしいのは、今回の大会決議案では、この章のみならず、決議案の全体が、この間の三回の国政選挙の教訓をふまえて、きたるべき全国選挙をたたかう方針を形づくっていることです。
昨年の総選挙を総括した十月の第四回中央委員会総会では、「わが党が『善戦・健闘』にとどまらず、本格的な前進をかちとるためには、日常的な党の活動の水準、党の実力の水準を、抜本的に高めることがもとめられる」として、「二つの大きな問題」を自己分析的に明らかにしました。この大会決議案は、ここで提起した「二つの大きな問題」への全面的回答ともなっています。
第一に、四中総決定では、「新しい綱領と日本改革の方針を語るとりくみを、日常の活動として抜本的に強化する」ことを提起しましたが、大会決議案は、今日の情勢とかみあって党をどう語るかの生きた内容を明らかにしています。第一章での自民党政治の三つの異常をただす日本改革の方針、第二章での世界平和と社会進歩に働きかける日本共産党の立場、第三章での政党としての大道を歩む日本共産党の五つの特質の解明などであります。
さらに、決議案の一つひとつの項のなかに、選挙戦での論戦の教訓をふまえた内容が含まれていることにも注目して読みとってほしいと思います。
たとえば、四中総決定では、「小さな政府」論、「官から民へ」論、「公務員の既得権益」論など、「逆立ちした『改革』論の一つひとつを、根底から打ち破ることの重要性を、私たちは日々痛感しました」と、総選挙をふりかえってのべています。大会決議案では、選挙戦のこの教訓をふまえて「構造改革」の誤った考え方の一つひとつを「根底から打ち破る」ことの重要性を強調し、「社会的連帯」をおしだした反撃という論戦の基本的立場を明らかにしています。
第二に、四中総決定では、「国民と結びついた強く大きな党をつくる──党の実力をつけること、その緊急性、重大性を、痛切に実感した選挙だった」とのべ、量質ともの強大な党づくりを提起しました。これを受けて、大会決議案の第五章は、党建設をいかにして本格的な前進の軌道にのせるかを、この間の教訓をふまえて明らかにしています。
とくに、私たちは四中総での総括のさい、「選挙戦への活動参加は、多くの党組織で六割から七割台にとどまった」ことを指摘し、すべての党員の力を結集する活力ある党づくりという課題を重視して提起しました。決議案第五章で強調されている「文字どおりすべての支部が、『政策と計画』をもった『支部が主役』の自主的、自発的活動にとりくむ党となることを、党づくりの要にしっかりとすえる」という強化方向は、活力ある党づくりへの大道をしめすものであります。
このように大会決議案は、その全体が、この間の国政選挙の経験と教訓をふまえて、つぎの選挙に勝利するための方針書ともなっています。
大会でこの決議案をしっかりと仕上げ、きたるべき選挙にむけて縦横に活用して、二〇〇七年のいっせい地方選挙と参議院選挙、きたるべき総選挙で、新たな党の前進を必ず実現するために奮闘することを、心から訴えるものであります。(拍手)
政党としての大道を歩む日本共産党──この間の情勢の進展をふまえて
決議案第九節では、自民・民主が同じ流れのなかで「改革競争」を競い合うという、今日の政党状況とのかかわりで、日本共産党の姿を五つの特質で明らかにしました。この五つの特質は、どんな政治的立場をとる党であっても、国民にたいしてまじめに責任をおう政党ならば、当然とるべき政党のあり方の根本をしめしたものであります。この根本において、政党としての大道を歩んでいるのが日本共産党であることを解明したことに、全党討論でも大きな共感と確信の声がよせられました。
五つの特質は、決議案発表後のわずかな期間でも、はっきりとしめされました。
党の綱領を党活動の指針として大切にしている党
第一は、党の綱領を党活動の指針として大切にしている党が、日本共産党であるということであります。
他党と比較してみますと、わが党のこの特質は、いよいよ鮮明になります。
自民党は、昨年十一月二十二日の党大会で「新憲法草案」とともに「新綱領」なる文書をきめました。しかし、この文書には、「どういう日本をつくるのか」という展望は何も書かれていません。五十年前に自民党が結党したさいに決めた「綱領」「党の政綱」では、「自主独立の完成」「福祉国家の完成」「駐留外国軍隊の撤退」など、保守党なりの理念がのべられていました。しかし、「新綱領」では、「自主独立」「福祉」「駐留軍撤退」の文字は三つとも消え去ってしまっています。「憲法を改定する」ということが冒頭に掲げられていますが、この文書のどこをどう読んでも「どういう日本をつくるのか」の具体的ビジョンは何も読みとることができません。政権党が、国民に希望や展望を語れなくなったら、退場を願うしかないではありませんか。(拍手)
民主党も、十二月十六、十七日に党大会を開きましたが、その場で前原代表自身が「自民党との対立軸、基本政策が固まっていないことが党のウイークポイント」とのべるなど、最大の問題となったのは「ますます自民党に似てくる」ということでした。この党の「基本理念」は、自由党と合流する以前の一九九八年につくられたものがそのままにされていますが、そのことは党大会で問題にすらなりませんでした。綱領的文書をもてず、そのことが問題にもならないところに、この党の致命的弱点がしめされています。
公明党は、「綱領」と銘打った文書を持っています。最大の問題は、この党の行動の基準が「綱領」におかれていないというところにあります。公明党は、昨年十二月、児童手当の拡大と引き換えに、自民党がもとめる防衛庁の「省」への格上げと教育基本法改定に応じることを了承しました。マスメディアも「余りに筋違いの取引」ときびしく批判しました。この党の行動の基準は「綱領」でなくて、党略なのであります。
