2005年12月28日(水)「しんぶん赤旗」

主張

診療報酬引き下げ

安心できる医療体制に逆行


 政府は来年度予算案で、医師の技術料など診療報酬本体で1・36%、薬価・医療材料で1・8%、合わせて3・16%という、過去最大の引き下げをもりこみました。これによる医療費の削減で、国の財政は二千四百億円節約できるとしています。

 診療報酬は、公的保険制度のもとで、診療の対価として医療機関に支払われる価格ですが、医療機関の経営だけでなく、医療のあり方に大きな影響を与えるものです。

■現場は課題が山積

 いま医療をめぐって、安全対策、地方での医師確保、限界状態の看護師の労働条件の改善など、課題が山積みしています。日本共産党が国会でも取り上げたように、新卒看護師の十二人に一人が多忙や医療事故の不安から退職している現状は、医療現場の危険信号といえます。

 今回の改定案では救急、小児科、産科、麻酔科などは引き上げるとしています。緊急に手を打つべき分野として当然ですが、その他の分野の削減はいっそう大幅になります。診療報酬引き下げが、医療の直面する課題にこたえるどころか、逆行することになることは明らかです。

 二〇〇二年にも診療報酬本体1・3%、合計で2・7%のマイナス改定がおこなわれました。それによって赤字や倒産の医療機関が増えたのをはじめ、医療現場が大混乱し、その年の内に再診料の削減や手術料減額について手直しせざるを得なかったのです。

 “医療改革で高齢者が負担増になるから、医療機関も痛みを”などと宣伝されています。しかし、医療機関の収入減に対応して、保険外診療の活用により、患者に「応分の負担をしていただく」(社会保障制度審議会部会)という方向が示されています。差額ベッドや薬、技術の保険外診療がひろげられ(混合診療)、国が削った分を患者負担にまわす構図が描かれています。

 小泉首相は、医療費を抑える「改革」は、「国民が負担可能な範囲」にするためと言います。しかしわが国の社会保障の現状は、対GDP(国内総生産)比でヨーロッパ諸国に比べていまなお低い水準です。「抑制しなければ経済も財政も破綻(はたん)するかのような脅しに根拠はない」(日本共産党第二十四回大会決議案)のです。

 わが国は、企業の税、社会保険料の負担が対国民所得比でドイツの七割、フランスの五割にとどまっており、これが社会保障の遅れにもつながっています。

 財界は、「社会保険料の会社負担分をなくせ」などといって、当然の負担に真っ向から反対しています。医療費抑制のねらいは大企業の負担軽減にあります。こんな財界言いなりの「改革」を許せません。

 もちろん、医療財源をムダなく活用していくことは重要です。そのためにも国際的にも異常な高薬価や高額医療機器の抜本的な引き下げが必要です。この点で驚くべきことは、アメリカの〇四年「年次改革要望書」が、日本にたいし「薬価はメーカーの希望価格で」「米国業界の不利益な変更はされないこと」など、公然と医療費のつり上げを求めていることです。こうした不当な介入もはねのけなければなりません。

■医療の切り捨て撤回を

 国の予算でも、公共事業のムダづかいなどをあらためれば、いまからでも医療に必要な財源は確保できます。日本共産党は、国民を苦しめる患者負担増や診療報酬引き下げの撤回を求め、安心できる医療体制を確立するため力を尽くします。


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