2005年12月17日(土)「しんぶん赤旗」
「近づく第24回党大会」
情勢の中で決議案を読む
極端な大企業中心
庶民ばっかり負担増の裏
日本共産党第二十四回大会決議案は、「『ルールなき資本主義』――極端な大企業中心主義の異常をただす、経済的民主主義の改革」の必要性を訴えています。このことは、小泉政権がいま行っている二〇〇六年度予算編成をめぐっても、切実な課題となっています。
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来年度予算編成の焦点は、庶民に対する大負担増です。
歳入では所得税・住民税の定率減税の全廃(所得税〇七年一月、住民税同六月)が計画されています。国民負担増は三・三兆円です。
歳出では、社会保障の抑制、特に老人医療費の自己負担増が狙われています。七十歳から七十四歳までの高齢者は、現行一割の自己負担を二割負担に引き上げ。一定以上の所得(夫婦二人で年収六百二十万円程度)がある高齢者は、自己負担を現行二割から三割に引き上げるという案です。
一方、大企業・大資産家はどうでしょう。
定率減税の導入と同じ一九九九年度に景気対策として実施された大企業減税(法人税率の引き下げ)や大資産家減税(所得税の最高税率の引き下げ)は見直しの対象にもなっていません。そのうえ、〇三年度に導入された研究開発減税の抜本的拡充とIT(情報技術)設備投資減税は、一部縮小・廃止したうえで新たな大企業減税の枠組みをつくろうとしています。
政府・与党がいう定率減税全廃の理由は「景気回復」ですが、「回復」しているのは、空前の大もうけをしている一部大企業で、家計は低迷したままです。
商業メディアにも「『回復したから増税する』というなら、むしろ法人税を上げ、所得税は下げなければならないはずだ」(『週刊ポスト』九月三十日号)などの論調が広がっています。
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■財政破たん誰のせい
財政が大変だから国民の負担が増えるのも仕方がないという財界や小泉政権の言い分も通用しません。
「政府・財界は、財政破綻は、自分たちの大失政の結果なのに、これを逆手にとって国民を痛めつける政治をおしつける脅しにつかっている」(党大会決議案)にすぎません。
「一九九〇年代以降の公共投資と軍事費の異常膨張と無駄づかい、大企業・大資産家へのゆきすぎた減税による税制の空洞化こそが、今日の事態を作り出した元凶」(同)です。
日本の国と地方の借金(長期債務残高)は九〇年度にはGDP比59・1%でした。それが九〇年代に次第に増え、九八年度には100%を突破。〇五年度には151・2%が見込まれています。
いったい何があったのでしょうか。
大手ゼネコンが喜ぶ大型公共工事を中心にした「景気対策」に湯水のように税金を注ぎ込み、九〇年代、国と地方で“公共事業に五十兆円、社会保障に二十兆円”という異常な事態が続きます。軍事費は年五兆円規模という軍事大国ぶりです。
税収の空洞化が進んだのもこの時期です。
消費税が導入された八九年四月から法人税(基本税率)は、42%から40%に引き下げられ、その後、37・5%(九一年四月)、34・5%(九八年四月)、30%(九九年四月)と、相次いで減税されました。
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■「財界の勝手」穴埋め
庶民増税計画はとどまるところを知りません。
政府税制調査会(首相の諮問機関)は定率減税の全廃のほか、各種控除の縮減・廃止を提言。あわせて十二兆円の国民負担増です。すでに消費税率の二ケタ化を小泉首相に答申しており、仮に10%に引き上げると十二兆円の国民負担増になります。合計二十四兆円。年収五百万円、四人家族のサラリーマン世帯では年五十五万円もの負担増となります。
こんな理不尽なことが計画されているのも「庶民大増税と社会保障の連続改悪の根底には、財界・大企業の横暴勝手がある」(党大会決議案)からです。
財界は、消費税や所得税の増税を求めるとともに、いまでも対国内総生産(GDP)比でヨーロッパ諸国に比べて低い水準にある日本の社会保障の給付費を、経済の伸び率以下に抑え込もうとしています。
これは、大企業が企業負担をさらに軽くしたいからです。日本の企業の税と社会保険料の負担は、いまでもフランスの二分の一にすぎません。
日本経団連は、法人税のいっそうの減税を要求し、「(企業の従業員も)保険料を全額本人が負担する方法に改めることが考えられる」(奥田ビジョン)と、企業の社会保険料負担をいっさいなくすことまで求めています。
「財界・大企業の負担を減らし、その穴埋めを庶民生活におしつける――これがいまおこなわれていることの真相」(党大会決議案)です。
事実、八九年に消費税が導入されて以降の消費税の税収合計は、同じ期間の法人税の減収合計とほぼ同額です。消費税は法人税の減収分の穴埋めに消えてしまった計算です。