2006年1月12日(木)「しんぶん赤旗」
主張
労働時間の規制緩和
ただ働きと過労死増やすのか
厚生労働省の「今後の労働時間制度に関する研究会」が、一定要件のホワイトカラー労働者を対象に、労働時間規制の適用除外にする枠組みをつくるという報告書(案)を論議しています。
労働基準法では、労働時間は一日八時間、週四十時間、残業や深夜業には割増賃金を支払うことを定めています。この規制を外せば、労働者は際限なく働かされ、残業代も出なくなります。ただ働きと過労死をいっそう深刻にします。
■労使協議に委ねる危険
報告書(案)は、労働時間規制の適用除外となる労働者の具体的イメージとして、「企業における中堅の幹部候補生で管理監督者の手前に位置する者」「企業における研究開発部門のプロジェクトチームのリーダー」を例示しています。
中堅の労働者やチームリーダーといえば、日本の社会の中でも、過重な労働が、大きな問題になっています。たとえば、三十代男性で週六十時間以上働いている人の割合が、一九九三年の20・3%(百五十三万人)から、二〇〇四年には23・8%(二百万人)と増加しています。子育て世代にあたる労働者の長時間労働が、少子化の大きな要因となっています。その世代に、これまで以上に過重労働を強いることは、少子化傾向の克服にとっても損失です。
報告書(案)は、労働時間規制の適用除外の導入にあたっては、労使協議に基づく合意にゆだねるとしています。もともと、労働時間は、労使の自主性にまかせれば資本家側が労働者に長時間労働を押し付けることになるので、ルールを公定して規制してきました。労使協議にゆだねることは、企業のやりたい放題を許すことになります。
一定要件のホワイトカラーといっても、その範囲は明らかではありません。厚生労働省によると、いわゆるホワイトカラー(専門的・技術的職業従事者、管理的職業従事者、事務従事者、販売従事者)は、雇用労働者全体の55・2%を占め、二千九百五十四万人にのぼります。
すべてのホワイトカラーを、労働時間規制の適用除外にするものではないにしても、法的な規制がなく、労使の合意にまかせるのでは、対象労働者は限りなく広がる可能性があります。
ホワイトカラー労働者を、労働時間規制の適用除外にするというのは、財界の団体・日本経団連が言い出したことです。日本経団連は、年収四百万円以上の労働者なら、だれでも労働時間規制の適用除外の対象になるとしています。報告書(案)でも、「通常の労働時間管理の下で働いている労働者の年間の給与総額を下回らないこと」を対象者の要件としてあげています。
報告書(案)が、日本経団連の提言を受けて、労働時間の規制緩和をすすめていることは明らかです。
■職場から無法一掃しよう
正社員がサービス残業による異常な長時間労働で働かされている一方で、不安定雇用のもとにおかれている労働者は極端な低賃金と無権利で働かされています。
日本共産党は、開会中の第二十四回大会にたいする中央委員会報告で、労働分野の規制緩和に反対し、働くものの権利を守るルールをつくる、職場から無法や差別を一掃するために、国民各層のたたかいと連帯をつよめることを提起しています。
正規労働者と非正規労働者が連帯して、人間らしい雇用をもとめるたたかいをすすめていきましょう。