2006年1月5日(木)「しんぶん赤旗」

2006世界の表情

移民系若者の暴動

不平等社会が原因

フランス


 フランスでは昨年十月末からほぼ三週間にわたり、移民系の若者による暴動が全国に広がりました。これをどうみるのか―人種主義反対・人民友好運動(MRAP)のムールー・アウニト書記長(51)に聞きました。(パリ=浅田信幸 写真も)


 ―フランス社会の矛盾を浮き彫りにした暴動で一番強調したいことは?

 暴動は「フランスの問題」です。つまり移民問題ではなく「フランス人のフランス」の問題だということです。暴動に加わった若者たちは移民二世、三世の世代です。フランスに生まれ、フランス国籍を持つフランス人なのです。

 暴動は予見できました。差別や失業のため貧困が北アフリカから来た移民に集中するもとで、社会的、民族的な亀裂が拡大し、非白人はゲットー(貧しい人たちの居住区)から抜け出せなくなっています。イタリアやスペインからの移民にはない差別があります。

■怒りためる若者

 今回のような規模になるのが予見できたということではありませんが、失業、差別、屈辱に苦しんでいる若者たちが、怒りを蓄積していることは明らかでした。

 怒りに火をつけたのは、サルコジ内相の「社会のくず」発言などの挑発です。二人の少年が警官に追いかけられて感電死したことも要因になりました。モスク(イスラム教礼拝所)に催涙弾が撃ち込まれたこともありました。日常的に受けている人間の尊厳の否定と軽べつに加え、こういう挑発がありました。

 暴動は、フランスには「機会の平等」がないという欠陥を白日の下にさらしました。仕事を探す場合、白人と比べて非白人は、機会が八分の一しかありません。

 ―政府は教育、住宅、雇用などで一連の措置を打ち出しましたが。

 政府の対応は人種主義的な傾向があります。一部の移民社会にみられる一夫多妻制が若者の非行の原因だと主張したり、問題をフランスの問題ととらえず「民族化」することで、本質からそらしています。

■一貫性ない政策

 最大の問題は政策に一貫性がないことです。明確なビジョンも欠いています。政府が打ち出した措置は、いったんやめたものを復活させたにすぎず、事の深刻さに対応していません。これでは再発を防げません。鎮痛剤でがんを治そうというものです。鎮痛剤もなければ困りますが、ゲットーの論理を打破する抜本的転換が必要です。

 ―必要な転換とは?

 (移民系の)ザヌーという名であれムールーという名であれ「フランス人であること」が本当に認められなければなりません。例えば高級官僚や議員で非白人は非常に少ない。閣僚にどれだけいますか。地方議会でもそうです。

 移民の二世、三世としてフランスに生まれ育った彼らをフランス人として、言葉の上だけでなく認めること。これは文明の挑戦ともいえます。それにふさわしい力を注ぐことが求められています。


 ▼人種主義反対・人民友好運動(MRAP) 人種差別問題を課題とするフランスの主要非政府組織(NGO)の一つ。会員七千人。第二次世界大戦中のユダヤ人強制連行に反対する運動、人種主義反対全国運動(MNCR)を前身とし、戦後一九四九年に「人種主義と反ユダヤ主義に反対し、平和をめざす運動」として結成。七〇年代の石油ショックによる景気停滞を経て、移民差別が新たな様相を帯びる中、七七年に現在の組織名に変更しました。


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