2006年1月10日(火)「しんぶん赤旗」
主張
アスベスト対策
国と企業の責任を明確にして
大手機械メーカー「クボタ」の工場労働者や周辺住民のアスベスト(石綿)健康被害が明らかになってから半年がたちましたが、国と加害企業の責任解明は進んでいません。石綿の禁止・除去と被害者救済が、大きな社会問題となっています。
■06年度全面禁止決めたが
石綿が原因とみられる健康被害は、肺がん、石綿肺、中皮腫(ちゅうひしゅ)などに大別されますが、たとえば、中皮腫による死者数は、政府が統計をとりはじめた一九九五年から十年間で七千人を超えています。しかも年間の死者数が、九五年の五百人から、二〇〇四年には九百五十三人と倍に増えています。
吸い込んでから数十年もあとに発症するため、今後の増加が懸念されており、対策の強化が必要です。
政府は、昨年十二月二十七日の関係閣僚会合で、〇六年度中の石綿の全面禁止措置を決めました。
欧州各国で一九八三年から九〇年代はじめにかけて石綿の使用禁止が相次ぎました。国会で、七二年には石綿製造工場での肺がん多発を告発してきた日本共産党は、「石綿使用禁止は世界の趨勢(すうせい)」として、製造・使用規制を十数年前から求めてきました。しかし、日本が毒性の強い青石綿と茶石綿の使用を禁止したのは九五年で、白石綿の使用を〇四年十月の原則禁止まで認めてきました。
来年度中の石綿の全面禁止措置は当然ですが、ここまで製造・使用禁止を遅らせ、健康被害を拡大してきた国の責任は重大です。
政府は、関係閣僚会合で、過去の対応を検証してきましたが、「当時の科学的知見に応じて関係省庁による対応がなされており、行政の不作為があったということはできない」と、責任逃れをしています。
石綿の健康被害は、安全対策もしないまま大量の石綿の製造・使用を続けてきた企業と、危険性を認識しながら長期にわたって使用を容認してきた政府に責任があります。何の落ち度もないのに、なぜ労働者と住民が苦しまなければならないのか。被害者が知りたいのはその点です。
企業のもうけ最優先、国民の安全を後回しにする自民党政治の体質が、石綿問題の解決でも問われているのです。被害の拡大を防止できなかった深刻な事態を重く受け止めて、政府は責任を明確にすべきです。
加害企業の一つ、クボタは、昨年十二月二十五日、社長が、道義的責任を認めて患者らに謝罪し、これまでの見舞金・弔慰金に代わる新たな救済策を工場周辺に限り、今年四月をめどにつくる方針を示しました。
クボタは、道義的責任、社会的責任を強調しつつも、工場(兵庫県尼崎市)の石綿と周辺住民の中皮腫発症との因果関係について「根拠を見いだすに至っていない」としました。
しかし、専門家の報告によると、仕事で石綿に触れることがないのに中皮腫を発症した尼崎市内の人たちを調査したところ、クボタの旧工場に近いほど死亡する割合が高くなっています。
■労災並みの補償を
すべての被害者を、国と企業の責任で救済・補償すべきです。その水準は、労災並みに、休業補償や遺族補償などを盛り込むべきです。工場の内と外で救済・補償に格差をつけるべきではありません。
政府の救済法案は弔慰金などを中心としており、生活補償や遺族年金がないなど、きわめて不十分です。日本共産党は国と企業の責任を明確にして、労災並みの補償など、対策の強化を求めて奮闘します。