2005年12月18日(日)「しんぶん赤旗」
原子力空母配備の3つの危険――大同団結の力で計画撤回を
横須賀集会での志位委員長の情勢報告
(大要)
日本共産党の志位和夫委員長が十七日、神奈川県横須賀市で開かれた「原子力空母の横須賀への配備を阻止する緊急集会」でおこなった情勢報告(大要)は次の通りです。
みなさん、こんにちは(「こんにちは」の声)。圧倒的多数の県民の声を無視して、米国政府は、横須賀基地に二〇〇八年から原子力空母ジョージ・ワシントンを配備することを発表し、日本政府はこれを受け入れることを表明しました。
私はまず、みなさんとともに、日米両国政府のこの動きにたいして、怒りを込めて抗議し、無謀な計画の撤回を強く求めるものです。(拍手)
原子力空母の母港化によってもたらされるものは何でしょうか。私は、三つの恐るべき危険を告発したいと思います。
■原子力事故と放射能汚染の危険
第一は、原子力事故と放射能汚染の危険です。
原子力空母ワシントンの原子炉は、美浜原発1号炉の出力に匹敵します。その空母が一年間の約半分は、横須賀に停泊します。ということは、三千万人が住む首都圏に、原発が設置されるにひとしい事態が、ひきおこされることになるではありませんか。
■「狭さ」「振動」「出力調整」――危険性がいっそう高くなる
しかも原子力空母の原子炉の危険性が、一般の原発に比べても高いことは、専門家からも共通して指摘されていることです。
一つ目は、「狭さ」です。はるかに狭い艦内に設置するために、原子炉の炉心の設計に余裕がなく、放射能をふせぐための構造も余裕がなくなり、事故の危険が高まります。
二つ目は、「振動」です。空母が絶えず波のゆれにさらされ、艦載機の離発着の衝撃にさらされていることが、原子炉の金属疲労を早め、原子炉の危険性をさらに高めることになります。
そもそも日本では原発上空では航空機の飛行を禁止することがルールになっています。ところが、原子力空母では、いわば原発をめがけて戦闘機が飛んでくることになる――こんな恐ろしい危険なことはありません。(「そうだ」の声、拍手)
三つ目は、「出力調整」です。原子炉は、出力の上げ下げのときに異常を生む危険性が高いとされています。チェルノブイリ事故も出力調整が引き金になりました。軍事作戦が何よりも優先される原子力空母は、無理な出力調整を余儀なくされます。ここでも危険は深刻なものとなるのです。
これまでたくさんの原子力の軍艦、艦船が、放射能事故をおこしてきました。日本の原子力船「むつ」は、放射能漏れで、使いものにならなかったではありませんか。原子力潜水艦は、判明しているだけでも、米国で二隻、旧ソ連で九隻が沈没事故を起こしています。米原子力空母も一九九九年にサンディエゴ湾内で座礁事故を起こし、冷却水循環ポンプが故障して、原子炉が緊急停止という大惨事寸前の事故を起こしています。
アメリカの当局者は、「原子力空母は安全」だといっています。しかし、それは、まったく根拠がない。うそ・偽りだということを、私はきびしく告発したいのであります。(拍手、「そうだ」の声)
■徹底した秘密主義――国民の監視がおよばない原子炉になる
さらに、米軍の原子力艦船は、徹底した秘密主義のベールに包まれています。
横須賀では、一九九六年、九八年に米原潜の入港時に通常の三倍の放射能が測定される事態が起こりましたが、米軍は何も発表しませんでした。
米本土でもそうです。米本土の原子力空母や原子力潜水艦の根拠地となっているサンディエゴでは、海底から自然の十倍もの放射能が検出されています。当局も「湾内でとれた魚を食べ過ぎないように」とよびかけています。それなのに、米国内でもすべては「軍事機密」のベールにつつまれているのです。
横須賀が、原子力空母の母港になれば、日本政府と自治体の監視も、国民の監視もおよばない原子炉が、日本の国内にはじめて生まれるという、かつてない事態が起きます。こんな恐ろしいことは、絶対に許せないではありませんか。(拍手)
