2006年1月3日(火)「しんぶん赤旗」

ロシア、ガス供給停止

対ウクライナ

EUも懸念


 【モスクワ=田川実】ロシア政府系天然ガス会社ガスプロムは一日、ウクライナを通るガスパイプラインの圧力を下げ、同国の消費量に当たる日量一億二千万立方メートルを削減したと発表、同国へのガス供給を停止しました。ロシア側の価格引き上げ提案をウクライナが拒否したのを受けた措置です。

 ウクライナのガス企業ナフトガスは「もはやガスプロムからガスを受け取っていない」と表明。備蓄分とトルクメニスタンからの輸入によって国内需要をまかなえるとしています。ウクライナが消費する天然ガスの三割以上はロシアからの輸入です。

 ウクライナ外務省は一日、ロシアの措置に対し、「わが国経済を不安定化させ、欧州連合(EU)向けガス供給を妨害するもの」と声明を発表しました。また、同日、エハヌロフ首相を代表に対策本部を設置。非常事態省も危機管理センターを発足させました。

 EU各国にとっても天然ガス消費量の二割余りがロシアからの輸入で、うち約八割がウクライナ経由。EUも供給への影響を懸念しており、四日に緊急の対策会議を開きます。

 ガスプロムはウクライナ経由で欧州に送るガスの量は変わらないと強調し、二日、ウクライナがガス一億立方メートル以上を抜き取ったと指摘しました。ウクライナ側はこれを否定しました。

 ロシアはウクライナに過去五年、天然ガスを千立方メートル当たり約五十ドル(約五千九百円)の低価格で輸出してきましたが、昨年夏、「市場価格へ移行する」として百六十ドルへの値上げを提案。ウクライナが拒否すると昨年末、「国際価格に近い」二百三十ドル(約二万七千円)への引き上げを提案しました。

 ウクライナは、市場価格への移行には同意したものの、段階的な移行と、「パイプライン通過料を勘案した八十ドル(約九千四百円)」などを主張しています。

 対立が続く中、ロシアのプーチン大統領は十二月二十九日、ガス購入資金としてウクライナに三十六億ドル(約四千二百億円)を融資すると提案。輸出契約切れの三十一日には今年三月までの価格凍結を妥協案として示しましたが、ウクライナ側はいずれも拒否しました。

■モルドバにも停止

 【モスクワ=田川実】ロシア国営ラジオ・マヤークによると、ロシアのガスプロム社は一日からウクライナの隣のモルドバへの天然ガス輸出も停止しました。ロシア側による千立方メートル百六十ドルへの値上げ提案をモルドバが拒否し、取引契約が切れたため。

 モルドバは旧ソ連共産党の流れをくむ同国共産党が与党ですが、EU早期加盟を掲げ、ウクライナなど旧ソ連・東欧の一部諸国とともに昨年十二月、反ロシアとも評される「民主的選択共同体」を結成しています。


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