これらの諸党との対比でも、日本共産党が、自民党政治の古い枠組みを根本から改革する展望、世界に働きかける展望を明らかにした綱領をもち、職場・地域・学園での活動から、国際的な理論交流など外交活動まで、あらゆる党活動の指針として党の綱領を重視していることの意義は、きわめて大きなものがあると考えるものであります。(拍手)
支部を基礎に自前の組織をもち、草の根で国民とむすびつく党
第二は、支部を基礎に自前の組織をもち、草の根で国民とむすびつく党という特質であります。
決議案では、日本共産党の地方議員は、議席占有率でみると二〇〇〇年の7・11%から7・18%へと比重を高めていると指摘していますが、その後の全党の奮闘で、十二月末の議席占有率は7・29%とさらに前進し、史上最高となりました(拍手)。決議案を“上方修正”できたことを喜びたいと思います。(拍手)
わが党の草の根での結びつきは、昨年の特別国会で日本共産党が紹介した請願署名数にもあらわれました。自民党百八十八万、民主党三十六万にたいして、日本共産党は五百十七万と、全体の68・6%をしめ、断然第一党となりました。計算してみますと、共産党議員一人で、自民党議員の六十三人分、民主党議員の百五十五人分の署名を紹介していることになります。草の根の運動との結びつきという点では、まさに“百人力”の働きをしているのが、日本共産党国会議員団であります。(拍手)
国民に依拠した財政活動をすすめる党
第三は、国民に依拠した財政活動をすすめる党という特質であります。
決議案は、わが党の「国民に依拠した財政活動は、財界の横暴勝手と正面からたちむかう力の源泉となっている」とのべています。
昨年十一月、自民・民主の両党は、政策立案のシンクタンク(研究機関)を立ち上げました。問題は、どちらもその資金が財界頼みだということにあります。自民党の資金計画案では、シンクタンクの収入の六割を財界・企業に依存する計画であり、民主党も「シンクタンクへの予算支出については、企業・団体献金等を優先充当することとする」としています。これではせっかくシンクタンクをつくっても、財界の要求を具体化する出張所のようなものになるだけであります。
全党討論のなかで、政党助成金制度について、「憲法違反の制度であり日本共産党が受け取りを拒否しているのは理解できるが、わが党が受け取らない分を他党が山分けしているのは許せない。何とかならないものか」という意見もよせられました。その気持ちはよく理解できます。たしかに受け取らない政党の分まで山分けするというのは、この制度の許しがたい仕掛けであります。しかし、この問題を解決するうえでも、中途半端な対応ではかえって解決を遠のかせることになります。制度そのものを認めず、廃止するということが大道であり、近道であります。日本共産党は、受け取り拒否の態度をつらぬくとともに、この違憲・腐敗の制度の廃止をめざして、国民的な世論と運動をおこしていくために、力をつくすものです。(拍手)
戦前・戦後の一貫した歴史をもつ党
第四は、戦前・戦後の一貫した歴史をもつ党という特質です。
決議案は、「自民党や民主党のなかには、“靖国史観”を公然と語る政治家がいまなお一つの流れをなしている」と指摘しています。
この間、麻生外相が、靖国神社の軍事博物館「遊就館」の展示──侵略戦争を礼賛する展示を肯定する発言をして、国際的にもきびしく批判されました。民主党でも、野田国対委員長が、「『A級戦犯』と呼ばれた人たちは戦争犯罪人ではない」とする質問主意書を政府に提出して、これも国際問題になりました。
戦犯政治の流れをかかえているという点でも、自民・民主は共通しています。侵略戦争と植民地支配に不屈に反対をつらぬいた戦前史を誇りをもって語れるのは、日本共産党だけであります。(拍手)
自主独立の立場で国際連帯・交流をすすめる党
第五は、自主独立の立場で国際連帯・交流をすすめる党という特質です。
大会決議案は、日本共産党が、この四十数年来、どんな外国の干渉・横暴にも屈しない「自主独立」の立場をつらぬいてきたこと、この立場は、わが党が、平和と社会進歩のための国際連帯を発展させる土台となっていることを強調しています。そして他党の外交をみますと、自主的立場の弱さが共通していること、とくにアメリカとの関係での自主性の欠如が特徴であると指摘しています。
そのことは、この間の自民・民主両党による米国への忠誠競争でもしめされました。一方の小泉首相が「日米関係さえ良ければ」式の異常な追従外交をおこなえば、他方の前原代表は、「国際的な認知を高める」といって訪米し、憲法改定をすすめ、「米軍再編」を日本国民におしつけることをアメリカに約束するという屈従外交を展開しました。
どの問題でも政党としての大道を歩む日本共産党の値打ちは、今日の政党状況のなかできわだっています。それは情勢の進展のなかでも、日々浮き彫りになっています。その姿に自信と誇りをもって、多くの国民にそれを語り広げようではありませんか。(拍手)
選挙をたたかう方針について
つぎに、選挙をたたかう方針について報告します。
二〇〇七年のいっせい地方選挙と参院選、きたるべき総選挙にむけた、選挙方針については、決議案が全面的に明らかにしています。報告では、それを前提にして、いくつかの補強点、全党討論をふまえて解明すべき点についてのべます。
