2006年1月6日(金)「しんぶん赤旗」
英保守党 医療政策の転換表明
無料制度を維持・拡充
【ロンドン=岡崎衆史】英二大政党の一つ、保守党のデービッド・キャメロン党首は四日、医療に関する基本政策を発表し、国家が一部の例外を除いて無料の医療を保障する国民医療制度(NHS)を保守党政権下でも医療制度の要に据え、維持、拡充することを明らかにしました。ロンドンにある研究機関キングズファンドで記者団を前に述べたもの。
政権党の労働党がNHS維持を貫いてきたのに対し、保守党はこれまでNHSの枠外にある民間医療機関を重視してきました。キャメロン党首の発言は同党のこれまでの医療政策の転換を示したもので、国家による無料の医療制度の維持が政党の違いを超えて共通の意思になっていることを示したものです。
キャメロン党首は「NHSは、裕福で健康な者が貧しく弱い者を生命の危機から守る継続的な義務を持つという信念の具体化であり、これは英国社会の要に位置する」と指摘。「保守党政権下でも、NHSは、お金をいくら持っているかにかかわらず、必要とする者に無料で、すべての人が利用可能のままである」と強調しました。
同党首はまた、民間医療保険利用者に減税措置を施すサッチャー元首相の政策や民間医療機関の医療費補助にNHS予算の一部を割り当てるとの昨年五月の総選挙での保守党の公約を否定。「税金を富裕者が(NHSから)抜け出るために使ってはならない」と述べました。
一方で、キャメロン党首は、NHSの下での医療機関の運営の自主性を尊重することや民間機関の活用をNHSの枠内で進めることを主張しました。
労働党のブレア政権はこれまでNHSの無料の維持を掲げるとともに、全体の15%という上限つきながら民間の活用も推進してきました。