2006年1月8日(日)「しんぶん赤旗」
特集 在日米軍再編
住民の安全、譲れぬ 地方から うねり
「ミサイルを撃ち込まれても阻止する」「基地強化以外の何物でもない。絶対に容認できない」─。在日米軍再編計画に対して、関係自治体からいっせいに上がった反対の声。「米軍は望まれ、歓迎され、必要とされる場所に配置する」(ラムズフェルド米国防長官)というのなら、日米両政府はこの声を聞き、計画を撤回すべきです。
■際立つ異常、進む一体化
■地球規模の同盟
在日米軍再編計画(地図参照)は、日米両政府が昨年十月末に合意した文書「日米同盟 未来のための変革と再編」(いわゆる「中間報告」)で示されたもの。「朝鮮戦争終結(一九五三年)以来、最大規模」という、地球規模での米軍再編の一環です。
「地球規模のテロとの戦い」を口実に、地球上のどこにでも短時間で先制攻撃できる態勢をつくるのが狙いです。(1)迅速に戦力を展開できる機動性=“殴り込み”機能の向上(2)同盟国との軍事協力体制の強化―が柱。「中間報告」はこの二つの柱に沿って、地球規模での「日米同盟」の侵略的強化を図ろうとしています。
■機動性いっそう
米軍部隊・基地の再編では、欧州で四万二千人以上、韓国で一万二千五百人の兵力を削減。これと並行して部隊の機動性を向上する計画です。
しかし、日本では兵力を基本的に維持したうえに、機動性もいっそう強化しようとしています。
もともと日本には、米本土以外で唯一、海外に遠征し、“殴り込み”をかける米海軍の空母打撃群や、海兵遠征部隊が常駐。空軍部隊も地球規模で展開する「航空遠征軍」(AEF)に編入されています。「中間報告」では、これらの部隊を維持するとともに、米陸軍キャンプ座間(神奈川県)に新戦闘司令部(UEX)を設置することなどで、四軍そろっての“殴り込み”態勢を強化しようとしています。
二〇〇八年には米海軍横須賀基地(神奈川県)に原子力空母を配備し、空母の「長期にわたる前方展開の確保」(「中間報告」)を狙っています。
一方、同盟国との軍事協力では、イラク戦争で米国との同盟関係に亀裂が入った欧州に対し、日本では逆に、アフガニスタン、イラク両戦争を機に米軍と自衛隊の融合・一体化が進みました。
「中間報告」では、米空軍横田基地(東京都)への日米統合司令部(共同統合運用調整所)の創設や航空自衛隊の戦闘司令部(航空総隊司令部)の移転、キャンプ座間でのUEXと陸上自衛隊の新戦闘司令部(中央即応集団司令部)の設置を計画しています。こうした司令部機能の統合をはじめ基地の共同使用、演習の拡大などを通じ、両軍の一体化をいっそう深化させようとしています。
さらに日本政府は、米海兵隊キャンプ・シュワブ(沖縄県)沿岸部への海兵隊新基地建設をはじめ、一兆円を超える再編経費のほぼ全額を負担する方向です。これには、沖縄の海兵隊司令部のグアム移転費用まで含まれます。国外への外国軍移転費用の負担は「ソ連軍撤退の際にドイツ政府が支払ったぐらい」(政府関係者)というほど異例のものです。
■カギを握る世論
欧州で見られるように、米軍再編では事故、騒音、犯罪、環境汚染などの元凶である米軍基地への批判の高まりから、兵力削減を余儀なくされている側面もあります。
日本でも、各自治体の首長の見解や意見書・決議に示された「基地強化・永久化ノー」の声、運動をいっそう広げることが計画をやめさせる大きなカギです。
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■首長のコメント
■騒音・治安悪化を懸念/市民を守る使命
■北海道
北海道 高橋はるみ知事「沖縄の負担軽減ということは理解できるが、受け入れは難しい問題だ」
千歳市 山口幸太郎市長「訓練を受け入れ難いという気持ちが強くなった」
苫小牧市 桜井忠市長「私は『騒音はいらない』という地元住民と同じ考え」
■青森
青森県 三村申吾知事「現状を超える基地機能強化は容認できない」
■茨城