選挙戦にむけた政治的訴え──「党を語る集い」と対話活動を
まず、選挙戦にむけた政治的訴えについてであります。
決議案では、選挙戦にむけた政治的訴えの基本として、「『たしかな野党』の責任をはたし、日本改革の方針を広く国民に語る活動を大いに強める」とのべています。
わが党が、「たしかな野党」としてとりくむべき直面する課題──憲法改悪を許さないたたかい、米軍再編に反対するたたかい、庶民大増税・社会保障改悪に反対するたたかい、人間らしい雇用をもとめるたたかいなどについては、すでにのべました。
これらの活動とともに、「生きた言葉・生の声」で、新しい綱領と日本改革の方針を大いに語る運動にとりくみたいと思います。
すでに決議案の提起を受けて、各地で「党を語る集い」のとりくみがはじまり、党の姿を身近に知ってもらうとともに、新しい党員をむかえる大きな推進力ともなっています。「大運動」では「党を語る集い」が、掌握できた範囲で全国百五十七カ所一万三千人が参加してとりくまれ、一千二百人をこえる人々が入党しました。
「党を語る集い」の運動を、支部を基礎に縦横に発展させるとともに、有権者との日常的対話のなかで、新しい綱領と日本改革の方針を大いに語るとりくみを強めます。そのさい反共攻撃への断固とした反撃とともに、有権者のなかにあるわが党への疑問とかみあって党の姿を語ることが大切であります。「生きた言葉・生の声」で党を語る運動をすべての有権者を対象に、壮大な規模で発展させることをつよく訴えるものです。(拍手)
三つの全国的選挙戦の政治目標と基本方針について
つぎに、三つの全国的選挙戦の政治目標と基本方針についてのべます。
二〇〇七年の二つの全国的選挙戦──いっせい地方選挙と参議院選挙、きたるべき総選挙での政治目標と基本方針は、決議案でしめされています。討論での意見もふまえ若干の補強もふくめてのべます。
参議院選挙──比例代表選挙の訴え方について
参議院選挙は、国政選挙で本格的に前進に転じる選挙と位置づけ、比例代表では五議席を「絶対確保議席」とし、そのために六百五十万以上(得票率10%以上)の得票を獲得することを目標にたたかいます。選挙区は現職区の東京での議席の絶対確保と前回選挙で議席を失った六府県での議席奪還をとくに重視してたたかいます。
決議案で、比例代表の訴え方について、これまでの二回の非拘束名簿式の選挙戦の教訓をふまえて、「『政党名での投票』を訴えることを基本にする」との方針を提起していることに、「この提起の意味は何か」との質問が出されました。
前回の参院選では、比例代表選挙にさいして、「政党名または候補者名での投票を訴える」という方針でのぞみました。しかし、政党選択選挙という様相が強まるもとで、有権者への訴えが広くすすめばすすむほど「政党名の方が訴えやすい」「どちらでもよいという方針はやりにくい」という声が多く出されました。実際、この参議院選挙で、わが党が獲得した四百三十六万の比例得票のうち、候補者名での得票は五十八万で13・3%にすぎず、圧倒的多数は政党名でありました。こんごますます政党選択選挙の流れが強まることが予想されるなかで、これまでの教訓にたち、次回は「政党名での投票」を基本とするという方針を提起したわけであります。そのさい「絶対確保議席」をになう候補者の当選を保障するための必要な手立てという問題がでてきます。これは、適切な時期に具体化するようにしたいと考えます。
いっせい地方選挙──県政問題の日常的とりくみ
地方選挙では、当面する中間地方選挙で確実に勝利をつみかさねながら、二〇〇七年いっせい地方選挙では、「議席占有率」「議案提案権」「空白克服」という三つの目標で必ず前進をかちとるために奮闘します。
そのさい、決議案がのべているように、「とくに第四党にとどまっている道府県議、政令市議選において、現有議席の絶対確保と前進、県議空白六県の空白克服を重視する」ことが大切になってきます。
そのためには、県政問題にたいするとりくみを日常的に強化することが大切であります。市町村は基礎的自治体であり、身近な住民要求との関係が見えやすく、日常的にも市町村への要求運動は多面的におこってきます。一方、国政はどうかというと、国政も、平和と暮らしにとって切実な問題が日常的に生起し、国民の関心も高いものがあります。そのなかにあって県政は、そのあり方が住民から見えにくくなりがちであります。
しかし都道府県は、各地方ですべての市町村をカバーする広域自治体としての役割をもっており、財政規模も大きく、市町村への影響力も大きなものがあります。たとえば介護保険、国保などの事業主体は市町村ですが、都道府県がどういう姿勢をとるかで、住民サービスの水準は大きく左右されます。少人数学級問題など、都道府県が直接責任を負っている重要な分野もあります。巨大開発の浪費の問題では、国とともに都道府県が重大な役割を果たしています。ですから、日常的に、都道府県政の実態、そこで果たしている党の役割を明らかにし、市町村とともに都道府県にたいして住民要求にもとづく運動を広げていくことが重要であります。
総選挙──小選挙区のたたかいと「供託金支援基金」について
きたるべき総選挙にむけて、「全国十一のすべての比例ブロックで議席を獲得し、増やす」ことを、政治目標の基本として、日常的なとりくみを開始します。
総選挙のたたかいでは、比例代表での前進を全党の総力を結集してかちとることを、たたかいの軸としてしっかりとにぎりながら、決議案がのべているように、「小選挙区でたたかう意義と展望」を三つの角度からとらえた積極的なたたかいが必要であります。
