2005年12月29日(木)「しんぶん赤旗」

院生の5割

収入少ない 研究に支障

全院協調べ


 大学院を研究者や高度専門職業人の養成機関として重視している日本で、「収入不足が研究に影響している」と答えた院生が過半数になっている実態が全国大学院生協議会(全院協)の経済実態調査でわかりました。


 調査は、全院協がことし十月から十一月にかけて実施した「二〇〇五年度大学院生の経済実態に関するアンケート調査」。全国十四大学、五百六十六人が回答しました。

 回答者の内訳は、修士課程が七割、博士課程が二割、オーバードクター(博士課程修了後も研究職に就けない人)などが一割。国公立と私立の割合は半々。下宿や寮に住む人が六割でした。

 多くの院生がほそぼそとした生活を強いられるなかで、「収入の不足が研究に影響を及ぼしている」と答えた人は53・0%。具体的な影響として「研究の資料や書籍を購入できない」「学会や研究会に参加できない」などがあがりました(グラフ)。

 奨学金を申請したことがある人は64・3%。うち採用されなかった人が一割いました。奨学金を申請しなかった人に理由を聞いたところ、「今の収入で十分やっていけるから」と答えた人は三分の一。「返済に不安があるから」が16・9%、「返還免除職規定が無くなったから」が5・8%と、潜在的な奨学金希望者が多くいることを示しています。

 仕送り(自宅生の場合は親からの援助)は、「もらっていない」が半数にのぼり、一カ月あたり「一―三万円」が12・5%、「四―六万円」が13・4%。預貯金を取り崩している人が45・1%でした。

 アルバイトをしている人は六割近くおり、週あたりの時間数は「一―五時間」が19・3%、「六―十時間」が16・3%でした。アルバイトの目的として、生活費、学費、研究費、家賃が上位にあがりました。

 文部科学省の「学生生活調査」(二〇〇二年度)の結果から試算すると、国立大学の修士、博士課程に五年間通った場合、学費と生活費で平均九百六十六万円かかります。私立大学では平均千百二十万円かかる計算に。院生とその家族に経済的負担が重くのしかかっています。

表

■アンケートの声から

■仕送りはなく

 ▽入学金、授業料の免除申請をしましたが、却下されました。奨学金で生計を立てており、奨学金だけでは生活費、研究費に加えて授業料をねん出することは困難です。親などからの仕送りなく大学院生活を送るのは困難であり、院生の経済的自立は不可能です。

■深夜から研究

 ▽学費を払うためにバイトに時間が使われ、研究が昼間にできない。深夜から朝方に研究、昼、祝日にバイトといった生活をしており、休みがなく苦しい。もっと余裕のある生活を送りたい。

■成果上がらず

 ▽何よりも経済的なことが一番問題。研究にお金がかかるので、選択できる研究テーマが限られたりすると感じている。生活のためにバイトをすれば、研究できず成果も上がらずということになる。院生をサポートする制度をもう少し増やし、本当に困っている学生がそのサポートを受けられるようにしてほしい。


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