2006年1月4日(水)「しんぶん赤旗」
日本外交“八方ふさがり”
06年 抜本転換は急務
小泉純一郎首相の靖国神社参拝によるアジア近隣諸国との関係悪化をはじめ“八方ふさがり”の日本外交は、打開の展望を持たないまま二〇〇六年を迎えました。
■友人がいない
「日本の友人はどこにいるんだ?」。外務省OBで小泉首相の補佐官も務めた外交評論家の岡本行夫氏は、こう嘆いています(外交専門誌『国際問題』昨年十二月号)。
岡本氏は同誌で、日本にアジアの友人がいない象徴として、安保理常任理事国入りを目指すG4(日本、インド、ドイツ、ブラジル)の国連総会決議案(昨年提出)の共同提案国に注目。アジアで共同提案国になったのは、モルディブ、ブータン、アフガニスタンの三カ国だったと述べています。
さらに、この三カ国のうち二カ国はインドの常任理事国入りを応援するためだったこと、ドイツのためには欧州でフランスをはじめ十一カ国が共同提案国になったことを指摘。「(日本に友人がいない)原因の大きな部分は、歴史認識の問題が根っこにあるから」と述べ、小泉首相の靖国参拝についても「公的参拝となるといろいろな意味合いをもつ」と懸念を示しています。
小泉首相の靖国参拝への固執など日本の過去の侵略戦争を正当化する行動で、昨年末には日中首脳会談や日中韓首脳会談、韓国大統領の訪日が相次いで中止になりました。今年もその実現の見通しは立ちません。
岡本氏は同誌で「とにかく今年よりは来年、来年よりは再来年に関係を改善していこうと言っても無理」とまで言い切っています。
■米国言いなり
米国言いなり外交も矛盾をいっそう深めています。
昨年十月末に日米両政府が発表した合意文書「日米同盟 未来のための変革と再編」(いわゆる「中間報告」)は、米軍と自衛隊が一体となった海外での共同作戦を可能にする態勢づくりとともに、在日米軍基地の再編・強化計画を打ち出しました。地球的規模で「日米同盟」を侵略的に強化するのが狙いです。
しかし、政府が基地強化の計画を強権的に推し進めようとしていることに、全国各地で知事や市町村長をはじめ自治体ぐるみ、住民ぐるみの反対運動が大きく広がっています。
日米両政府は今年三月までにより詳細な計画や実施日程などを盛り込んだ「最終報告」を取りまとめることで合意していますが、外務省内ではすでに「三月中は困難」との声も上がっています。
国民の反対世論が根強い自衛隊のイラク派兵問題でも、政府は米国の要求に応え、昨年末に一年延長を強行しました。イラクに軍隊を派兵している国々が相次いで撤退や部隊の縮小を決める中、政府も陸自部隊を今年中に撤退させることを視野に入れ始めました。
しかし、小泉首相は派兵期間をさらに延長することや活動地域の拡大の可能性にも言及。米国にどこまでも付き従う姿勢を示し、自衛隊撤退の“出口戦略”を真剣に検討している形跡は見えません。
■他の重要課題
このほかの重要な外交課題では、北朝鮮との間で今月にも、日本人拉致問題、核・ミサイルなどの安全保障、国交正常化の三つのテーマで並行協議が始まります。
また、七月には初めてロシアが主催する主要国首脳会議(サミット)がサンクトペテルブルクで開かれます。今年末には、フィリピンで第二回東アジア首脳会議が開かれる予定です。
■06年の外交
【1月】
3日 麻生太郎外相がインド、パキスタンを訪問(6日まで)
7日 小泉純一郎首相が、イスラエル、パレスチナ、トルコを訪問(13日まで)
10日 額賀福志郎防衛庁長官が、イギリス、ロシアを訪問(15日まで)
月内にも北朝鮮の核問題をめぐる第5回6カ国協議再開
月内にも日朝間で拉致問題、安全保障、国交正常化の3テーマで並行協議
【3月】
月内 在日米軍再編についての「最終報告」
【5月】
1日 海上自衛隊のインド洋派遣基本計画の期限切れ
【7月】
15日 ロシア・サンクトペテルブルクで主要8カ国首脳会議(G8サミット、17日まで)
【12月】
12日 ASEAN+3首脳会議(フィリピン)
13日 第2回東アジア首脳会議(同)
14日 イラク特措法が定めたイラクへの自衛隊派兵の期限切れ