茨城県 橋本昌知事「地元が反対なら反対だ」
小川町 伊能淑郎町長「従前から騒音を減らしてほしいと言っている。移転は反対」
鉾田市 鬼沢保平市長「騒音増大、事故を懸念して住民が反対しており了承は難しい」
行方市 坂本俊彦市長「(騒音で)住民の反対が強い」
大洗町 小谷隆亮町長「米軍の訓練移転には反対していきたい」
■石川
石川県 谷本正憲知事「騒音をさけてほしいというのが地元市町の思いであり、その意向を十分踏まえていただきたい」
白山市 角光雄市長「国の言い分を聞いていないが、米軍戦闘機が上を通ることは賛成できない」
■東京
昭島市 北川穣一市長「(米軍横田基地の)軍民共用化は、騒音の増大につながりかねず、反対の立場に変わりはない」
立川市 青木久市長「横田基地の再編案は、基地の恒久化、基地機能の強化、拡充が見込まれ、容認できない」
武蔵村山市 荒井三男市長「横田基地は基本的には整理・縮小、全面返還が望ましく、基地の恒久化につながる拡充・増強は容認できない」
瑞穂町 石塚幸右衛門町長「(米軍横田基地の)軍民共用化に対して『だめなものはだめ』とはっきり主張します」
町田市 寺田和雄市長「(米軍相模補給廠への自衛隊移駐は)あってはならないと国に要請した。引き続き相模原市と共同して対応していく」
■山口
山口県 二井関成知事「現時点では容認できない」
岩国市 井原勝介市長「格段に大きな基地機能強化で、容認できない」
由宇町 槙本利光町長「基地の性格を大きく変え、町民生活を揺るがす」
■広島
広島県 藤田雄山知事「NLP(夜間離着陸訓練)だけでなく昼間の通常訓練や低空飛行もある」
大竹市 中川洋市長「住民の生活環境を守る立場から反対」
廿日市市 山下三郎市長「住環境と世界遺産宮島が脅かされる」
江田島市 曽根薫市長「(大黒神島NLP誘致問題で)経済効果を期待する動きもあるが、住民の命とは代えられない」
三次市 吉岡広小路市長「米軍機低空飛行の増加が考えられ、望ましいことではない」
■福岡
行橋市 八並康一市長「これ以上、築城基地の強化は容認できない。この基本姿勢をしっかり貫いていく」
椎田町 新川久三町長「町民生活を守るのが首長の役目だ。米軍がくれば治安が悪くなる。自衛隊とは異質な米軍がくるのは反対だ」
豊津町 畑中茂広町長「再編の内容を容認できないし、到底住民の理解を得られない。騒音の増大や治安の悪化を危ぐする住民に納得できる説明をすべきだ」
築城町 有本重隆町長「基地周辺一市四町で共同歩調して反対していく」
豊前市 釜井健介市長「絶対反対です」
犀川町 白石春夫町長「『中間報告』には反対だ」
上毛町 鶴田忠良町長「基地周辺自治体が反対なら、私も反対だ」
■宮崎
宮崎県 安藤忠恕知事「騒音や事故など、地元住民の不安が払しょくできない以上、現状では賛成できない」
新富町 川越俊宏町長「米軍の戦闘機移転訓練は、騒音被害のいっそうの拡大や、米軍の常駐化、後方支援基地となる恐れがある」
西都市 橋田和実市長「私は市民を守る使命があるから米軍訓練の移転に反対する」
■鹿児島
鹿児島県 伊藤祐一郎知事「地元の合意なくして進めてはならない。地元に強い反対がある。沖縄県知事も反対だ。鹿屋移駐は負担のつけ回しだ」
鹿屋市 山下栄市長「鹿屋基地は移転先として不適当だと受け取っていただきたい。現段階で合意点、接点はない」
鹿屋市、垂水市、旧輝北、肝付、旧吾平、錦江、旧串良、東串良、南大隈各町の首長は、「鹿屋市周辺地域米軍再編問題対策協議会」を設置、初会合で反対活動を決める。
このほか、「大隅総合開発期成会」に属する曽於市長、旧松山・旧志布志・旧有明・大崎各町長も反対を表明
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■基地機能強化・恒久化に危ぐ
■神奈川
松沢成文知事「(中間報告は)とてものめる案ではない。
▽米陸軍キャンプ座間
