2005年12月31日(土)「しんぶん赤旗」
特急転覆
突風測定に適さず
風速計、現場付近は旧型
JR羽越線の特急列車転覆事故で、JR東日本が脱線現場から約一キロの地点に設置していた風速計は平均風速の測定に適していても瞬間風速の測定がむずかしいタイプだったことが三十日までにわかりました。
JR東日本の風速計は、おわん形の風受けが三個ついた旧来式。高さ約五メートルのところに取りつけられています。この風速計は、風向の変化がつかめず、水平方向の風速しか測れません。気象研究者などによると、おわん型は平均風速の記録に適し、瞬間的な最大風速は測りにくいといいます。
瞬間風速は平均風速の一・五―三倍に達することがあります。
一九八六年十二月の山陰線余部鉄橋事故で、国鉄当時の風速計の問題点が判明。国鉄の当時の各種規制や基準も見直され、平均風速から瞬間風速を測定することに改められました。しかし民営化後、JR東日本は「風速計や、その設置位置の技術基準もない」といいます。事故現場付近の風速計記録についても風速約二〇メートルを当日に三回観測したと明らかにしただけで、データ開示もしていません。
事故現場近くには風速計が一カ所つけられていただけで、事故当日に発生した可能性のあるダウンバースト(発達した積乱雲の下に発生する突風)などの強風を裏付ける観測記録もないのが実情です。国土交通省は今回の事故後、ようやく鉄道各社に、瞬間風速を計測できるかなど風速計の機能や設置状況の報告を求めました。