2005年12月29日(木)「しんぶん赤旗」
時速100キロ走行時
風速28メートルで転覆の恐れ
鉄道総研が実験していた
強風のなか時速百キロで走る列車は、風速約二八メートルでも転覆する可能性がある――。こんな実験結果が鉄道総合技術研究所(東京都)の昨年十二月の研究発表会で報告されていたことが二十八日までにわかりました。二十五日のJR羽越線の特急脱線転覆事故では、運転士が時速百五キロで走行していたと話しており、暴風雪警報がでているなか、風速観測体制も不十分なまま高速運転をさせたJR東日本の運行管理が問われています。
この実験は、同研究所の日比野有・車両運動副主任研究員が実物大車両模型を使い、北海道島牧村の試験場でおこなったもの。風が車体に及ぼす力を観測し、結果を計算しました。
これによると、先頭車が時速百キロで走行している場合、風速が約二八メートルでも転覆するという結果が出ました。時速四〇キロ走行の場合、転覆する風速は約三五メートル、停止時の転覆風速は四〇メートルとされ、列車の速度が遅いほど安全が確保される結果になりました。
車体に及ぼす風の力は、風速の二乗に比例するといい、列車の速度が速くなるほど転覆風速は小さくなります。
二十五日夜の羽越線特急脱線転覆事故では、山形県内に暴風雪警報がだされ、事故の約二時間前にも気象庁から暴風雪への警戒をよびかける気象情報がだされていました。
JR東日本の運行規制は、風速二五メートルで時速二十五キロの徐行、同三〇メートルで運転見合わせとなっています。風速は瞬時に変化することがあるのに、風速計は脱線現場から一キロ近く離れた一カ所だけでした。実験結果は、より厳密な風速の測定と運行管理の必要性を示しています。
八六年十二月二十八日に発生した国鉄当時の大事故となった山陰線余部(あまるべ)鉄橋転覆事故では、風速計が二五メートルを断続的に観測し、警報装置が作動していたのに、列車停止措置がとられませんでした。このため同鉄橋では二〇メートルで運転見合わせとなりましたが、その後の国鉄民営化で基準は鉄道会社まかせになっています。