相模原市 小川勇夫市長「新たな基地の押し付け、基地恒久化以外の何物でもなく、到底容認できない」
座間市 星野勝司市長「ミサイルを撃ち込まれても絶対に阻止する」
▽原子力空母
横須賀市 蒲谷亮一市長「核に対する市民、国民の不安は根強く、誠に遺憾である。納得し難い」
逗子市 長島一由市長「基地の機能強化や恒久化、米軍家族住宅の追加建設に直結する可能性が高く、危ぐしている」
三浦市 吉田英男市長「マグロ船が(米国による)ビキニの水爆実験で被害を受けた三浦市の体験があり、懸念している」
鎌倉市 石渡徳一市長「遺憾である」
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■民主国家の行為ではない
■沖縄
稲嶺恵一知事「県の基本的考え方とも、まったく相いれないものであり、絶対に容認できない」
宜野湾市 伊波洋一市長「条件付きでなく可能な返還を実現するのは60年も負担を強いている沖縄に対する責任だ。県知事はじめ地元の理解を得られない案で実現性があるとは到底思えない」
名護市 岸本建男市長「(普天間基地のキャンプ・シュワブ沿岸移設について)受け入れることはできない。最終報告までに変更できないなら今後も反対する」
北谷町 辺土名朝一前町長「国の決定を地域に押しつけるやり方は民主国家の行為ではない。(海兵隊の司令部移転は)将校がいなくなり前線兵士だけ残れば、沖縄はサファリパーク状態になる」
北中城村 新垣邦男村長「政府は県民の思いを全然理解していない。なぜ返還に条件をつけるのか」
うるま市 知念恒男市長「普天間が必ず県内でなければならないという姿勢にあぜんとする」
■地方議会の決議・意見書
■街づくりに影響/不誠実で強引
■北海道
北海道議会「千歳基地が移転先となる可能性があると一方的に地元へ伝えてきたことは、誠に遺憾」
千歳市議会「市のまちづくりにも影響を及ぼすことが懸念され、現状においては、受け入れ難い」
苫小牧市議会「地域住民にいっそうの不安を募らせる」
札幌市議会「訓練移転については、地元の意向の尊重を強く要望する」
余市町議会「日米同盟を侵略的に大きく変質させ、日本とアジア、世界の平和に逆行する」
■神奈川
▽米陸軍キャンプ座間
相模原市議会「不誠実かつ強引な方法と内容に断固抗議する。中間報告の撤回を強く求める」
座間市議会「地元の意向を尊重し、重く受け止めるとの国の姿勢はみじんもない」
このほか、「中間報告」以前に意見書・決議を可決した議会 海老名、大和、綾瀬、藤沢、厚木、逗子各市議会、津久井、相模湖、愛川、寒川各町議会
▽原子力空母
横須賀市議会「再三にわたる地元の(反対)要請にもかかわらず…突然発表された今回の合意は、到底容認できるものではない」
逗子市議会「原子力空母配備を撤回し、地元自治体の意向を尊重する立場から再考を求める」
三浦市議会「原爆マグロ大量廃棄という悲惨な体験を持ち、原子力空母に対する市民の不安と恐怖感は根強い」
鎌倉市議会「もし放射能事故が起きる事態となれば、世界に誇るべき歴史的遺産と自然を有する本市においても、その影響ははかり知ることができ(ない)」
葉山町議会「地元の感情を無視した合意は、とうてい容認できない」
このほか、配備合意発表以前に、反対意見書・決議を可決した議会 座間、大和、綾瀬各市議会
■山口
山口県議会「騒音のたらい回しであり、NLP誘因の恐れがある。現時点では到底受け入れられない」
岩国市議会「長年にわたり基地による諸障害に悩まされ続けており、これ以上の基地機能の強化は容認できない」
由宇町議会「町は基地の飛行直下にあり、そのすさまじさは我慢の限界を超えるものがある」
和木町議会「岩国基地は諸障害を長年にわたりもたらしている」
柳井市議会「地域住民は長年にわたり航空機による騒音や墜落の危険性等に悩まされてきた」
周防大島町議会「NLPや通常訓練の騒音のすさまじさは受忍の限度を超え、基地周辺住民の生活、子どもの勉学や高齢家庭療養者などに極めて堪え難い苦痛と不安を与えている」
