2005年12月24日(土)「しんぶん赤旗」

主張

台湾問題関与発言

なぜこんなことを言うのか


 麻生外相の「中国脅威」発言が問題となっていますが、額賀防衛庁長官も、テレビ番組で、中台間で紛争が起き米軍が介入した場合の日本の対応について、「(米軍にたいする自衛隊の)後方支援を展開できる場合があるのかないのか、主体的に判断し、決断していく必要がある」とのべました(十一月二十八日)。

 他国の紛争に介入するなど絶対に許されないことなのに、台湾問題で軍事的な介入をする可能性を残しているかのように言うこと自体がまちがいです。

■「中国は一つ」の意味

 日米両政府は、二月の日米安全保障協議委員会(外交・軍事担当閣僚協議機関)で、「地域の共通戦略目標」として、「中国との協力関係を発展させる」「台湾海峡を巡る問題の対話を通じた平和的解決を促す」ことで合意しました。「力の政策」を背景にしつつも、ブッシュ大統領は訪中して、中国政府と「建設的協力関係」を約束しています。

 一方、小泉政権は、靖国神社参拝を続け中国首脳と会談もできないほど関係を悪化させています。昨年十二月に決定した「防衛計画の大綱」では、台湾海峡を「不透明・不確実な要素」だとし、中国の動向を「今後も注目」すると書き、中国を敵視する態度ではないかと批判されました。それをエスカレートさせるような額賀発言は重大です。

 「中国は一つであり、中華人民共和国と台湾は一つの中国を構成する」というのは、国際的に認められた原則であり、とりわけ日本は厳格に守らなければなりません。というのも、日本は、日清戦争で台湾をとりあげ植民地にし、第二次大戦後にポツダム宣言にもとづいて中国に返還した当事国だからです。

 日中の国交を正常化した日中共同声明(七二年)は、「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府」「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部」と認め、日中平和友好条約(七八年)もこの原則を基礎にしています。

 このため、政府は、海外で戦争する米軍への支援を定めた「周辺事態法」についても、台湾を対象にしているとはいえませんでした。米軍が“台湾防衛”のため日本に協力を求めてきた場合どうするかと聞かれても、「そういう事態が起こることを望まないし、むしろ、平和裏に問題が解決するための努力をこそ継続すべきだ」(九七年十月七日橋本首相)という答弁を変えませんでした。

 額賀防衛庁長官発言は、この経過に照らしても、従来の政府の見解から危険な方向に踏み出すものとなっています。

 台湾問題の平和的解決を促進するうえでも、日中間の平和、友好の関係を発展させるためにも、日本は、歴史をふまえ、国際的な原則と日本国憲法を守った対応をしなければなりません。

■日米同盟一本やり

 小泉首相は、「日米関係が緊密であればあるほど中国、韓国、アジア諸国、国際社会においても良好な関係を築ける」(十一月十六日)とのべました。中国や韓国との関係を悪化させる原因を自分でつくっておきながら、こんなことをいうのは非常識です。“日米が組めばなんでもできる”というような思い上がった姿勢は、アジア諸国の反発をうけ、外交的孤立を深めるだけです。

 日米軍事同盟強化の流れに悪乗りしたような額賀発言は、その点でも、日本国民の利益を大きく損ねるものです。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp