2006年1月9日(月)「しんぶん赤旗」

就学援助4年で35万人増

04年度133万人 補助限定で改悪の動き


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 経済的理由により就学が困難な小中学生のいる家庭に市町村が学用品や教育費を支給する就学援助制度の利用者が急増し、二〇〇四年度時点で百三十三万七千人にのぼっていることが、文部科学省の資料で八日までに明らかになりました。公立小中学校の児童生徒総数に対する比率(就学援助率)は12・8%で、八人に一人の児童生徒が就学援助を受けていることになります。

 二〇〇〇年度は、利用者が九十七万九千人、援助率が8・8%でした。四年間で利用者は三十五万八千人増え、援助率は4ポイント増となります。

 就学援助の対象になるのは、生活保護世帯と、それに準ずる世帯(準要保護)の児童生徒です。

 〇五年度から、就学援助に対する国庫補助金が生活保護世帯だけに限定され、準要保護に対する援助については、使い道を限定しない交付金に「一般財源化」されました。

 準要保護の資格要件は市町村によって異なりますが、「一般財源化」されたことにより、要件が改悪される動きが出ています。

 広島市では、準要保護の資格要件は収入が生活保護基準の一・五倍でしたが一・三倍に下げられ、さらに引き下げられようとしています。青森・むつ市では、昨年七月の市校長会で、〇六年度から準要保護の就学援助の全項目廃止が提案されましたが、市民の批判などにより撤回されました。


■解説

■背景に雇用悪化と負担増

 就学援助の利用者が急増している背景には、「構造改革」路線のもとで進められたリストラによる失業、不安定雇用の増大と、相次ぐ社会保障改悪のもとでの負担増により、生活破壊、生活不安が進んでいることがあります。

 正規雇用の労働者は、二〇〇〇年の三千六百三十万人から〇四年には三千四百十万人に二百二十万人も減少しました。一方、パート、アルバイト、派遣など非正規雇用は同時期二百九十一万人も増加しています。完全失業率は、〇〇年の4・7%から〇一年には5・0%、〇二年には5・4%を記録しました。その後、若干下がり、〇四年は4・7%でしたが、依然として高水準であることに変わりはありません。特に、若年層の失業率は、〇四年で二十―二十四歳が9・0%、二十五―二十九歳が6・4%、三十―三十四歳が5・0%と高くなっています。

 社会保障では、〇三年四月に健康保険のサラリーマン本人負担が二割から三割に引き上げられるなどの負担増が進められています。雇用不安と負担増があいまって、子育て世代の生活難を増大させているのです。小泉内閣のすすめる国・地方財政の「三位一体改革」で、就学援助に対する国庫補助金が、準要保護の分については「一般財源化」されたことにより、自治体で改悪の動きが本格化しようとしています。一部の自治体で改悪されたところもありますが、多くのところでは制度の改悪を許していません。

 制度改悪について、日本共産党の石井郁子議員が昨年二月に国会で「地方に税源移譲すれば、(市町村の改悪の)動きを助長し、支給枠を引き下げることになるのではないか」とただしました。中山成彬文科相(当時)は「生活困窮の家庭のお子さんに手を差し伸べることは当然で、一般財源化されても、しっかり実情を見守り、そうでなければ指導していきたい」と答弁しています。

 二月の地方議会に向け、改悪を許さない世論と運動を広げていくことが大事になっています。(山岸嘉昭)


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