■広島
広島県議会「懸念を払しょくされておらず、現時点では容認できない」
広島市議会「平和を願う広島市民にとっても重大な問題。到底受け入れられない」
大竹市議会「(岩国基地)新滑走路における訓練となれば、本市上空を通過することになり、市民への影響は計り知れない」
廿日市市議会「岩国基地は世界遺産の島・宮島とも至近距離にあり、騒音や墜落事故の危険性など、地域一帯に与える影響は計り知れない」
江田島市議会「NLPは出撃直前の訓練で攻撃のための訓練であり、平和憲法を持つ日本国民としては容認できない」
三次市議会「低空飛行増につながることも懸念され、住民生活に多大な不安を招く」
北広島町議会「県北地域では米軍の低空飛行訓練による騒音被害や墜落事故の危険性など多くの問題が発生した」
■我慢の限界超える/歴史的遺産・自然壊す
■福岡
行橋市議会「生活環境に大きな変化を来たすことも予想されるので、今後、これ以上の基地被害を行橋市民は容認できない」
椎田町議会「再編計画については同意できず、築城基地使用強化については断固反対」
豊津町議会「基地の強化・新たな負担の押し付け以外の何ものでもなく、基地の永久化につながる」
築城町議会「築城町民に対し、さらに大きな負担を強いる疑念がある。絶対に同意できない」
豊前市議会「豊前市馬場区に戦闘機が墜落する事故も発生。日常生活に多大な不安と悪影響を及ぼす」
苅田町議会「重要港湾や空港道路を抱えており、『米軍基地化』でさまざまな事件が引き起こされる治安の不安も考えられる」
犀川町議会「町は盆地のため、飛行訓練の騒音が山々に反響。特に乳幼児や高齢者の被害が深刻」
吉富町議会「築城基地は、『紛争地への発進基地』となり、ひいては攻撃を受ける可能性が強まる」
上毛町議会「米戦闘機の『訓練』移転も『緊急時』の米軍の使用強化も反対」
■宮崎
宮崎県議会「治安の悪化、事故の発生ならびに騒音の拡大等の地元負担が、今まで以上に増大するような事態は容認できない。断固反対を表明する」
新富町議会「事故の危険性やいっそうの騒音被害の拡大、在日米軍の常駐化も予想される」
西都市議会「(墜落事故などが起きており)市民は同様の事故が起きるのではないかと不安を抱いている」
このほか 宮崎市議会、高鍋、旧佐土原、木城、綾各町議会
■鹿児島
鹿児島県議会「国は移設理由を県、鹿屋市へ詳細に説明すべき」
鹿屋市議会「市民の総意として断固反対し撤回を強く要求」
吾平、輝北の両町議会は改めて反対する意見書を可決。
■沖縄
沖縄県議会「(沿岸案は)名護市や県民に不満が多いことを踏まえれば、そのままの形で受け入れることは現実問題として難しい」
名護市議会「(中間報告は)地元の頭越しに行われたものと断じざるを得ず、北部地域への基地集約が懸念されることからも憤りを禁じえない」
宜野座村議会「飛行ルートが村内の住宅上空となる可能性が高く、現在も米軍ヘリが頻繁に上空を飛んでおり容認できない」
金武町議会「町民の不安と不満がうっ積するなか、日米両政府にとって地域住民の存在はいかように認識されているか疑問を抱かざるを得ない」
恩納村議会「(米軍再編に伴い)北部地域への米軍基地を更に強化し、押し付けることは断じて許せない」
嘉手納町議会「嘉手納基地の航空自衛隊共同使用では、新たな負担増かつ基地の機能強化につながることは必至」
沖縄市議会「(中間報告では)『負担軽減』より『抑止力』が優先されており、容認できるものではない」
北谷町議会「嘉手納基地以南の基地返還と引き換えの北部への基地の集約は、住民の生命・財産を脅かし、ヤンバルの自然の宝庫を破壊する」
那覇市議会「辺野古沿岸移設のために、県知事や首長の『公有水面埋め立ての権限』なども、『特別措置法』で奪おうとすることは言語道断」
このほか 糸満市、豊見城市、宜野湾市、うるま市、宮古島市、石垣市、与那原町、南風原町、久米島町、北中城村、読谷村、本部町、大宜味村、伊江村各議会