2005年12月21日(水)「しんぶん赤旗」
ミサイル防衛など5兆円
軍事費 ヘリ空母2隻目も
財務省が二十日に内示した来年度予算原案の軍事費(防衛関係費)は、四兆八千百三十七億円(SACO経費含む)でした。財務省は「円安、油価格の高騰等の予算増要因があるにもかかわらず、削減を実現」と誇ってみせますが、前年度比で、わずか0・9%減(四百二十七億円減)にすぎません。内閣官房予算に含まれ、第二の軍事費といわれる情報収集衛星(軍事偵察衛星)関連経費六百十一億円を加えると、四兆八千七百四十八億円に達します。
■日米共同開発
五兆円近い水準を維持している要因の一つは、「ミサイル防衛」(MD)経費を、過去最高額の千三百九十九億円盛り込んでいることです。
MDは、ブッシュ米政権が推進しているもので、相手国の弾道ミサイルを撃ち落とすことで、報復の心配なく先制攻撃を可能にするシステムです。
〇四―〇五年度に続き、イージス艦配備迎撃ミサイル(SM3)と地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)の導入費を計上。弾道ミサイルを探知する最新型レーダー(FPS―XX)も新たに調達します。
これに加え、日米共同技術研究を続けてきた次世代型SM3の開発段階移行(二十四日正式決定)に伴う開発費三十億円も初めて計上しました。
共同開発の日本側負担は、全体で千百七十億―千四百億円と見込まれています。現在、導入を進めているMD経費の総額六千億―八千億円と合わせると、将来にわたって膨大な税金が、米国の先制攻撃戦略を支える「ミサイル防衛」のために注ぎ込まれることになります。
■海外派兵型も
政府は昨年末の新防衛大綱で、海外派兵を自衛隊の「本来任務」に位置付ける方針を決定。十月には在日米軍再編についての「中間報告」で、地球規模で米軍と自衛隊の軍事一体化を進めることで米国と合意しました。
こうした「海外派兵型軍隊」への転換が、予算原案に反映されていることも重大です。
たとえば、インド洋など長期間の海外展開を想定した“ヘリ空母”(ヘリ搭載護衛艦)。〇四年度に引き続き、二隻目を調達します。
また、自衛隊のイラク派兵一年延長を受け、派兵経費百四十六億円を計上しています。
一方で、90式戦車(十一両)、F2戦闘機(五機)、対戦車ミサイルを装備したAH64D戦闘ヘリ(一機)など、対ソ戦を想定した装備品調達も続いています。
また、在日米軍再編についての経費は、〇六年度予算原案に盛り込まれなかったものの、〇五年度の補正予算案に、対象となっている基地の現況調査費約三億円が盛り込まれました。
■「米軍思いやり」2326億円
財務省は二十日内示した〇六年度予算原案の軍事費で、「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)として、二千三百二十六億円を計上しました。〇五年度比で五十二億円減(2・2%減)したものの、引き続き二千億円を超える高水準です。
内訳は、基地従業員の労務費千四百三十五億円、基地で使う光熱水料費二百四十八億円、訓練移転費四億円、提供施設整備費六百三十八億円です。
日米両政府は、来年度三月で期限が切れる「思いやり予算」に関する特別協定について、現行の枠組みを二年間延長することで基本合意しています。
■都市型施設の建設費8億円
財務省は二十日に内示した軍事費(防衛関係費)で、沖縄の米軍基地を県内でたらい回しにする日米特別行動委員会(SACO)経費として、約二百三十三億円を計上しました。
このなかで、金武町伊芸区民をはじめ、沖縄県をあげて、その撤去を強く求めていた米軍キャンプ・ハンセン内(金武町など)の米軍都市型戦闘訓練施設について、ハンセン内に代替施設を建設する経費として、約八億円を盛り込みました。
SACO経費は〇五年度比で11・4%減。減少したのは、在日米軍再編についての「中間報告」(十月)で、普天間基地に代わる新基地を名護市辺野古沖に建設する計画が変更されたため、その関連経費の計上を見送ったことなどが要因です。