2005年12月18日(日)「しんぶん赤旗」

主張

少子化社会白書

社会のあり方を変える視点で


 政府が少子化社会白書二〇〇五年版をまとめました。

 〇四年の合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子どもの平均数)は、一・二八八六と過去最低。白書は、死亡数が出生数を上回る「人口減少社会」への接近をあげ、危機感をにじませました。

■待機児童ゼロ作戦は

 〇三年の合計特殊出生率が一・二九と判明したさいに、政府・与党のなかには、「瞬間風速の話」(〇四年六月十一日、坂口力厚生労働相・公明党)と現実を直視しない見方がありました。しかし人口学で「超少子化国」とよぶ一・三以下を二年連続で下回ったことをうけて、政府として認識を新たにしたといえます。

 欧州で、落ち込んだ出生率の回復に成功している国では、雇用政策、経済的負担の軽減、男女平等政策など、総合的に、社会のあり方を変える視点でとりくんでいます。

 小泉首相が、施政方針演説で繰り返していた保育所の待機児童ゼロ作戦(今年四月までの三年計画)の結果はどうでしょうか。

 白書は今年四月の待機児童が、二万三千三百三十八人となり、最も多かった〇三年に比べ、二年連続で減少したとのべています。しかし、これらの児童数は、希望する認可保育所に入れず、やむなく認可外保育所や保育ママなどで対応している人を除いたものです。これらを含んだ待機児童数は逆に増えており、過去最高の四万三千四百三十四人(〇五年四月)にのぼっています。政府は、待機児童数を過少に描いてゼロ作戦の失敗を国民の目から隠そうとしています。

 待機児童が出る最大の原因は保育所そのものの整備が一九八五年を境に極端に抑制されてきたことです。

 七〇年から八五年まで働く女性は約三百万人増える一方、保育所も約八千八百カ所増えています。しかし、八五年から〇四年までをみると、働く女性が約三百十万人増えているのに、保育所は約四百カ所減りました。

 本来ならこうした抑制政策を改めることが必要でした。ところが、小泉内閣は、保育所の定員をはるかに超える“つめこみ保育”や、保育を営利企業にゆだねるやり方を打ち出しました。こんなやり方では、乳幼児の豊かな成長を保障することはできないばかりか、待機児童問題を解決することはできません。

 財源がないのではありません。たとえば、米軍への思いやり予算は、九〇年と〇五年を比べると七百億円近くも増えています。

■対立あおるやり方では

 白書は、子育てに多額の費用がかかるとしたうえで、今後の方向として、経済的支援を中心に打ち出しています。しかし、結論は「高齢者関係給付を見直し」て、若い世代の負担を軽減するというものです。世論調査で、子育て支援にあてる国の予算について、最も多いのは「無駄な公共事業や行政経費を切り詰める」(85%)で、消費税増税(6%)や年金など高齢者給付の切り下げ(3%)はごくわずかです。意図的に対立をあおるやり方は、社会全体の連帯を失わせ、少子化傾向の克服の大道からそれることになります。

 白書は章をたてて、地方自治体の独自の子育て支援を特集しています。四十七都道府県で実施している乳幼児医療費の助成のとりくみも紹介しています。これは住民のねばりづよい運動の成果です。政府は紹介するだけでなく、それに学んで、本腰を入れた対策をとるべきです。


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