2005年12月22日(木)「しんぶん赤旗」

臨時教員が生活保護受給

教育費抑制で非常勤急増

月収11万円 貯金も底つく

さいたま市


 さいたま市の市立小学校に4月から非常勤で勤めるベテラン臨時教員が今夏、「低賃金で生活できない」と生活保護を受給しました。時間給1210円で、月収はわずか10万7000円。国の安上がりの教育政策のもとで、低賃金にあえぐ非常勤教員が急増しています。(酒井慎太郎)


 この臨時教員は五十二歳の女性です。臨時教員になって十一年、着任は十五校を数えました。家賃四万四千円のアパートに一人暮らし。低賃金が続いたここ数年、生計費に取り崩してきた貯金は底をつきました。

 生活保護が受理されたとき、「仕事を続けていても大丈夫なんだ。細々ながら何とか生きていける」と安どしました。同時に、生活保護を受けなければならない教育の実態に「驚きました」。

 今年の仕事は低学年の授業補助で一日五時間、週五日の勤務。市が独自財政で二〇〇三年にはじめた非常勤配置で一年限りの契約。しかも、夏休みなど長期休暇で授業がないと収入もなく、年収は七十八万円でした。

■週末に副業

 長期の休みに入ると、学童保育でアルバイト。四月から、週末はスーパーの試食販売員として働きました。なべなど重い道具を担いでの二時間近い移動と慣れない仕事。疲れが授業に差し障るようになり、副業生活は二カ月で断念しました。

 収入は不安定です。四年前には、フルタイムで働く常勤から授業だけをもつ時給二千八百円の非常勤になって、月収は十一万円減の二十二万円。翌年は上尾市で非常勤に就き、時給は半減。鳩ケ谷市に雇われた昨年は時給が千十円まで下がり、月収は十三万円でした。

 全国の国公私立学校でこの女性のような臨時教員が何人いるのか、文部科学省も実態は把握していません。

 「臨時教職員制度の改善を求める全国連絡会」の山口正会長は、国の学校基本調査をもとにした独自調査で二十万人超、うち約十三万人が非常勤と推計します。国の調査の範囲でも、小学校では昨年五月時点の正規教員が九六年から0・5%(約二千三百人)増にとどまる一方、非常勤は三倍以上(約一万千人)も増えているといいます。

 非常勤が急増する背景には、一学級の児童生徒数を四十人で据え置き、教育費を抑制する国の姿勢があります。少人数学級など国の基準以上に手厚い教育を行う地方への財政支援はなく、地方の厳しい財政事情から低賃金の非常勤が多用されているのです。

■授業の喜び

 この女性は、境遇に耐え切れず辞めていく同僚を数多く見送ってきました。自身も、親せきや友人から「教師の仕事にこだわるな」「もっと収入のいい仕事はある」と説得されましたが、教育の仕事を離れられません。

 「人間的なふれあいのなかで、子どもは変わり成長していきます。授業の後、『わかった』『楽しかった』といってくれると、また頑張ろうと思える喜びがあります」

 勤務後も教材研究に図書館で数時間を過ごす日々。全力で授業に向かいながらも、任期のある臨時教員のために、教育実践は途切れてきました。この女性は「子どもの前に立つ教員が大事にされない、それは、子どもが大事にされていないのです」と話します。

 山口会長の話 教職員の非正規化の特徴は、正規職から臨時職へ、常勤職から非常勤職へという二重の臨時化が進行し、小中学校で非常勤講師が急増していることです。そのなかで、非常勤講師は教育専門職としての権利と生活が奪われています。二十一世紀にふさわしい学びの創造には、教職員や他の専門職の安定した配置が欠かせません。その制度実現は行政の責務です。

 ▼臨時教員 勤務形態は学級担任をもつなど正規教員と同様に働く常勤と、正規教員よりも週の勤務時間が短い非常勤に大別されます。公立の小中学校の非常勤には、県費負担と、市町村費負担との二種類があります。給与は前者が国と県の折半、後者は市町村の負担です。高校など県立学校の常勤・非常勤は県が負担します。


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