全党討論のなかで、一部から、「『すべての小選挙区での候補者擁立をめざす』という方針を見直すべきではないか」という声もありました。しかし、昨年の総選挙の経験でも、九割をこえる小選挙区での果敢な候補者擁立と、候補者を先頭にした奮闘があったからこそ、比例での四百九十二万票という得票が得られたことは明らかであります。また、わが党は、二一世紀の早い時期に民主連合政府を実現することを目標とする党として、小選挙区でも勝てる党への成長をめざしています。綱領路線の実現という高い志にたって、小選挙区でのたたかいを積極的に位置づけ、奮闘することが重要であります。
党大会に提案した「衆議院小選挙区選挙供託金支援基金」は、このたたかいに全党が「全国は一つ」の見地で、協力しあってとりくむ財政的保障として提案したものです。小選挙区でのたたかいを展望した場合、情勢の激動のもとで議席を争える状況が生まれる可能性もありえますが、全体としていえば、わが党が小選挙区でのたたかいを重視したら、二、三回の選挙戦で議席を展望できるところまでいくかといえば、ことはそんなに容易なものではありません。そうした現状をリアルに見つつ、小選挙区でのたたかいを積極的に位置づけ、着実な前進をはかるという立場が大切です。「供託金支援基金」の提案は、そのための財政的保障としておこなっているものであります。党員のみなさんの賛同と協力を心からお願いするものです。(拍手)
統一戦線の展望について
つぎに、統一戦線の展望についてのべます。
全党討論のなかで、「他党派との共同をどう考えるのか」という質問が出されました。
新しい綱領に明記しているように、わが党は単独政権ではなく、統一戦線の政府・民主連合政府をめざしています。
わが党は、どんな課題でも、国民の利益にかなった一致点があるなら、他党との協力の門戸を開き、それを探求するという立場をつらぬいています。とくに憲法問題では、憲法改悪に反対し、その平和原則にそむくくわだてを許さないという一点での広い国民的共同をよびかけています。しかし、現在の日本の政党には、日本共産党との政党間の正式の共闘をためらう傾向が、憲法問題でも、根強い状況があります。
国政選挙での共闘は、国政の基本問題での政策的一致と、先方に共闘をおこなう意志が必要であり、その条件がある相手は、全国政党としては、現在は存在していません。
しかし、わが党は、現在の政党配置、政党状況を、固定的なものとは考えていません。政治の激動の時期には、国民の利益と要求を一定の範囲で反映し、わが党との協力の意志をもつ、新しい政治党派が形成されることが予想されます。そうした新しい情勢をつくるうえでも、現在の統一戦線にむけた努力方向としては、つぎの二点が重要であります。
一つは、日本共産党と無党派との共同であります。その運動体としては、全国革新懇の運動が重要です。この十年間に草の根での革新懇が倍加し、地域、職場、青年で合計七百五十八に達していますが、この運動の発展にさらに力を入れたいと思います。
地方政治では、日本共産党と無党派の共同できずかれている革新・民主の自治体の流れが重要であります。わが党が与党の自治体は、二十一市・四十九町村におよび、そのうちわが党が単独与党の自治体は四市・二十一町村、さらにそのうち三市・五町では日本共産党員が首長をつとめています。この間、秋田県・湯沢市、長野県・木曽町では、合併された新しい自治体で、保守を含む多くの無党派の方々にささえられて、現職党員首長が堂々の再選をはたしました。(拍手)
いま一つは、日本共産党が国政選挙で前進して、政治的比重を高めることです。かつて一九六〇年代から七〇年代前半にかけての国政選挙で、党が躍進をとげたことが、一九七〇年代に当時の社会党との間での統一戦線の合意につながりました。この流れは一九八〇年の「社公合意」によって断ち切られましたが、今日の情勢のもとでわが党が国政選挙で本格的な前進をかちとることは、政党関係の前向きの変化をつくる条件となるものです。
こうした展望とのかかわりでも、当面する全国選挙で、党の新たな本格的な前進の流れをつくりだすために全力をあげようではありませんか。(拍手)
決議案第四章・第五章(国民運動、党建設)について
つぎに、決議案第四章・第五章(国民運動、党建設)について報告します。
決議案第四章は国民運動の発展方向、第五章は党建設の方針をのべています。これらの章は、今後の実践によって豊かにしてゆくべき部分であります。
報告では、党建設の問題を中心に、全党の討論と実践をふまえて、解明がもとめられる点を重点的にのべます。第四章の労働組合運動の方針について、大きな積極的反応がよせられましたが、これは党の職場支部のとりくみとも深い関係があるので、報告では一体的なとりくみとしてのべます。
党建設の到達点と、当面する目標について
まず、党建設の到達点と、当面する目標についてであります。
党大会にむけて、全党は、昨年四月の三中総決定がよびかけた「党勢拡大の大運動」にとりくんできました。総選挙後の奮闘によって、十一月、十二月と連続して、全党的に、党員も読者も前進をかちとって、この大会を迎えることができました。(拍手)
党員拡大では、愛知県・一宮尾北地区委員会が、第二十二回党大会後の五年間で八百二十五人の新入党員を迎え、みずからきめた「五〇万の党」に見合う党員拡大目標を達成したことはすばらしい壮挙であります。(拍手)
