2006年1月8日(日)「しんぶん赤旗」

主張

WTO

公正なルール求める世界の声


 昨年末に香港で開かれたWTO(世界貿易機関)閣僚会議は、全体合意を先送りし、今年中に貿易拡大のための合意をめざす「閣僚宣言」を採択して閉会しました。

■貿易拡大一辺倒の弊害

 WTO協定の発足から十年、多国籍企業と先進国の利益が拡大する一方で、食料輸入国の農業や発展途上国の産業が衰退させられ、貧富の格差が拡大するなどしています。そのため、今回の交渉を開発ラウンドと位置づけ、発展途上国への援助を掲げることもしています。

 農業交渉では、上限関税の設定や関税率の大幅な引き下げを求める輸出国と、国内農業が大打撃を受ける輸入国の対立、農産物の国際価格を引き下げているEU(欧州連合)やアメリカによる輸出補助金の廃止・縮減を求める発展途上国の要求が焦点になりました。会議では、EUやアメリカが輸出補助金の削減を約束することで、発展途上国に交渉の継続を認めさせたというのが実際です。

 農業交渉が最大の難航分野になるのは、WTO協定が、農業貿易の拡大で巨大アグリビジネスなど多国籍企業、食品大企業に大きな利益をもたらす一方で、発展途上国を中心に農業と地域経済、農村社会に大きな打撃を与えているからです。

 WTO香港会議にあわせて、農業・農民団体や労動組合、環境の保護や食の安全を求めるNGOなどが、アジアを中心に世界中から集まり、連帯して、WTOへの抗議や、討論・交流集会を行いました。輸入国、輸出国を問わず、参加者が共通して訴えたのは、多国籍企業による買いたたきやアメリカなどのダンピング輸出で、多くの家族経営がなりたたなくされ、自給的な食料生産や地域社会の崩壊がすすみ、食料主権が侵害されていることです。大企業中心の商品作物生産の拡大が小農民から土地を奪う実態も語られました。

 WTO批判だけでなく、農業貿易や農業政策への対案が真剣に模索されていることも注目されます。各国の農民が共存でき、飢餓の克服を含め食料の安定供給と地域の維持をめざすためにどうするか。国際的、国内的な備蓄の確立。輸出だけを目的にした生産の抑制。農民の経営と生活を保障する価格の実現。各国が条件にあった政策をとる権利。こうしたことが、討論のなかで、課題として取り上げられました。

 閣僚会議の経過と民衆レベルの国際的な運動の発展は、貿易拡大一辺倒の現行枠組みの延長ではなく、WTOの十年間を各国民のレベルで検証する必要性と、端緒的とはいえ今後、協定の改定を現実の課題とする可能性を示したといえます。

■各国の食料主権の保障を

 交渉の継続が決まったことによって、日本にいっそうの農産物市場開放をもとめる輸出国と、工業製品の輸出や資本の自由化によって利益拡大を求める財界・大企業の圧力が強まる可能性があります。

 日本共産党は、WTO農業協定の改定により、自給率の低い国の増産努力など、各国の食料主権を保障することを主張しています。そして、価格保障を農業予算の主役に位置づけ、とめどない輸入をおさえて農業生産を多面的に発展させるなど、食料自給率を向上させる政策を実現するために、努力しています。

 国内農業の維持・発展と国民にたいする安全な食料の安定供給の立場にたった監視、運動をつよめ、WTO協定改定の世論を高めるとりくみを、いっそう発展させようではありませんか。


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