原子力空母配備について、神奈川県内の七割の自治体の首長が、政治的立場の違いをこえて、反対の声をあげています。
県民の大多数のみなさんの共通の声は、「原子力事故と放射能汚染の危険は、とうてい我慢ならない」――この声だと思います。(拍手)
「原子力空母母港化反対」――この一点で自治体ぐるみの大同団結のたたかいを強め、広げることこそ勝利への道です。そのために力をあわせてがんばりぬこうではありませんか。(拍手)
■“殴り込み”の根拠地として飛躍的に強化される危険
第二は、横須賀が、地球的規模での米軍の“殴り込み”の根拠地として、飛躍的に強化されるという危険です。
もともと空母の仕事というのは、“殴り込み”が専門です。イラク戦争、アフガン戦争など、アメリカが無法な先制攻撃の戦争をたたかうさいに、真っ先に投入されてきたのが、空母打撃群です。
原子力空母になると、この“殴り込み”能力が、格段にパワーアップされることになります。
いま配備されているキティホークは重油で航行するわけですが、四日ごとに燃料補給が必要になります。ところが、原子力空母は、いったん核燃料を積んだら、二十五年間は継続して運航することができる。半永久的なエネルギーをもつことになります。
同時に、重い油を積む必要がなくなるため、(原子力空母ワシントンは)キティホークの一・五倍の航空燃料を積み、一・八倍の武器・弾薬を積むことができるようになります。
在日米海軍司令官は、こういいました。「(キティホークよりも)二倍の期間、戦闘作戦を遂行できる」
これまでも、横須賀は、アメリカの無法な戦争の根拠地とされてきました。
横須賀を母港とする空母の出撃で、どれだけの人々が殺されたか。イラク戦争で、どれだけの子どもや、お年寄り、女性たちが殺されたか。このことに多くの県民のみなさんは心を痛めていると思います。その無法な“殴り込み”のパワーが二倍になるなど、我慢がならない話ではないでしょうか。(拍手)
■空母母港として固定化・永久化される危険
第三は、横須賀が空母母港として、固定化・永久化される危険が、いちだんと深刻になるということです。
もともと一九七三年に、横須賀が空母ミッドウェーの母港とされたさい、日本政府と米軍は三つの約束をしたものでした。
「(配備は)おおむね三年」「新たな施設の建設は求めない」「空母艦載機の離発着訓練はしない」――。
この三つの約束ですが、どれ一つとして守られていないではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
「三年」どころか、すでに三十二年も空母は居座り続けています。
「新たな施設の建設を求めない」どころか、豊かな池子の森をつぶして、米軍住宅をあれだけ建てているではありませんか。
「艦載機の訓練はしない」どころか、厚木基地では、恐るべき轟音(ごうおん)をまきちらす艦載機訓練が続いているではありませんか。
みなさん、すべての約束をほごにして、居座りをつづけているのが、空母母港化の現実であるということを、絶対に忘れてはなりません。(拍手)
九二年に就役したばかりの最新鋭の原子力空母ワシントンの母港化を許せば、この先、さらに数十年、二十一世紀のはるか先まで、海外での唯一の空母母港という異常な事態が固定化され、永久化されることになります。
逆に原子力空母の母港化を断念させ、阻止するならば、近い将来に配備できる通常空母がなくなってしまい、空母母港化返上の道が、新たに開かれることになります。力をあわせて、その道をこじあけようではありませんか。(拍手)
(米陸軍の新司令部移転が狙われている)座間での大集会は、一万一千人を集め、大成功をおさめました。私も参加して、胸が熱くなりました。神奈川県民の共同したたたかいをさらに発展させましょう。
沖縄をはじめ全国のたたかいとの連帯をさらに強めましょう。
この無謀な計画を中止させるまで、がんばりぬこうではありませんか。(大きな拍手)