「大運動」の党員拡大のとりくみでは、徳島県と五地区が目標をやりとげ、四十道府県が「大運動」をとおして党員現勢を前進させ、全党的に九千六百五十五人の新しい党員を迎えました。全党的には前大会時をうわまわり、党員数は四十万四千二百九十九人となっています。新しく入党した同志のみなさんに心からの歓迎の言葉を、この大会の名において送るものです。(拍手)
読者拡大では、香川、奈良の二県と五十二の地区が、前大会現勢をこえて、この大会を迎えました。「大運動」をつうじて、日刊紙、日曜版とも、もしくはそのいずれかで、香川、奈良、群馬、石川、愛媛、福岡、福井の七県と、百一の地区が前進しています。しかし、全党的には「大運動」の出発点をこえることができていません。全党的な現勢は、日刊紙、日曜版の読者をあわせて百六十四万人となっています。
「大運動」のとりくみのなかで、全国の奮闘によって、支部、地区、県段階に、豊かな教訓にみちた先駆的経験が生まれています。しかし、その流れを全党の大勢にして、党勢を本格的な安定的前進の軌道にのせることには、成功しているとはまだいえません。
今年、二〇〇六年は、全国的な政治戦が予定されておらず、「党の実力をつける仕事に、全党が本腰を入れ、力を集中してとりくむ条件のある年」となります。この年を、党建設の前進の大きな波を全党的におこす年とするために、全党の英知と力を結集したとりくみがもとめられます。
この大会期の党勢拡大の目標は、いっせい地方選挙がおこなわれる二〇〇七年四月までに、「五〇万の党員」「二〇〇三年総選挙時比三割増の日刊紙と日曜版の読者」を達成するというこれまでの目標を堅持して、その実現にいどむことにしたいと思います。
党建設を本格的前進の軌道に──綱領学習、「政策と計画」について
大会決議案第十六節は、「どのようにして党建設を本格的前進の軌道にのせるか」について、党の指導と活動の弱点にも大胆に目をむけて、打開方向を提起しています。決議案を補足する形でいくつかの点をのべます。
すべての党員が綱領学習を──不屈性、先見性の土台
まず決議案が、党員の学習を三つの分野──綱領と歴史の学習、科学的社会主義の理論学習、政策と方針の学習でつよめること、とりわけ新しい綱領を学ぶことを、「党づくりの第一義的優先課題」と位置づけていることに注目していただきたいと思います。
国民運動にせよ、選挙戦にせよ、党建設にせよ、どんな党活動であっても、その抜本的前進をかちとろうとするなら、どれだけの党員が自主的・自発的にその活動に参加するかが、最大の要となります。そして、党員が自主的・自発的エネルギーを発揮して党活動に参加する知的・理論的源泉となるのが、党綱領であります。
この点で、新しい綱領を決定してから二年たち、綱領学習のさまざまな努力がはらわれたものの、綱領を読了した党員が34・2%にとどまっていることは、わが党の重大な弱点ととらえなければなりません。
決議案では、「生きた言葉・生の声」で党を語る運動をよびかけていますが、この運動にすべての党員が参加していくためには、綱領学習は不可欠であります。
政治の表面だけみれば、複雑な逆流もおこれば、困難な事態もおこります。しかし綱領の立場で、日本の情勢を根底からつかみ、世界の流れの中でつかむならば、揺るがない未来への展望と確信をえることができます。
わが党は、第二十二回党大会の規約改定のさいに、「前衛政党」の規定をはずしましたが、それはこの言葉が、無用な誤解をまねくからであって、この言葉によって表現してきた、どんな攻撃や迫害や困難にも負けない不屈性、科学の立場にたって当面のことだけでなく先々のことまで見通す先見性──不屈性と先見性という精神は、今後もひきつぐことを確認し、それは改定された規約にも明記されています。綱領学習は、党員が、不屈性と先見性を発揮して活動する最大の土台となるものであります。
新しい綱領と、大会決議を、文字どおりすべての党員に届けきり、文字どおりすべての党員が学習することを、この大会期の「党づくりの第一義的優先課題」としてとりくむことを、つよくよびかけるものです。(拍手)
「政策と計画」をもった「支部が主役」の党づくりをどうすすめるか
決議案が、党建設を本格的な前進の軌道にのせるうえで、「大胆な活動の強化がもとめられている五つの問題」を提起し、その一番目に、「文字どおりすべての支部が『政策と計画』をもった『支部が主役』の自主的、自発的活動にとりくむ党になることを、党づくりの要にしっかりとすえる」ことを打ち出したことは、全党討論のなかで積極的に歓迎されています。すでに大会にむけた運動のなかでもこの方針を具体化し、新たな前進をつくりだしている経験も全国各地に生まれています。
この方針は、この十年あまりの党建設のとりくみを総括し、一時は九割近い支部が「政策と計画」をもった活動をしていたのに、それが五割まで後退していることにみられるように、とりくみの弱まりと中断がみられること、それは中央の日常的指導と援助の弱点が反映していたという自己分析にたって、提起したものでした。
なぜ「政策と計画」なのか。どうとりくみをすすめるか。あらためてこの方針のもつ意義を根本からつかみ、今度こそ全党に定着するまで力をつくす必要があります。
「政党としての大道」にたった活動
まず強調したいのは、政党が国民とむすびついて、草の根から国民的な力を組織して、それを政治を変える大きな力に発展・転化させていくというのは、政党であるかぎり一番の基本の活動──「政党としての大道」にたった活動であること、こういう仕事をやる力をもっているのは、日本共産党しかないということであります。
そしてそういう活動は、わが党でいえば、「支部が主役」となってこそ、はじめて可能になります。「政策と計画」をもった活動とは、要求活動と党勢拡大の「二つの基本の活動」を「支部が主役」になって、草の根からすすめることで、国民とわが党とのむすびつきをひろげ、政治変革の側に結集するという、「政党としての大道」にたった活動であることを、しっかりつかむ必要があります。
党建設の歴史的発展をかちとった、試されずみの方針
「政策と計画」という方針は、わが党の党建設の歴史的発展をかちとった、試されずみの方針であります。
決議案は、一九六〇年代の党建設の大躍進に匹敵する、党建設の大きな躍進をかちとろうとよびかけていますが、六〇年代の党躍進の底力になったのは、要求活動と党勢拡大を「二本足の党活動」として相乗的に発展させることに、全党が執念を燃やしてとりくんだことにありました。「政策と計画」という方針は、こうした党活動の発展のなかで、一九六五年に打ち出され、六〇年代の輝かしい党躍進をささえる柱となった方針であります。わが党が、この四十年来とってきた党活動の大原則を、あらためて二一世紀の党づくりの根本にすえ、さらに発展させようというのが、今回の提起の意味であります。
政治目標とともに、要求活動、党建設の方針を
この間、とりくみに弱まりがあり後退したとはいえ、五割の支部は「政策と計画」をもって活動しています。一時は九割近くの支部がこれをもって活動した経験をもっています。つぎの諸点に留意して、「政策と計画」をもち、充実させることが大切です。
──その支部が責任をおっている職場、地域、学園を、どう変えるのかという、生きた政治目標を、みんなで議論して決めることが大切です。つぎの全国選挙での得票目標を決めることも、その大切な内容の一つとなります。
──「政策」をもつとは、それぞれが責任をおっている職場、地域、学園で、国民がどんな切実な要求をもっているかをつかみ、その要求の実現のためにどういう行動をおこすかを明らかにし、実際に行動をおこすことであります。
──「計画」をもつとは、それぞれの政治目標を実現するためにも、国民要求を実現するうえでも、どういう力をもった党が必要かを目的意識的に明らかにし、党を質的につよめ、党員と読者を増やすとりくみをすすめることであります。そのさい、支部に対応した単位後援会をつくること、後援会ニュースを広く発行して、つねに後援会員と相談し、その力をかりて活動を発展させることも大切となります。
活動のなかでたえず豊かに充実させ、生きた指針に
「政策と計画」は、はじめから全面的なものでなく一つの課題から出発してもよいし、いったんつくったら終わりというものでもありません。つねに活動のなかで豊かに充実・発展させ、支部活動の生きた指針としていくことが大切であります。
党機関の指導と援助も、いくつの支部がつくったかという数だけでなく、どういう内容でつくっているか、それにもとづく活動はどうなっているか、どんな困難や悩みをかかえているのかなどを現場でつかみ、支部がみずからつくった「政策と計画」をやりとげていけるように親身で懇切な援助をおこなうことを、支部にたいする指導の基本姿勢とすることがもとめられます。
「政策と計画」をもった総合的活動のなかで党勢拡大の独自追求を
「政策と計画」をもった総合的な活動と、党勢拡大との関係を、正確にとらえた指導と活動が重要であります。つぎの両面をしっかりおさえることを強調したいと思います。
「政策と計画」は、党勢拡大のたんなる手段ではありません。それは「政党としての大道」にたった、政党としての一番の基本の活動です。国民の要求実現のための活動というのは、それ自体がわが党の存在意義を発揮する重要な活動であります。
同時に、「政策と計画」という方針を、全面的に推進するためには、自然成長にまかせては前進が困難な課題である党勢拡大──党員と読者の拡大を、独自に粘りづよくとりくむ独自追求の努力が必要となってきます。
決議案は、その相互の関係をつぎのようにのべています。
「もとより、党勢拡大は、独自追求なしには前進しない。同時に、『政策と計画』をもって自覚的・自発的に活動する支部を、一つひとつ粘りづよく広げていく活動を土台においてこそ、党勢拡大の独自追求は実りあるものとなり、安定的で持続的な拡大が可能となることを、強調しなければならない」
こうした立場を堅持して、党勢拡大を本格的な前進の軌道にのせるために、力をつくそうではありませんか。
支部からみて知的・理論的にも、人間的にも信頼される党機関を
すべての支部が「政策と計画」をもった「支部が主役」の活動にとりくむためにも、決議案がのべているように、党機関の体制を強め、指導水準を高めることがつよくもとめられます。支部の活動から学ぶという双方向・循環型の姿勢が重要であります。
とくに、党機関が支部からみて、知的・理論的にも頼りにされ、人間的にも信頼される魅力ある人間集団として成長していくことが、もとめられます。そのためにも、活動経験も人生経験も豊富な、試されずみのベテラン党員の力をかり、その知恵に学びながら、活動を前進させていく姿勢と努力が大切です。
わが党は、全国で約二万四千の支部をもっています。全国二千五十六の市区町村の98・6%の自治体で支部と党員が活動しています。すべての支部が、「政策と計画」をもって自覚的に草の根で国民との結びつきを広げる活動にとりくめば、どんな逆風がふいてもそれを打ち破って前進できる、素晴らしい発展の力が生まれることは、まちがいありません。
今度の大会期は、ぜひここに本当に全党が執念を燃やしてとりくんで、すべての支部が「政策と計画」をもち、自主的・自覚的な活動をする支部に前進する──この大事業をやりとげようではありませんか。そして、一九六〇年代の党躍進の時期に匹敵する、新たな党躍進の波をみんなの力でおこそうではありませんか。(拍手)
労働運動の前進と、職場支部の強化について
つぎに、労働運動の前進と、職場支部の強化についてのべます。
決議案が、第四章で、労働組合運動の新たな前進にむけた方針を打ち出し、第五章で、職場支部の活動の抜本的強化の方向をしめしたことは、全体としてたいへん積極的に受け止められています。いま労働組合運動の前進をはかりながら、職場のなかに強く大きな党をつくることは、全国民的意義をもつわが党の重要な任務であります。
歴史的転機にある労働組合運動
決議案は、「わが国の労働組合運動は、歴史的な転機ともいうべき新しい重要な局面をむかえている」とのべていますが、これは労働組合運動が、「労働者の生活と権利を守り、労働諸条件の改善をはかる」という本来の役割を発揮して前進する、新たな可能性をはらんだ情勢が生まれていることを指摘したものであります。私は、そのことを三つの角度からみてみたいと思います。
一つは、今年の春闘をめぐるたたかいの様相であります。大企業が八十三兆円もの余剰資金をかかえるなど、空前の利益をあげる一方、労働者の賃金は切り下げられ、そのうえサラリーマン増税と社会保障切り捨て、消費税増税がくわだてられるなかで、階級的労働組合だけでなく、連合系労働組合なども数年ぶりに賃上げをかかげ、サラリーマン増税反対で行動するという新たな情勢がすすんでいます。この動きにたいして日本経団連は「安易な賃金引き上げは将来に禍根を残す」として抑制をはかる方針を明らかにし、竹中総務大臣は「賃金抑制を継続すべき」と発言しています。「民間にできることは民間に」といいながら、民間の賃金に口出ししている。とんでもない発言です。政府・財界が一体になって賃上げを押さえつける姿勢をあらわにしているのが特徴です。労働条件をめぐる矛盾はたいへん激しいものがあります。こういうなかで労働運動の立場の違いをこえて、春闘をたたかう大きな条件が広がっています。
二つ目に、重大なことは、小泉政権と民主党が、公務員削減と給与引き下げ政策の競争をはじめていることであります。民主党は、昨年の特別国会で、「人事院勧告で国家公務員の給与を決めるさいに、民間大企業の賃金を参考にしているのは高すぎる。零細企業を含めた民間給与の実態をふまえたものにするべきだ」と、なんと賃金の引き下げを公然と国会の場で主張し、そのための法案を国会に提出するに至りました。さらに民主党は、政府の公務員削減方針への「対案」として、通常国会に、公務員制度改革の法案を提出するとしています。野党第一党が、こともあろうに賃下げの旗振りをするというのは、歴史に類をみない異常な事態であり、連合系労組との矛盾はきわめて深刻なものがあります。ここでも、力を合わせたたたかいが、必要になってきています。
三つ目に、昨年九月に発表された厚生労働省の「今後の労働契約法制のあり方に関する研究会」の最終報告では、現行労働法制を事実上の解体に導く重要な内容が満載されています。労働条件の一方的切り下げを可能にする「労使委員会」なるものの設置、解雇の金銭的解決制度──つまり、「金を払えば解雇してもいい」──こういうとんでもない制度の導入による労働者の解雇の自由化、ホワイトカラー労働者の残業代をただにする方向での労働時間規制の緩和などが、乱暴におしすすめられようとしています。これにたいして、全労連とともに、連合も反対しており、政府・財界との矛盾は、ここでも深刻なものとなっています。
こうした労働者と労働組合をめぐる情勢は、党と階級的労働組合が奮闘すれば、新たな前進をかちとることができる大きな可能性をしめすものとなっています。この情勢の新しい特徴をしっかりつかんで、広い視野に立った労働組合運動の発展が強くもとめられているということを私は訴えたいと思うのであります。(拍手)
すべての職場支部が「政策と計画」をもった活動を
こういう情勢のもとで、職場支部がどうやって前進をかちとるか。決議案第五章は、「職場支部は、労働組合運動の前進のために積極的役割を果たすとともに、党として独自に、すべての労働者を視野に要求実現のたたかいにとりくむ」ことを強調しています。
同時に、決議案第四章で打ち出した労働組合運動の三つの発展方向──「一致する要求での共同行動」、「未組織労働者の組織化」、「公務員労働者への攻撃をはねかえす」ことは、どれも職場支部のたたかいの課題でもあるとのべています。
このたたかいをすすめるうえで、職場支部での「政策と計画」をもった活動が、きわめて重要です。
「政策」では、職場の切実な要求をとりあげることが出発点となりますが、そのさい、すべての労働者を団結させることができ、労使協調主義の労働組合も、企業側も否定できない具体的な現実の問題をリアルにとりあげることが大切であります。
──野放しの利潤第一主義による長時間・過密労働がうみだした労働災害・重大事故、職業病・メンタルヘルスなどが、重大な社会問題となっています。この問題は、さすがに財界も企業の存立基盤にかかわる問題として警鐘を鳴らさざるをえなくなり、連合系の大企業労組も事故の根絶要求をかかげるようになっています。職場支部が労災根絶のために要員増要求をかかげて、実現をかちとるなどの成果が生まれていることはたいへん重要であります。
──非正規・不安定雇用労働者のなかで、無法な解雇や差別が横行するとともに、正社員のなかでの「サービス残業」など無法な長時間労働も深刻です。正規労働者と非正規労働者が力をあわせて、無法や差別を職場から一掃するためにたたかいをおこしている経験が全国に生まれつつあることは、たいへん重要です。これを大きな流れにしていく必要があります。
──公務員労働者への攻撃は、労働者階級をめぐる政治的・経済的対決の重大な焦点となっています。党が、自治体労働者論・民主的公務員労働者論にたって、住民との連帯をつよめるとともに、民間労働者のたたかいとの連帯、国民各層のたたかいとの連帯をつよめ、この攻撃を打ち破ることは、国民的意義をもつ、さしせまった重要課題であります。「公務も民間も住民と一緒に」を合言葉に、保育所や学校給食の改善など、住民の切実な要求を掲げた共同が各地で広がり、成果をあげつつあることはたいへん重要であります。公務員労働者にかけられた攻撃は、全国民にかけられた攻撃です。全国民の連帯と団結の力でこれを打ち破ろうではありませんか。(拍手)
職場支部が、こうした「たたかいの組織者」として要求活動をすすめ、広い労働者との結びつきをつよめながら、党員や読者をふやす具体的な「計画」をもち、その実現のための系統的なとりくみをすすめることが大切であります。
大会決議案は、「長年きずいてきた陣地をひきつぐ後継者をつくることは、焦眉の課題であり、これ自体が重大な階級闘争の課題である」とのべています。職場に不抜の強大な党を建設する任務と、労働組合を強める任務は不可分のものであります。職場における強大な党建設こそは、労働組合強化の最大の保障ですが、同時に、職場支部が、労働組合強化の活動に積極的にとりくむことが、労働者との結びつきを強め、広げ、党の不抜の力を職場につくりあげることにつながります。
わが党の党規約では、日本共産党は「日本の労働者階級の党」だと規定しています。そういう党として、職場に強大な党をつくる仕事に、新たな情熱と気概を燃やしてとりくもうではありませんか。(拍手)
若い世代のなかでの活動の強化と党建設について
最後に、若い世代のなかでの活動の強化と党建設についてのべます。
大会決議案は、若い世代のなかでの活動、党建設、民青同盟への援助に、党の総力をあげてとりくむことを訴えています。いま、党が現代青年の革新的・民主的結集をはかるうえで、つぎの三つの観点を重視したとりくみが大切であります。
第一は、青年の切実な要求実現のためのたたかいを党として心から励まし、連帯し、大きく発展させることであります。決議案は「若い世代は、異常な大企業中心政治の矛盾の最大の集中点の一つとなっている」とのべていますが、人間を使い捨てにする非正規雇用の急増、長時間労働のまん延、就職難、異常な高学費などを打開することは、若い世代の切実な願いであるだけでなく、日本社会全体の現在と未来にとっての大問題であります。
雇用問題、平和問題など、さまざまな切実な要求で、若い世代が、勇気を出して声をあげ、立ち上がりはじめていることは、日本の大きな希望であります。わが党はこのとりくみに連帯し、前進させるために力をつくすものです。
第二は、青年のなかで社会的連帯、人間的連帯をつくりあげていくことであります。若い世代は、その成長過程で、異常な競争主義の教育にさらされ、さまざまな形で傷つき、苦しめられています。さらに「新自由主義」による誤った考え方──とくにすべてを国民個人の「自己責任」におしつける乱暴な論理の影響をうけ、深刻な雇用問題に直面しても「仕事につけないのは私の責任」と自らを責め、苦しんでいる青年が少なくないことは、たいへん胸が痛むことであります。
これにたいして、青年・学生支部や民青同盟がすすめている「悪いのは君じゃない。政治の責任だ。力をあわせていっしょに政治を変え、未来を開こう」というよびかけが、若者の心に深く響く状況があります。「新自由主義」は、「『自己責任』で行動する人間」を、いわば「期待する人間像」として、若い世代におしつけようとしています。それにたいして、人間らしい権利をもとめてともにたたかう人間集団、人間的連帯と社会的連帯でむすばれたあたたかい人間集団として、民青同盟や青年・学生支部が成長することを、私たちが心をこめて援助することが大切になっていると考えます。
第三は、青年・学生支部と民青同盟が、新しい綱領と科学的社会主義を学習することへの援助であります。いま若い世代は、身近な問題への関心だけでなく、靖国問題など歴史観にかかわる問題、憲法九条と世界の平和秩序にかかわる問題、地球環境や南北問題などグローバルな問題、資本主義の前途をどうみるかなど、広範な問題への知的関心をもち、人生の羅針盤となる理論をもとめています。わが党の綱領は、若い世代の知的・理論的関心に全面的にこたえる生命力をもっています。
青年・学生支部と民青同盟の活動の中で、学習の比重を思い切って高めるとともに、党全体の力を結集して知的・理論的な援助に力をそそぐ必要があります。各級党機関のメンバーが率先して講師をつとめ、青年・学生のなかで綱領と科学的社会主義を語る大小の講座、学習会を大いに開くことをよびかけるものです。
こうした三つの観点の活動の強化と結びつけてこそ、若い世代の中に強大な党と民青同盟をきずく大きな道が開かれてきます。
決議案のむすびの言葉を引用して、全党へのよびかけとしたいと思います。
「未来は青年のものである。そして日本共産党こそ、日本の未来を開くもっともたしかな進路をしめしている、未来の党である。若い世代のなかでの活動を抜本的につよめ、日本の社会進歩の事業の後継者をつくるために、全党の総力をあげたとりくみを、強くよびかけるものである」
代議員、評議員のみなさんの積極的な討論を訴えて、報告を終わります。(拍手)